
気温が高い日が続き、本格的な夏目前! 今年は夏休みが短くなったり、海開きが中止になったりして心置きなく夏を満喫するのが難しい状況。
そこで、アニメ!アニメ!ではオススメの【夏アニメ】をピックアップ! 編集部&ライターが連載形式で紹介していきます。ぜひさまざまな“夏”を味わってみてください♪
<第1弾>
「ばらかもん」外出自粛…人と会えない今こそ見たい! 元気な“島っ子”と過ごす田舎ハートフルコメディ
<第2弾>
「ピンポン」“僕の血は鉄の味がする…”忘れかけていた大切なものを思い出させてくれる、青春スポ根アニメ
今回、第3弾としてイード アニメ事業部副部長(プロデューサー)・江崎大がオススメする作品は……
【No.3】デジモンアドベンチャー02 /デジモンハリケーン上陸・超絶進化!!黄金のデジメンタル
「夏アニメ」の最大の魅力は何か? これには「夏休み」という特別な長期休暇があることが大きく関わってきます。
遠方への外出、初めてのキャンプ、お泊り……こうした夏休み期間の特別な体験は、すこし大人になったようなワクワクに溢れています。また、そのぶん過ちを犯しやすい期間でもあります。
夏休み前の期待や焦りから来るそわそわ。夏休み明けのちょっとした憂鬱や、同じ景色なのに少し違って見えるような感覚、はたまたやっといつもの日常に戻るような感覚。
夏アニメは、こうした誰もが経験する「夏休み」期間だけの、非日常な高揚感を想起させてくれます。
そんな夏アニメの魅力をふんだんに盛り込んだアニメ『デジモンアドベンチャー02 /デジモンハリケーン上陸・超絶進化!!黄金のデジメンタル』を紹介します。
夏といえばデジモンアドベンチャー!

『デジモンアドベンチャー』(C)本郷あきよし・東映アニメーション(C)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション
デジモンファンの私は「夏アニメといえば?」と質問されれば、もちろん『デジモンアドベンチャー』と答えてしまいます。サマーキャンプ中の7人の小学生が、突然の異常気象に巻き込まれた末にデジタルワールドにたどり着き、デジタルモンスターと出会う。
『デジモンアドベンチャー』は、選ばれし子どもたちとパートナーデジモンたちのひと夏の冒険を描いており、そういった意味では本作も「夏アニメ」と言えます。
ですが、舞台のほとんどが「デジタルワールド」と呼ばれる異世界のため、夏であることよりも、異世界の冒険の印象が強い作品です(事実、当時毎週TVアニメ『デジモンアドベンチャー』を見ていた小学生の私は、舞台が夏であることを忘れてしまっていました)。
その点、その続編となる『デジモンアドベンチャー02』は、現実世界とデジタルワールドを往復するストーリーのため、現実世界の季節をより感じられる作品です。
そんな『デジモンアドベンチャー02』の劇場版1作目が今回ご紹介したいこの『デジモンハリケーン上陸・超絶進化!!黄金のデジメンタル』なのです。
『デジモンハリケーン上陸・超絶進化!!黄金のデジメンタル』ってこんなアニメ

『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!! 後編 超絶進化!!黄金のデジメンタル』(C)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション(C)本郷あきよし・東映アニメーション (C)東映・集英社・東映アニメーション(C)東映・東映アニメーション・集英社・フジテレビ・バンダイ (C)東映・東映アニメーション・バンダイ・読売広告社
本作の脚本は『劇場版 デジモンアドベンチャー』『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』を手がけた吉田玲子さんが手がけており、デジモンファンにとってはお馴染みの存在です。
アニメファンにとっては湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』やジブリの『猫の恩返し』の脚本などで知られる脚本家です。
夏休みを利用してニューヨークに滞在中のミミを訪れたタケルとヒカリ。だが目前でミミが突如消えてしまう。同時に何かを探す謎のデジモンの気配を感じる。
そのころ日本でも、かつてミミやタケル、ヒカリとともにデジタルワールドを旅した選ばれし子どもたちが消えていた。
異常事態を聞いた大輔、京、伊織たちは渡米して謎のデジモンと、その鍵を握るであろう少年ウォレスとそのパートナーデジモン・グミモンを追う。
謎のデジモンの正体と、ウォレス、グミモンの関係とは? そして謎のデジモンの目的は?
