“アニメ映画激戦時代”のいま注目すべきクリエイターは? 新海誠、長井龍雪、伊藤智彦…12人の監督【まとめ】 | アニメ!アニメ!

“アニメ映画激戦時代”のいま注目すべきクリエイターは? 新海誠、長井龍雪、伊藤智彦…12人の監督【まとめ】

2016年に『君の名は。』が歴史的大ヒットを記録するなど、近年映画の世界でもアニメ作品の活躍が目立つようになってきました。

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新海誠
新海誠 全 22 枚 拡大写真
2016年に『君の名は。』が歴史的大ヒットを記録するなど、近年映画の世界でもアニメ作品の活躍が目立つようになってきました。

今年は特に劇場アニメの公開本数が多く、かつてはアニメ映画と言えばディズニーやスタジオジブリ、一部の児童向け作品だけだったのが、裾野が広がり多彩な作品が映画館で観られるようになってきました。

アニメ作家にとってTVも未だ重要な表現の場ですが、映画もそれと同じくらい重要かつポピュラーな場所になりつつあると言って良いでしょう。

そこで、現在映画で活躍する注目のアニメ作家を12人に絞って紹介します。



新海誠 ―日本映画の新たなメガヒットメイカー――



興行収入250億円を超え、日本映画歴代2位の成績を叩き出した『君の名は。』で一躍時の人となった新海誠監督。

日本アニメどころか、日本映画界をしょって立つような存在になりつつありますが、そのキャリアの出発点は、1人で製作した短編映画『ほしのこえ』です。『秒速5センチメートル』では切ないストーリーと美しい背景描写で多くのアニメファンの心を掴みました。

新海監督の最大の持ち味は、一瞬で目を奪われるほど美しく緻密な風景と雨や雪などの自然現象の豊かな描写、そしてボーイ・ミーツ・ガールのストーリー。
デビュー作から一貫しているその個性は、大ヒット中の最新作『天気の子』でも全面的に発揮されています。
『天気の子』(C)2019「天気の子」製作委員会『天気の子』(C)2019「天気の子」製作委員会

【フィルモグラフィー】


『ほしのこえ』(2002)
『雲の向こう、約束の場所』(2004)
『秒速5センチメートル』(2007)
『星を追う子ども』(2011)
『言の葉の庭』(2013)
『君の名は。』(2016)
『天気の子』(2019)


湯浅政明 ―日本アニメきっての個性派監督―


湯浅政明
現在の日本のアニメ界で最も強烈な個性を持った監督と言えば湯浅政明監督です。

『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』のTVシリーズの原画として頭角を現し、『劇場版クレヨンしんちゃん』シリーズで重要シーンの原画を担当するなどのキャリアを積んだ後、長編監督デビュー作『マインド・ゲーム』が国内外で多数の賞を受賞し、新進気鋭のアニメ作家として認知されます。
その後、TVアニメの監督を経て、『夜明け告げるルーのうた』でアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門の最高賞を受賞する快挙を成し遂げました。

独特の傾いたパースや、流体のように自在に変化するアニメーションを特徴としており、その独特のセンスは国内外に熱狂的なファンが多数存在し、日本アニメきっての個性派監督として唯一無二の地位を築いています。

『夜明け告げるルーのうた』(C)2017 ルー製作委員会『夜明け告げるルーのうた』(C)2017 ルー製作委員会

【フィルモグラフィー】


『マインド・ゲーム』(2004)
『夜は短し歩けよ乙女』(2017) 
『夜明け告げるルーのうた』(2017)
『きみと、波にのれたら』(2019)
『犬王』(2021)


山田尚子 ―京都アニメーションが生んだ映画の天才―


山田尚子監督
細やかな心理描写とセリフに頼らない感情表現、卓越した映画的センスで他の追随を許さない天才、それが山田尚子監督です。

京都アニメーションに入社後、数年で頭角を現し、『けいおん!』の社会現象的大ヒットで一躍注目の存在となり、続く『たまこまーけっと』とその劇場版『たまこラブストーリー』も高い評価を受け、その確かな実力を示しました。

