しかしその裏では第三者には知覚できない数々の出来事が「タイムリープ後の出来事」に上書きされ、スバルは本来、その人々と共有するはずだった「思い出」を自分の中に閉じ込めるなど代償を支払ってきた。
つまりスバル視点の視聴者と、上書き前の出来事を知らないエミリアたちでは認識が異なり、しばしば混乱をもたらしてきたはず。
そこで本企画では、TVアニメシリーズ第1期と第2期、そして劇場版『Memory Snow』と劇場版第2弾『氷結の絆』のすべての出来事をエミリアたちの視点で振り返りつつ、TVアニメ第31話時点で判明した過去の出来事をすべて網羅した、独自調査による簡易年表を作成。
現在の世界線で起こった出来事を俯瞰で見られる資料を用意した。
出来事を整理することで、あの時、あの人物の、あの発言や行動が違った意味を持つ……。これまでのエピソードを今一度振り返ったときのガイドになり、かつ再検証の手助けとなれば幸いだ。
[構成・文=気賀沢昌志]
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
■伝承の時代~スバルの異世界召喚直前の時系列
【400年前/伝承の時代】
『嫉妬の魔女』で銀髪ハーフエルフの「サテラ」が、彼女以外の6人の大罪の魔女を食らい、世界の大半を飲み干す世界的な危機が発生。サテラは衰えず、果てることがないため、竜や賢者を含む時の英雄3名によって大瀑布に封印された。
(第8話「泣いて泣き喚いて泣き止んだから」)
【数百年前/伝承の時代】
現王族と竜の間の盟約により「親竜王国ルグニカ」が誕生。竜は王家と交わした「約束」が成就するまで、王国の安寧を願いながら大瀑布の彼方で見守っている。なお「約束」の内容と竜が望むものに関しては謎。
(第6話「鎖の音」)
【時期不明】
現在は「墓所」と呼ばれる「聖域」の管理を、ロズワール家の当主が代々引き受ける。
(第28話「待ちかねた再会」)
【50年ほど前】
人間と亜人の間で「亜人戦争」が勃発。亜人側の敗北で決着したため、人間と亜人のハーフに対する偏見が強まり現在に至る。
(劇場版『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』)
【17年前】
とある鬼の集落にてラムとレムが誕生。双子の鬼は本来、忌子として「処分」されるものだが、片角にもかかわらずラムが強大な「鬼の力」を発動させたため、姉妹ともに生かされることになる。
その数年後、集落が魔女教に襲撃されてラムとレム以外のすべての鬼が虐殺される。またその際にラムが角を失う。
それからしばらくして姉妹は揃ってロズワール邸に引き取られ、メイドとなり現在に至る。
(第11話「レム」)
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
【十数年前】
後にクルシュの従者となるヴィルヘルム・ヴァン・アストレアの妻で、先代「剣聖」のテレシア・ヴァン・アストレアが白鯨戦で命を落とす。
(第20話「ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア」、第21話「絶望に抗う賭け」)
【数年前】
エリオール大森林で氷漬けになっていたエミリアが目覚める。森の中でしばらく孤独に暮らしていたエミリアは、調停者メラクェラとの戦いでパックと契約を結ぶことに。
なおエミリアは目覚める以前の記憶を失っているものの、森が氷結する瞬間の様子、エミリアと同じ髪飾りをした銀髪の女性、ペテルギウスに似た人物について、おぼろげながらイメージを持っていた。
(劇場版『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』)
【数年前】
エリオール大森林で暮らしていたエミリアをロズワールが迎えに行く。その際にパックと一昼夜、地図が書き換わるほどの大魔法バトルを展開した。
(劇場版『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』)
【半年前】
前王が雲隠れしたのと同時に城内で流行病が蔓延。王とその子孫も犠牲になって血筋が途絶えた。そのため、王選で新王が選出されるまで国の運営を賢人会が執り行うこととなる。
(第4話「ロズワール邸の団欒」)
【時期不明】
スバルがやってくる少し前のタイミングで、ラム・レムとともにロズワール邸で働いていたフレデリカが暇をもらい屋敷を出ていく。
(第27話「次なる場所」)
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
■TVシリーズ第1期の出来事
【第1話~第3話】
ルグニカ王国の王都に召喚されたスバルは、しばし街の様子を見て回った後、カドモンの果物屋の前を通りかかった。そこで自分に「死に戻り」の能力があることに気づいたスバルは、聖金貨20枚以上の価値があるケータイを売り払って、この世界でウハウハな生活を送ろうと考える。
だが「サテラ」と名乗った少女のことが忘れられなかったスバルは、彼女を救うことを決意。すでに徽章が奪われてしまっていたことを知ると、直接、フェルトから買い戻そうと彼女の住処を訪れた。
フェルトの住処へと向かう途中、スバルはとある美女とぶつかってしまう。その美女こそフェルトに徽章強奪を依頼した人物『腸狩り』エルザその人だった。
しかしエルザはスバルの敵意と怒りと恐怖を見抜くものの、今は騒ぎを起こしたくないからと何もせずに立ち去る。
その後、フェルトと出逢い、ロム爺の盗品蔵でエルザを待つことになったスバルは、徽章を取り戻すために盗品蔵へやってきた「サテラ」と出逢った。
スバルのことを最初は「盗賊の一味」だと思っていた「サテラ」。しかしエルザの襲撃を受けたことで認識を一変。フェルトや、スバルが路地裏で出逢ったという騎士ラインハルトとともにエルザに対抗する中でスバルが味方であることを知る。そしてエルザを撤退させた後は、スバルの要望で本名の「エミリア」を名乗り、戦いで深く傷ついた彼を一時的に引き取った。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
【第4話~第11話】
深夜。目覚めるとスバルはロズワール邸の寝室にいた。傷ついた彼をエミリアが保護し、手当てをしてくれたのだ。しかし勝手に邸内を歩き回った際にベティーの禁書庫に立ち入ってしまい、彼女に再び昏倒させられてしまう。
