1979年に放映され、現在に至るまで絶えず続編が制作されるテレビアニメ『機動戦士ガンダム』。40年を超える歴史を持つ本シリーズに、新たなる三つの作品が名を連ねるとのことが以前発表となりました。そして、その一つである『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が2022年初夏公開予定であると発表されました。
このタイトルにピンと来る人も多いでしょう。そう、本作は初代『機動戦士ガンダム』のエピソードの一つ「ククルス・ドアンの島」を元にした物語なのです。放映から40年の時を経てもう一度、新たな切り口でこの物語が語り直されるのです。
このニュースに衝撃を受けたガンダムファンは多かったと思います。筆者は驚きのあまり量産型ザクでの大気圏突入を試みそうになりました。
高い期待を背負って制作がなされる本作。予備知識なく見ても楽しめる作品に仕上なることは間違いないでしょう。しかし、本作の元となった初代『機動戦士ガンダム』第15話について、そしてこの作品のタイトルにもなっているククルス・ドアンという男について、事前に知識を持って見ればさらに楽しめることは間違いありません。改めて本作についてのおさらいをしていきましょう。
「ククルス・ドアンの島」とはどんな物語?エピソードのおさらい
「ククルス・ドアンの島」のエピソードが語られるのは初代『機動戦士ガンダム』の第15話、ガルマ・ザビとの戦いを終えてランバ・ラルと出会うまでの間のエピソードです。物語は味方の救難信号を主人公アムロ・レイが受け取ったところから始まります。
救難信号の発信先である島に向かうとそこにいたのは敵軍・ジオン公国を脱走した元軍人、ククルス・ドアン。彼は戦災孤児となった3人の子供たちと共に自給自足をしながら生活をしていたのです。そこに現れる連邦軍と脱走兵を追うジオン公国軍の両方を払い退けながら。
そこで一時的に生活を共にすることとなるアムロ。そんなアムロにドアンは衝撃の告白をします。「子供たちの親を殺したのは、この俺さ!」と。それはまだドアンがジオン軍にいた頃、彼の放った銃弾が流れ弾となり子供たちの親の命を奪ったのです。彼はその責任を取るために軍を抜け、子供たちと生きていくことを決めたのです。
アムロはククルス・ドアンの元に二度と戦火が訪れないよう、彼の持っていたモビルスーツを海に沈めてこの島を後にします。
ククルス・ドアンとはどんな男?プロフィールを再確認しよう
ククルス・ドアンは前章でも書いたようにジオン軍の脱走兵。モビルスーツの操縦技術が高く、特に近接戦においてはアムロすらも驚かせるほどです。
また、島にある原料で木を使って家を建てたり、畑を耕して自給自足の生活をしたり、島でのサバイバル生活もお手の物。それだけの技術を持ち、その上で戦争孤児たちと真摯に向き合うドアン。子供たちからも厚い信頼を置かれています。アムロの言うことは聞かなくともドアンの言うことには耳を貸す子供たち、それだけの関係性をドアンは作り上げたのです。
また、アムロにとってククルス・ドアンは初めて長い時間を共にしたジオンの軍人でした。これまで襲いくる敵でしかなかったジオン軍兵士たち。しかし彼らも一人の人間であり、各々が事情を抱えている。中には自らの身を危険に晒してでも人を助けようとする人もいる。アムロにそれを教えたのは他でもないドアンだったのです。
ククルス・ドアンのその後の活躍は?
本エピソード以後ククルス・ドアンがガンダムシリーズに登場することはありません。また、1981年に製作された『劇場版 機動戦士ガンダム』の三部作においてこのエピソードは時間の都合でカットされてしまいます。それでもククルス・ドアンは現代に語り継がれてきました。それは何故か。これにゲームが果たした功績は大きかったでしょう。
ククルス・ドアンを愛するガンダムファンは度々ゲームに彼を登場させます。中でも際立った登場の仕方をするのがゲームボーイアドバンスにてリリースされたソフト『Gジェネレーションアドバンス』。ストーリー途中で自軍に加入するドアンは他の追随を許さない強さを見せます。また、一定の条件を満たすと搭乗するザクが金色に輝くといった演出も……。本来のエピソードからはかけ離れたこの演出に戸惑った方も多かったでしょう。しかしながらこの演出によってククルス・ドアンの存在が記憶にはっきり刻み付けられた人が多かったのもまた一つの事実でしょう。
新作『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』はどんな物語になるのか?
こうして長い『ガンダム』の歴史の中に名前を刻み続けてきたククルス・ドアン。これまで描かれて来なかった彼のジオン公国所属時代、そして戦争孤児たちとの暮らしの始まりが現在製作されている『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』では語られることでしょう。
本作の監督をつとめるのは初代『機動戦士ガンダム』にてキャラクターデザインと作画監督を担当した安彦良和。ガンダムと長い歴史を共にしてきた師がククルス・ドアンの物語をどのように描くのかも注目したいポイントです。公開を心待ちにしましょう!