『映画 聲の形』ではいじめと障害という難しい題材に挑戦、思春期の繊細な心の動きを見事に捉えた傑作に仕上げています。
『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ『リズと青い鳥』では2人の少女の言葉にならない感情を映像で見事に掬い上げてみせ、その芸術的センスを見せつけています。

何気ない仕草やわずかな足の動きだけで感情表現するのが得意で、表に出にくい複雑な心理も見事に描いてみせます。

『リズと青い鳥』(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

【フィルモグラフィー】


『映画 けいおん!』(2011)
『たまこラブストーリー』(2014)
『映画 聲の形』(2016)
『リズと青い鳥』(2018)


細田守 ―パーソナルな体験を大事にする世界で高評価のヒットメイカー―



数々の大ヒット作を監督し、日本アニメを代表するヒットメイカーの1人として定着した細田守監督。

東映アニメーションで数々のTVアニメで演出を担当し、劇場版『デジモンアドベンチャー』シリーズの2本が高い評価を受け、2006年の『時をかける少女』で次代を担うアニメ作家として名乗りを上げ、『サマーウォーズ』で国内のヒットメイカーとしての地位を確立。
最新作『未来のミライ』では米国アカデミー長編アニメーション部門にノミネートされるなど国際的にも高い評価を得ています。

人物に影をつけない「影なし作画」が大きな特徴。近年の映画では自身の家族体験を題材にすることが多く、パーソナルな視点の物語を持ち味にしています。

『サマーウォーズ』(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

【フィルモグラフィー】


『デジモンアドベンチャー』(1999)
『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)
『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』(2005)
『時をかける少女』(2006)
『サマーウォーズ』(2009)
『おおかみこどもの雨と雪』(2012)
『バケモノの子』(2015)
『未来のミライ』(2018)


長井龍雪 ―青春の痛みと優しさ描く感動作りの職人―


『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あのはな)』で日本中のアニメファンを涙させ、次代を担う存在として一躍注目された長井龍雪監督。

脚本家の岡田麿里、アニメーターの田中将賀と組むことが多く、3人が初めて揃ったTVアニメ『とらドラ!』で高い評価を受け、その後、同じ3人が組んだ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』が大ヒットを記録。
『あのはな』と同じく秩父を舞台にした『心が叫びたがってるんだ。』は初のオリジナル長編映画となり、前作を超える興行収入を記録。2019年10月11日公開予定の『空の青さを知る者よ』もヒットが期待されています。

脚本家・岡田麿里と相性が良く、リアルな青春の痛みと成長を描くことに長けており、情感豊かなアニメーションを作ることに定評があります。

『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(C)ANOHANA PROJECT

【フィルモグラフィー】


『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2013)
『心が叫びたがってるんだ。』(2015)
『空の青さを知る者よ』(2019)


原恵一 ―「クレしん」シリーズを国民的アニメに押し上げた功労者―



アニメは今や老若男女が観るメディアへと成長しましたが、原恵一監督はそんなアニメの魅力を大人にも広く知らしめることに大きく貢献した1人です。

『クレヨンしんちゃん』シリーズのTVアニメの演出を手掛け頭角を現し、劇場版の監督も担当。2001年の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』は大人の映画ファンからも絶賛されました。
その後、多数の長編アニメ映画を監督、国内外で数多くの賞を受賞し、日本を代表するアニメ映画監督の1人と目されています。

ファンタジーもリアルな世界も題材にできる高い職人性を持ちながらも、独自の世界を高い技術と、鋭い観察眼で丁寧に描き続けています。
『百日紅 Miss HOKUSAI』では時代劇に挑戦、また実写映画『はじまりのみち』を監督するなど、他の監督とは一線を画するチャレンジを続けて独自の道を切り開いています。

『百日紅 Miss HOKUSAI』(C)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

【フィルモグラフィー】


『エスパー魔美 星空のダンシングドール』(1988)
『ドラミちゃん アララ・少年山賊団!』(1991)
『ドラミちゃん ハロー恐竜キッズ!!』(1993)
『映画 クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』(1997)
『映画 クレヨンしんちゃん 電撃!ブタのヒヅメ大作戦』(1998)
『映画 クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(1999)
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』(2000)
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001)
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002)
『河童のクゥと夏休み』(2007)
『カラフル』(2010)
『百日紅 Miss HOKUSAI』(2015)
『バースデー・ワンダーランド』(2019)