朝、スバルは目覚めると、彼を看病していたラムとレムの手を突然握った。その「変態ぶり」に困惑するラムとレム。なにしろ姉妹とスバルは初対面のはず。しかし彼は姉妹のことをずっと前から知っていたかのように手を握り、そして最上級の信頼を見せたからだ。しかも彼はロズワール邸で働くようになってからも不可解な態度を取り続ける。
一見、明るく張り切って仕事をしている様子のスバル。しかしそれは誰が見てもカラ元気で、今にも壊れてしまいそうなほど無理をしていた。そのためエミリアは、知り合って間もない彼を膝枕して慰めようとする。
不思議な部分はありつつも、スバルは村人から慕われ、ロズワールにもエミリアを託されるなど周囲の信頼を得ていく。
さらに彼は村に魔獣が紛れ込んでいることを察知すると、我が身を顧みずに魔獣と対決。魔獣を操っていたという「子供」を捕まえることはできなかったものの、ペトラたち村の子供の救出に成功した。
そんな中、ロズワールは「竜を殺すために王選を勝つ」という目的を新たにし、スバルはエミリアとの「でいと」の約束を取り付ける。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
【劇場版『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』】
魔獣討伐から間もなく。スバルはエミリアとの「でいと」に心躍らせながら、その目的地である村の各スポットを下見していた。しかしその目的が果たされる前にロズワール邸を異変が襲う。パックが発魔期を迎え、屋敷中が寒冷地化してしまったのだ。スバルはそんな状況をどうにかできないかと考え、村をあげての雪祭りを実行する。
【第12話~第25話】
最後の「竜の巫女」であるフェルトを加え、エミリアたち5人の候補者による王選がいよいよ開始されることとなった。しかし宣言の場では、エミリアの「お願い」を無視したスバルがまたもや暴走。エミリアの騎士を自称するなどして、彼女に猛反発される。
エミリアに突き放されて気落ちするスバル。レムはそんな彼を励まそうと市場へ連れ出すものの、彼の気は晴れるどころか急に衰弱し、一瞬前とは別人のように怯えた。
レムはスバルが市場の人混みのせいで疲れたのではないかと気遣うが、彼は唐突にレムの手を握って駆けだし、このまま逃げ出そうと言い始める。明らかに何かに絶望しているスバル。レムはそんな彼を優しく受け止めると、事情が飲み込めないながらも力強く励ました。
こうして立ち直ったスバルは、クルシュやアナスタシアを巻き込んで魔獣「白鯨」を討伐。王都で決闘まで繰り広げた騎士ユリウスと和解すると、力を合わせてペテルギウス率いる魔女教を退けるのだった。
しかしそれで一件落着とはいかず、突然、レムの存在が消えるという謎の現象が発生する……。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
■TVシリーズ第2期の出来事
【第26話~第31話】
レムの存在が消えたのは、『強欲』と『暴食』の大罪司教に襲われ、『暴食』の大罪司教に過去と存在を喰われてしまったのが原因だった。加えてレムは眠ったまま起きる気配がない。そこでスバルとエミリアは、ロズワールに報告と今後の相談をするため、彼がアーラム村の住民とともに避難したという「聖域」を目指すことにした。
「聖域」とは『強欲の魔女』エキドナの墓所で、ロズワール家が代々管理しているという、ロズワールにとって大切な隠れ里だ。
そこで明かされたのは、ロズワールが密かに進めていたという「悪だくみ」。ロズワールがいれば簡単に切り抜けることができた事件の数々をあえて放置することで、スバルをエミリアの騎士として相応しい人物に育てようとしていたのだ。
さらに現在、「聖域」は一部住民の反乱によって揺れていた。
住民は「聖域」の結界から外に出ることはできない。外に出たいと思う一部の人々がアーラム村の人々を人質に取り、「聖域」を開放するための試練をエミリアにやらせようと画策したのである。
だがスバルたちを待ち受ける困難はそれだけにとどまらなかった。『腸狩り』エルザがスバルの命をねらっており、スバルはふたたび「死に戻り」の苦難に立ち向かうことになってしまったのだ。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』2nd season(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活2製作委員会
ワンポイント「スバルが「死に戻り」で失ったもの」
別の時間軸での出来事を省き、あるがままの時間軸を俯瞰で見た時、レムや果物屋のカドモンは、急にボーッとしたり廃人になったりしたスバルを奇妙に思ったことだろう。
タイムリープ能力を持たない者にとっては連続した時間軸だ。しかしスバルにとっては長い寄り道をした末のセーブポイント。その「一瞬」には、上書きされて「なかったこと」にされた出来事が存在する。
エミリアとはじめて出逢って迷子の保護をしたこと。レムに髪を切ってもらう約束をしたこと。ラムに文字の読み書きを教えてもらったこと……。
それは特に深い関係を築いた相手ほど深刻な「喪失」となってスバルを苛んだ。例えばロズワールとの出逢いはいつだって同じものだったし、商人のオットーとは白鯨にまつわる悲劇が消え去り、むしろ上書きして良かったケースだ。
彼の「死に戻り」は、ただ肉体的苦痛に耐えればいいという問題ではない。心の傷も伴う。
そんな彼がエルザの襲撃により、再び「死に戻り」の試練に見舞われている。
第2期の本当の物語はこれからだ。今後、はたして彼がロズワールの期待したような「成長」をどれだけ遂げるのか、そして新たな「真実」がどのように明かされるのか……。その成り行きを見守っていきたい。
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『Re:ゼロから始める異世界生活』(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会
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