「戻れない過去」をテーマにセンチメンタルな雰囲気で進みながらも、『デジモンアドベンチャー02』らしい多彩な進化と、今作で初登場したテリアモンの可愛さ、大輔とウォレスの友情がロードムービーのような演出で描かれた作品です。
アニメだからこその非言語的な演出を目指した名作
当時小学生だった私がこの映画を見たときの最初の感想は「え? なにこれ? 全然面白くない」でした。
新しい進化や、かわいいテリアモン、ロップモンといった新キャラは好きなものの、子どもにとって肝心のバトルシーンが不満でした。終始戦っているのかよくわからず、主人公たちが劣勢なシーンも、なぜ劣勢なのか分らない。
子どもにとって望むバトルシーンでないことは「不完全燃焼な感覚=面白くない」でした。
しかし、5年後に改めてみた本作は、印象が全く変わっていました。
前作『ぼくらのウォーゲーム!』の細田守さんと山下高明さんの影色を極力なくした作画方法を踏襲したこれまでのデジモン映画へのリスペクトにあふれている。
さらに子どもの時は何が起きているかわからなかった戦闘シーンの表現は、敵キャラクターの強さが理解できないほどの異次元だったことを視聴者にもそのまま体感してもらうための演出だったとわかりました。
物語上で語られる「悲しいことが起きた。だから悲しい」といったストレートな表現ではなく、「“戻れない過去”を想って悲しくなる」という複雑味のある演出が各所に散りばめられているのです。
この作品で初めて、本来魅力的な作品であるにも関わらず、自分の無知が面白くないと判断させていたことに気が付かされました。
また、多様な風の表現や、異世界とつながるような演出など、アニメーションだからこそ可能な表現が多用されていることもアニメファンにおすすめのポイントです。
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この影無し作画は、のちに細田守監督が手がける『サマーウォーズ』でも踏襲されている
「幼くありたいチョコモン」と「大人でありたいグミモン」作品を通して大人になるウォレスのロードムービー
以下、考察も含まれますが、本作は、「ウォレスが大人になるためのロードムービー」でありながら、その目的地は子どもの時に住んでいた思い出の地という矛盾の旅が描かれています。
「幼くありたいチョコモン」と「大人でありたいグミモン」の対比も相まって見事に少年のちぐはぐな心を表現している作品といえるでしょう。
成長過程のちぐはぐさは、まさしく夏の特別な休暇を経た成長やそこに至るまでの不安定さを描く「夏アニメ」の醍醐味といえます。
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筆者私物のテリアモン、ロップモンのフィギュア
映画の中のウォレスとグミモン(テリアモン)、大輔とブイモンの特別な友情や、デジモンがいる生活や旅に憧れたのを覚えています。
この映画のようにいつか自分もパートナーデジモンに出会い、旅をするものだと信じて疑いませんでした。
皆さんの中にも、「もしもデジタルワールドに行けたら!」「パートナーデジモンがいたら!」と選ばれし子どもたちに憧れたり、デジモン以外でも、「モンスターボールを持っていたら」「悪魔の実を食べたなら……」と純粋に信じていた時代があったのではないでしょうか。
そういった意味でも、本作は私にとって、純粋にフィクションの世界を夢見ていたかつての自分、「戻れない過去」を想い感傷的になれる作品なのです。
ちなみに、チョコモン並みに戻れない過去にとらわれている私はいまだに、クラウドファンディングプロジェクト「20th DIGIMON ADVENTURE メモリアルストーリープロジェクト」の目玉のひとつ、デジモンキャラクターデザイナー・渡辺けんじさんがオリジナルパートナーデジモンをプレゼントしてくれる権利(先着5名)に漏れた悲しみから抜け出せていません。
「ウォ……ウォレス」(心の叫び)
ここまでまじめに書きましたが……
ここまでいろいろと本作の魅力についてお伝えしてきましたが、それはさておき、何よりテリアモンが可愛い、かわいい!
「まずは肩ひじ張らずに可愛いテリアモンを見よう!」くらいの気軽さで本作を視聴いただきたいです。
ウォレスを心配する顔も、ウォレスを茶化しているときの顔も、ブイモンの進化に目をキラキラさせている時も、抱っこされている時に体に足をぴとってするのも可愛い!
アップになった時のキュートな表情も、ちょっと引きのときの目や口が適当に作画されている感じも、「僕がウォレスの帽子になってあげる」という激萌えセリフも最高! なんならテリアモンに僕の帽子になってほしい! あぁ……テリアモン愛おしい……。
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“帽子になってほしい欲”が強すぎてテリアモンの帽子も友達に作ってもらいました
そして、本作があったからこそ、テリアモンは、TVシリーズ3作目『デジモンテイマーズ』にレギュラー出演することになったことも含めて、この作品には感謝しかありません。
今年公開された『デジモンアドベンチャー last evolution 絆』にも出てくるのではないかとずっとテリアモンを探し続けておりました(ちなみに最後のほうにシルエットでテリアモンが出てきます。見逃した方も、しっかり見つけられた方も2020年9月2日(水)に発売決定となったBlu-ray&DVDでもう一度見ましょう)。
現在放送中のTVアニメ『デジモンアドベンチャー:』をはじめ、まだまだ盛り上がるデジモンシリーズ。「夏アニメ」など、季節を意識しながら楽しむと新しい楽しみが見つかるかもしれません。
『デジモンアドベンチャー』
(C)本郷あきよし・東映アニメーション(C)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション
『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!! 後編 超絶進化!!黄金のデジメンタル』
(C)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション(C)本郷あきよし・東映アニメーション (C)東映・集英社・東映アニメーション(C)東映・東映アニメーション・集英社・フジテレビ・バンダイ (C)東映・東映アニメーション・バンダイ・読売広告社