貧乏貴族の八男・ヴェンデリンに転生してしまった主人公が、魔法の才能を武器に独立を目指す物語だ。
キャスト陣が奇抜なタイトルに「ハーレムものかと思ったけれど違った」と語っているように、貴族社会ならではの政治劇や緻密な人間ドラマが軸になっている。
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『八男って、それはないでしょう!』キービジュアル(C)Y.A/MFブックス/「八男って、それはないでしょう!」製作委員会
本稿では、幼なじみコンビを演じるイーナ役・小松未可子さんとルイーゼ役・三村ゆうなさんにインタビュー。作品やキャラクターの魅力のほか、「もし転生するなら何番目の兄弟に生まれたい?」など理想の兄弟事情もうかがった。
[取材・文=ハシビロコ]
■「八男を攻略する乙女系アニメかと思った」
――小松さんと三村さんが脚本を読んだときに感じた、本作の第一印象を教えてください。
小松:最初にタイトルだけ見て、八男を攻略していく女性向け作品だと思っていたんです(笑)。
「何男のルートを選ぼうかな」と考えたくなる乙女ゲームみたいな感じ。
もしくは異世界転生ものは主人公がなぜかモテる展開も多いので、そうしたハーレム系作品だと思っていたんです。
でも脚本を読んでみたらぜんぜん違っていて、時代背景をしっかり描いた地に足の着いた作品で驚きました。
緻密に描かれたハイファンタジーの雰囲気や、世界観の壮大な広がりが魅力的です。
三村:私も内容とタイトルのギャップにいい意味で驚かされましたし、そもそもタイトルの八男が読めなくて「やつお? はちだん?」と考えていました(笑)。
八番目の弟という意味の「八男」だと気づいてからも、「兄弟がたくさんいるなら賑やかで楽しそうなのに、どうして『それはないでしょう』なのか」と疑問に感じていて。
それと、オーディションでいただいたキャラクター一覧を見たときは、女の子がたくさんいたのでハーレムものかと思っていました。
でも脚本を読むと、八男がゼロどころかマイナスからスタートして這い上がっていく物語。
しかも兄弟が多いからといって全員仲がいいわけではなく、確執やしがらみも描かれています。
かわいそうな状況からのし上がっていくストーリーがとてもおもしろくて、「ヴェルはただ者ではないな!」と思いました。
小松:兄弟間の人間関係はこんなに大変なんだ、と驚くはずです。
転生ものは、「こんな世界に行きたい」という来世への期待が含まれている作品もありますが、本作は転生した先も過酷な世界。
それでも主人公が転生前の知識を活かして工夫をするなど、地道に努力を積み重ねていく部分がいいなあ、と思いました。
――おふたりが演じているイーナとルイーゼも三女で、家族の中で恵まれているとは言えない立ち位置です。ご自身が演じるキャラクターの第一印象はいかがでしたか?
小松:活発で優等生タイプの女の子だと思いました。ただ、オーディションのときは「かわいらしいほうがいいのかな」、「三女らしく妹感があったほうがいいのかな」と考えて演じていたんです。
でもスタッフさんから「もっとしっかりした部分を出しても大丈夫です」と言われて、アフレコが始まるとそのディレクションの意味に納得しました。
周りにこんな個性的なキャラクターがいたらしっかりせざるをえない(笑)。
イーナの兄弟関係も複雑ですが、何よりもまず「私自身がしっかりしなきゃ」と思いました。キャラクター的にも、キャスト的にも……。
三村:キャストはみんなボケ担当ですから(笑)。
小松:キャストの中ではエル役の下野(紘)さんがお兄ちゃんで、ボケもツッコミもしている忙しい立ち位置です。
一番暴走しているのはエリーゼ役の西(明日香)ちゃん。現場の引き金担当、いわば着火役で周りを巻き込んで爆発していくタイプです(笑)。
そこに下野さんが水をかけて消化してくれて、私も援護に回ることがありました。
――賑やかな現場が想像できます(笑)。三村さんがルイーゼに抱いている印象は、アフレコ前後で変わりましたか?
