2010年度よりスタートし「PROJECT A」「アニメミライ」と名称を変更しつつ、本年の「あにめたまご2020」にて通算10年目の実施となる。
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新作オリジナルアニメ作品制作の実習と一般社団法人日本動画協会が提供する講習を通じ、若手アニメーターの基礎スキル向上を目指す取り組みの「あにめたまご」は、先日無事全てのカリキュラムと作品制作が完了した。
今回は作品制作と人材育成に名乗りを上げた3社のうちの1つ、『みちるレスキュー!』を手掛けたゆめ太カンパニーを訪問し、於地紘仁監督と天野幸大プロデューサーに、本プロジェクトで得られた知見についてお話をうかがった。
[取材=沖本茂義、文=いしじまえいわ]
◆『みちるレスキュー!』作品紹介
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(C)於地紘仁・ゆめ太カンパニー/文化庁 あにめたまご2020
【あらすじ】
宇宙空間を飛ぶ赤黒い光の球を追いかけ青、黄、銀、紫の球が飛び交いながら激しくぶつかる。ついに青い光球だけが地球に落下し、ふわふわとみちるが眠る部屋の中へ…。一方、赤黒い球体も地球に現れる。少年のシルエットに姿を変え、違法飼育者が飼うメジロを増殖させる。ある日、公園のフリーマーケットに出品しているみちる。そこへ空を覆いメジロの大群がやってきて人々を襲う。すんでのところで黄、銀、紫の光球がメジロたちを鎮めるが、再び激しくさえずり始める。その時、メジロたちの助けを求める声がみちるの頭の中に響き渡る。メジロを助けるためにはどうすればいい? みちるは、胸の奥に熱いものが生まれたのを感じる。
■企画コンセプトは20年以上前、『オズの魔法使い』から
――早速ですが、今回あにめたまご2020にエントリーした目的について教えて下さい。
天野:弊社代表の山口(聰)がアニメーター出身ということもあり、本プロジェクトの趣旨に賛同しておりまして、実は第1回からエントリーをしていたんです。
――第1回というのは「あにめたまご」という名称になってからですか?
天野:いえ、「アニメミライ」等を含めた“若手アニメーター等人材育成事業”全体の第1回です。
今回も含めて過去3回応募させていただいたのですが、今回晴れて採択していただいたという流れです。
――10年来の参加実現だったのですね。本プロジェクトに対して、具体的にはどういった意義をお感じですか?
天野:最初にエントリーした時から10年を経て、新人アニメーター人口の減少はより顕著になっていますから、若手を育成することでアニメーター人口の裾野を広げる意義は大きいと思います。
もちろん弊社所属の若手に技術を身に付けさせたいという狙いもあります。
――於地監督にはどういった経緯でどのようなご相談があったのですか?
於地:ある日社長から「こういうのあるんだけどやってみない?」と言われまして(笑)。
本プロジェクトではTVアニメ1話分相当のオリジナル短編企画が必要になりますので、その企画提案も込みでお話を頂きました。
オリジナル企画を作らせていただけることは演出家にとってはやりがいのある仕事ですし、自分にとってオリジナル作品の監督は初ということもありましたので受けさせていただきました。
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左:天野幸大プロデューサー/右:於地紘仁監督
――『みちるレスキュー!』はどういったコンセプトで企画されたのでしょうか?
於地:実はご依頼を受けてから締め切りまでが10日程度と非常にタイトだったので、自分の頭の中にずっとあった企画のうちの1つを再構築したのが本作です。
そもそもは『美少女戦士セーラームーン』のように女の子が活躍するアニメを、もう少しかわいさ寄りのテイストで作ってみたいというものでした。
たまたま仕事の合間にコンテ用紙の片隅に描いた”でっかいぬいぐるみのライオンにまたがって空を飛ぶ女の子”の絵を気に入って、それを軸に設定や物語を肉付けしていきました。
――主人公のみちるはもちろん、彼女の脇を固める3人のキャラクターも印象的ですが、何かモチーフはあるのでしょうか。
於地:『オズの魔法使い』ですね。
――ああ、なるほど! 臆病なライオンとかかしとブリキの木こりですね。
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於地:『獣戦士ガルキーバ』(※1995年放送、於地氏は脚本、絵コンテ、演出で参加)が桃太郎や金太郎をモチーフにしていたことから知見を得て、本作は童話を題材にしました。
『オズの魔法使い』とは、ファンタジー的な作風や少女とライオンが登場するという点が企画イメージと共通していましたし、複数のキャラクターが登場するのでチームものとしてお話を作りやすいという狙いもありました。
――なるほど。本作の物語としての見どころはズバリどこでしょう?
於地:最近は、深夜帯のノベル原作作品など既存ファンに向けたアニメが増えているように感じます。
本作は前提知識がなくても子供やご家族などアニメファンではない幅広い方々にも楽しんでもらえる作風を目指しました。
多くの方に楽しんでいただけたらと思います。
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