庵野秀明 ―「エヴァ」で一世風靡、実写も手掛ける国民的映画監督―


庵野秀明
『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットで、日本はおろか世界のアニメファンにその名を知らしめた庵野秀明監督。アニメだけでなく実写映画でも活躍し、映画監督として広く認知されるようになりました。

大学在学中から自主制作アニメで高いセンスを示し、プロになってから『風の谷のナウシカ』の巨神兵のシーンなどを担当し高い能力を発揮しています。
OVAシリーズ『トップをねらえ!』、NHKで放送された『ふしぎの海のナディア』で広く注目され、1995年『新世紀エヴァンゲリオン』での少年の心の闇を鋭く抉る心理描写や斬新な展開が話題となり、社会現象を巻き起こします。

「エヴァ」以降は、実写映画も監督するようになり、『シン・ゴジラ』は震災以降の日本社会を鋭く見つめ高い評価を得ています。さらに、監督自身が大きな影響を受けたと公言する『ウルトラマン』の新作実写特撮『シン・ウルトラマン』(2021年公開予定)に企画・脚本で参加することが発表され、どのような作品になるのか注目されています。

『新世紀エヴァンゲリオン』(C)カラー/ Project Eva.(C)カラー/ EVA 製作委員会

【フィルモグラフィー】


『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』(1997)
『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(1997)
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(2007)
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009)
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(2012)
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(2020)


河森正治 ―可変メカの第一人者であり、歌とバトルの斬新なコラボの生みの親―



『ガンダム』と並ぶロボットアニメシリーズ『マクロス』を手掛けた河森正治監督は、クールなメカニックデザインを武器に数多くのロボットアニメを手掛けたアニメ界の重鎮。

20代で『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の監督に抜擢され、歌とSFバトルの相乗効果という斬新な手法をアニメ界に定着させた功績は計り知れません。
その後も『マクロス』シリーズを中心に、多数のアニメの監督やメカニックデザインを手掛けています。

ロボットバトルと美少女アイドルの歌を並列させた独自の世界観は、日本アニメの定番の一つとなり、様々な派生作品を生み出しました。

「マクロスΔ」(C)2017 ビックウエスト/劇場版マクロスデルタ製作委員会

 【フィルモグラフィー】


『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 』(1984)
『マクロスプラス MOVIE EDITION』(1995)
『劇場版アクエリオン』(2007)
『Genius Party ジーニアス・パーティ(オムニバスの一編を監督)』(2007)
『劇場版マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~ 』(2009)
『劇場版マクロスF 恋離飛翼~サヨナラノツバサ~』(2011)
『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ 』(2018)
『誰ガ為のアルケミスト 』(2019)


水島精二 ―「ハガレン」「ガンダム00」を成功に導いた個性派職人監督―


水島精二
水島精二監督はファンタジーやSF作品からギャグアニメまで、多くのジャンルでその手腕を発揮しています。

制作進行としてキャリアを開始し、『新世紀エヴァンゲリオン』など多数のTVアニメで演出を担当した後、『ジェネレイターガウル』で初監督。2001年に放送スタートしたTVアニメ『シャーマンキング』で注目され、『鋼の錬金術師』『機動戦士ガンダム00』の2つの長期シリーズを質の高い作品に仕上げたことでアニメファンの支持を確固たるものにしました。
オリジナル映画『楽園追放』ではフル3DCGに挑戦、ハードなSF設定と重厚感ある物語を迫力あるアクションとともに描き高い評価を得ました。

安定した演出力で、どんな作品でも対応する幅広さが持ち味。同じ姓を持つ水島努監督とともにサービス精神あふれる娯楽映画を作る名手です。

『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(C)東映アニメーション・ニトロプラス/楽園追放ソサイエティ

【フィルモグラフィー】


『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』(2005)
『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』(2010)
『UN-GO episode:0 因果論』(2011)
『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)
『劇場版 ひらがな男子 序』(2018)