三村:印象はオーディションのときからあまり変わっていなくて、元気な女の子として演じていました。
ただ、私が思っていた以上にテンションの高さを求められて「もっと元気に明るく」などのディレクションをいただきました。それからは回を重ねるごとに限界突破したような、底抜けに明るい声になりました。
先日3話目の完成映像を見ていて「このときはまだテンションが低いな」と自分で驚いたくらいです。
小松:ルイーゼのテンションは物語が進むにつれてどんどん上がっていました。とくに後半はすごい。地が出てきてしまった結果だと思います(笑)。
三村:5話目を見ると「あ、テンションがだんだん上がってきたな」と感じてもらえるかと。私自身、ルイーゼと似通っている部分がかなりあるのでとても演じやすかったです。……おっさんっぽいところとか(笑)。
――小松さんはイーナと自分が似ていると思う部分はありますか?
小松:根が真面目なところです(笑)。あとはタジタジになりながらも結局周りのテンションに乗ってしまうところも似ているかもしれません。
三村:小松さんもイーナちゃんも、ノリのいい常識人です。
■エルを兄弟にしたいけど……
――ところでヴェルのように自分が転生するとしたら、何番目の兄弟に生まれたいですか?
三村:絶対に長女がいいです! 私自身は末っ子なので、長女になって兄弟たちを操りたい願望があります(笑)。
小松:転生しても真ん中あたりがいいです。
私は長女ですが兄と弟がいるので実質2番目。兄ほどしっかりしなくてもいいし、弟がいることで優位に立てるので、今のポジションがちょうどいいな、と感じています。
ただ、8人兄弟だった場合は真ん中よりは上にいたいので、少しは自由が利きそうな3番目くらいがいいです。一番下は嫌(笑)。
三村:ヴェルみたいに独立できるくらいの才能があればいいんですが、可能性が低いので……。
小松:イーナと同じく、三女がちょうどいいです。
――もし兄弟にするならどのキャラクターがいいですか?
三村:お兄ちゃんにするならエル、お姉ちゃんにするならイーナちゃんです。しっかり弟や妹の面倒を見てくれそう。
小松:たしかにエルはいいお兄ちゃんになりそうですが、私はあえて弟にしたいです。いじられ愛され系キャラとしてかわいがりたい。
ヴェルはお兄ちゃんにすると頼れそうな気もします。転生前の世界で経験した人生がある分、視野が広そうです。
三村:でもヴェルは厳格な部分がありそう。エルならいい意味で適当なので、ふとしたタイミングでマウントが取れると思っています(笑)。
小松:エルは妹を溺愛しすぎて、彼氏ができたときに「俺にも会わせろ、話はそれからだ」と言いそうで面倒かもしれません。
姉妹にするなら誰がいいかな……。ヴィルマはよく食べるので家計が火の車になりそう(笑)。姉妹というよりは、いとこにしたいです。
イーナは妹。ルイーゼは姉にしたら大変そうですが、長女にエリーゼがいればなんとかなるかもしれません。エリーゼ、ルイーゼ、私、イーナの順で姉妹になりたいです。
三村:面倒ごとは全部エリーゼにお任せできそう(笑)。
――最後に、アニメを楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
小松:本作の主人公は普通に見えて、ちょっと普通ではない部分があるタイプです。真面目かつ丁寧に成果を積み上げていく展開に心をくすぐられると思います。
ファンタジーならではの要素と人間関係のいざこざが両方楽しめるのも魅力的。自分も冒険者になったつもりで、一緒に作品を楽しんでいただけたら嬉しいです。
三村:言いたいことをすべて言われてしまいました(笑)。
音楽も映像もステキな作品なので、日常のちょっとした風景にも注目してください。ヴェルの成長記を一緒に見届けてほしいと思いますし、ルイーゼの“お色気側室大作戦”も見どころのひとつです。ぜひ楽しみにしていてください!
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記事用の写真撮影では、腕で漢字の「八」を模した“八男ポーズ”を披露。別パターンとして、指で数字の「8」を描く仕草も見せてくれた。
どちらも小松さん、三村さん、エリーゼ役・西明日香さんがパーソナリティーを務めるWebラジオ『八男って、それはラジオでしょう!』発の決めポーズ。誰でも簡単にできるので、ぜひ本作のファンで集まるときに真似してほしい。
インタビュー後編ではヴェンデリン役・榎木淳弥さん、エリーゼ役・西明日香さんにインタビュー。脚本を読んだときの意外なエピソードなどをお楽しみに!
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(C)Y.A/MFブックス/「八男って、それはないでしょう!」製作委員会