八神太一役の花江夏樹は、「最後の物語だけれどポジティブなとらえ方ができる」と、本作の魅力を口にした。また、アグモン役の坂本千夏はアフレコの際「太一との時間を大事にしよう」と心がけていたという。
“八神太一とアグモンたちの最後の物語”と銘打った本作に2人はどう向き合ったのだろうか。演技に込めた想いや、『デジモン』シリーズへの愛をうかがった。
[取材=ハシビロコ、江崎大/文=ハシビロコ/撮影=小原聡太]
■「太一との時間を大事にしよう」と思った
――本作のプロジェクトを知ったのはいつ頃でしたか?
花江:『デジモンアドベンチャー tri.』6章の劇場上映前の取材などをしていた時期に「次の『デジモン』がある」と聞いた覚えがあります。
坂本:『tri.』6章のあとでアグモンの「また会えるね」というセリフを収録して、私も「またみんなに会えるんだ」と初めて知りました(笑)。まさか最後の物語になるとは。
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――本作では大学生になった太一が登場します。花江さんは『デジモンアドベンチャー tri.』では高校生の太一を演じましたが、演じるうえで心境の変化はありましたか?
花江:演じ分けについては、それほど意識していません。監督からも「無理して大人にしようとしなくていい」と言われました。
言葉や見た目、置かれた環境の違いなどから大学生に成長した太一が見せられると思ったので、声のトーンなどを大きく変えてはいません。
――台本を読んだときの印象はいかがでしたか?
坂本:台本を読み進めていくうちに“最後”に向かっていく感じがあり、「本当に最後の『デジモン』なんだな」と思いました。
花江:台本を読んでいる途中で悲しい気持ちになったときもありましたが、ポジティブなとらえ方もできるラストだと思います。
たしかに最後の物語ではありますが、太一とアグモンの信頼関係は変わらない。すべてが終わってしまったわけではない気がします。
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坂本:私の場合、悲しい気持ちにはならないようにしたいと思っていたので、アフレコでは「いつも通りの太一との時間を大事にしよう」と心がけました。
大人になった太一を「かっこいいな」と思ったり、「やっぱり太一は太一だな」と思ったりと、感じることはさまざまですが、太一を見守るアグモンのまなざしは変わらないのだと伝えたかったんです。
――アフレコ現場には「最後の物語」ならではの雰囲気はあったのでしょうか?
花江:少なくともお通夜のような暗い感じではなく(笑)、和気あいあいとしていました。
坂本:ほとんどのみなさんは私たちよりもセリフが少ないので、余裕があったと思います(笑)。
本作で再会した『デジモンアドベンチャー02』のキャストからは、キャラクターを演じられる喜びが全身から伝わってきました。
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花江:『02』の“選ばれし子どもたち”を演じる新キャストは、緊張感もあったと思います。僕も『tri.』に参加したばかりの頃は緊張していたので、気持ちはよくわかるんです。
アフレコ中は「がんばれ!」と密かに応援していました(笑)。
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