水島努 ―サービス精神旺盛な娯楽映画が得意―


数々のTVアニメをヒットに導き、コメディ、スリラー、シリアスなドラマからアクションものまで幅広い作品を手掛ける職人肌の水島努監督。

90年代に『クレヨンしんちゃん』シリーズの演出に抜擢され、2000年代には数多くの原作もののTVアニメの監督を手掛け、多くのヒット作を監督しました。
2010年の『侵略!イカ娘』でシュールなギャグセンスを見せ、『ガールズ&パンツァー』では女子高生に戦車に乗らせる奇抜な発想でアニメファンの心を掴みました。
『SHIROBAKO』ではアニメ業界の内幕ものに挑戦。アニメ製作への深い愛情を感じさせ、こちらも大きな話題となりました。

原作ものの作品では原作の良さを引き出すことに長けており、どんなタイプの作風でも水準以上の作品を作り上げる職人肌の監督として知られています。
オリジナル作品『ガールズ&パンツァー』で見せたこだわりのアクションと音響の演出とマニアを唸らせるディテールの描写、ファンの期待に応えるサービス精神旺盛な作りで一級の娯楽映画を作り上げ続けています。
「SHIROBAKO」(C)「SHIROBAKO」製作委員会

【フィルモグラフィー】


『クレしんパラダイス!メイド・イン・埼玉』(1999)
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』(2003)
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ夕陽のカスカベボーイズ』(2004)
『劇場版 ×××HOLiC 真夏ノ夜ノ夢』(2005)
『ガールズ&パンツァー これが本当のアンツィオ戦です!』(2014)
『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)
『ガールズ&パンツァー 最終章 第1話』(2017)
『ガールズ&パンツァー 最終章 第2話』(2019)
『劇場版 SHIROBAKO』(2020)


片渕須直 ―『この世界の片隅に』で一世風靡―


片渕須直
太平洋戦争中の広島の日常を描いた『この世界の片隅で』で一世風靡した片渕須直監督の名前は、もしかしたら終戦記念のある8月には必ずみかけるようになるかもしれません。

多数のTVアニメで演出を手掛け、スタジオジブリの『魔女の宅急便』で演出補を務めた後、『アリーテ姫』の構想を練り始め、2000年に同作で長編映画デビュー。
2009年の『マイマイ新子と千年の魔法』は口コミでロングランを記録し、その実力が知れ渡るようになります。
『この世界の片隅に』は、公開開始から2年以上途切れることなく上映が続く異例のロングランを記録、多数の映画賞を受賞し、毎年8月に観るべき新たな名作との声もあります。

柔らかいタッチに、徹底したリサーチでディテールを作り込み、人間の生活を精緻に描き、ファンタジックかつリアリティを感じさせ、アニメならではの表現力を追求しています。

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」(C)2018こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
【フィルモグラフィー】
『アリーテ姫』(2000)
『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)
『この世界の片隅に』(2016)
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』(2019)


伊藤智彦 ―「SAO」の成功を糧にさらなる高みへ―



TVシリーズで培った実力を映画でも遺憾なく発揮した伊藤智彦は次にどんなステップアップを果たすのか最も注目されている監督かもしれません。

制作進行としてアニメ業界でキャリアを開始し、演出に転向。数々のTVアニメで演出を担当し、細田守監督の『時をかける少女』『サマーウォーズ』で助監督を務めて経験を積んだ後に監督デビュー。
2012年に放送された『ソードアート・オンライン(SAO)』で一躍その名を知られ、同作の劇場版も監督。
2019年9月20日には待望のオリジナル映画『HELLO WORLD』の公開が控えています。

ジュブナイル作品のような瑞々しさとスケールの大きなアクションを両立し、SF作品としても優秀だった『SAO』を経て、伊藤監督がどんな世界を描くのか注目です。

『HELLO WORLD』(C)2019「HELLO WORLD」製作委員会
【フィルモグラフィー】
『劇場版 ソードアート・オンライン オーディナル・スケール』(2017)
『HELLO WORLD』(2018)


◆ ◆ ◆
ここに挙げた12名の他にも数多くのアニメ作家がスクリーンで活躍し始めています。
大きな画面とクリアな音響のある映画館は、映像作家の個性を最大限に引き出し、観客に味あわせてくれます。今後、ますます映画で活躍するアニメ作家は増えていくでしょう。

《杉本穂高》

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