劇場版「タガタメ」河森正治×今泉潤Pが明かす制作秘話 「ファンムービーではなく“映画”をつくる」【インタビュー】 | アニメ!アニメ!

劇場版「タガタメ」河森正治×今泉潤Pが明かす制作秘話 「ファンムービーではなく“映画”をつくる」【インタビュー】

なぜ『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』はオリジナルキャラを原作後の世界に投入させる大胆なプランを投入したのか。新たなる物語創造までの軌跡を、河森正治総監督と、Fuji&gumi Gamesの今泉潤プロデューサーに聞いた。

インタビュー スタッフ
『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』河森正治総監督×今泉潤プロデューサーインタビュー
『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』河森正治総監督×今泉潤プロデューサーインタビュー 全 13 枚 拡大写真
全世界で900万DLを突破した本格タクティクスRPGの映画化作品『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』が、6月14日に全国公開を迎える。

総監督に『マクロス』シリーズでおなじみの河森正治を迎えた本作は、オリジナル主人公のカスミが登場。普通の女子高生である彼女が、原作キャラクターたちと共にバベル大陸で奔走するオリジナルストーリーが展開される。

とことん原作に忠実な作品もある中、なぜ本作はオリジナルキャラを原作後の世界に投入させる大胆なプランを投入したのか。
バベル大陸で展開される新たなる物語創造までの軌跡を、河森正治総監督と、Fuji&gumi Gamesの今泉潤プロデューサーに聞いた。
[取材・構成=山田幸彦]

『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』本ポスタービジュアル(C)2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight

■ファンムービーではなく、“映画”を!


――河森総監督は以前に『タガタメ』原作のOPアニメも手がけられていますが、今泉プロデューサーはどういった経緯でお声がけをしたのでしょうか?

今泉:僕はもともと映像業界の小さい制作会社にいて、低予算なドラマのプロデューサーをやっていたんです。その経験があったので、自分が手がけたゲームでアニメを作るときは、昔は組むことさえ考えられなかった、お仕事を共にすることで大きな刺激になるような方に依頼したいと思っていたんです。そこで河森正治さんにお願いし、引き受けていただいたという流れでした。
ただ……いざ一緒にお仕事をするとめちゃくちゃ緊張しました(笑)。

河森:そうだったんだ(笑)。

今泉:そうなんです(笑)。

――河森総監督にどんな映画を作ってもらいたいと考えていましたか?

今泉モバイルゲームの映画化って、「ユーザーに課金してもらって、余った金で映画を作ってるんでしょ?」という穿った見られ方をされることが多い。
なので、メッセージ性のあるちゃんとした“映画”を作りたいと考えていました。
せっかく河森さんが引き受けてくれたのだから、既存のユーザーが見たいシーン、見たいキャラが出てくるだけの映画をやっても意味はないですからね。

なので、最初から「とにかく河森正治の作品にしてください!」とお伝えしていました。原作が盛り上がる作品にもしたいので、人気キャラのセリフやスキルを入れて欲しいというお願いをした部分もありますが、こちらの要望は本当にそれくらいでした。

『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』場面写真(C)2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight
――河森総監督としては、原作のどのような部分に惹かれましたか?

河森:これは、ゲームのOPに携わったときから言っていることですが、僕は『誰ガ為のアルケミスト』という言葉が持つテーマ性に惹かれたんです。スキルではなく心の錬金術に焦点を当てたらエモーショナルなものが作れるのではないかと。

もともと錬金術自体に興味はあったんです。ただ、錬金術を扱った作品はほかにもあったし、オリジナルの企画を通す難しさもありました。そしてなによりも、僕は似たような作品が既にあるとやらないタイプなので(笑)。

――ゲームとは大きく違うオリジナル要素が、現代の女子高生・カスミを主人公にするという設定です。このアイデアはどのタイミングで出てきたのでしょうか?

今泉:そもそも、当初からゲームの後日談を描く形式だったわけではないんです。

河森:まず、本編の一章をアニメ化しようとしたんですが、ちょっと難航しまして。その後、しばらく二章を描こうとしていた時期があったんですよ。

今泉:その途上、監督からキャラにもオリジナル要素を加えたい……とお話を聞いたので、「本編のその後を描きましょう」と提案させていただきました。
終わった後の話なら、ゲームの終盤で僕が帳尻を合わせればいいので、自由にお話を作れるのではないかなと。そこで、主人公をオリジナルキャラにする流れになりました。

『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』新場面写真(C)2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight
河森:もともと自分が温めていた企画の中に、異世界に飛ばされた女の子のお話がありました。でも、異世界もキャラも自分のオリジナルだと、自由度の高さゆえに作者側に都合の良い葛藤をお話に設けてしまう部分があり、そこから脱するのに難儀していたんですね。

そんな中、すでにある『タガタメ』の世界観にこちらのプランを持ち込めば、バベル大陸に放り込まれたオリジナルキャラには自然と感情の動きが生まれますし、バベル大陸の人間と現代の人間のぶつかり合いを描ければ、映画足り得るのではないかと思ったんです。

今泉:劇場版『タガタメ』の企画時、サービス開始から2年が経過していました。それだけ時間の経ったゲームの内容を2時間の映画に収めるのは非常に難しいと感じていたんですよ。なので、河森総監督のアイデアは原作知識がなくても楽しめるし、とても良いなと。

ただ、今のご時世は“転生もの”がすごく多いので、「それと同じように見られたら嫌だな」とも思いました。……が、転生ものとの違いは、観ていただければすぐにわかると思います。
そもそも、カスミは全然無敵じゃないんですよね。

河森:最弱ですね(笑)。

今泉:そこが懐かしくもあり、新しくもあるんです。観やすさと新鮮さが同居していて、とても素敵だなと。

『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』新場面写真(C)2019 FgG・gumi / Shoji Kawamori, Satelight
――ゲームでも戦いの要となる幻影兵(ファントム)としてカスミが召喚される展開には、「なるほど!」と思いました。

河森:バベル大陸にもいくつか国があり、そこには幻影兵を召喚するアルケミストがいて……という設定を説明するのが難しいから、別の敵を用意するプランもあったんです。
でも、カスミをバベル大陸に召喚するなら、幻影兵として呼ばれたほうが収まりが良い。それで今の形に持って行きました。

カスミをただの幻影兵ではない存在にすることで、本来の幻影兵たちも掘り下げられたのはよかったですね。

――幻影兵は戦いで頼りになる英雄であると同時に、死後も戦いを続けさせられる存在でもあります。彼らの内にある葛藤も描かれていました。

河森:ゲームではバトルがメインになってくるから、ゲームでは見えにくい彼らの心情も描くことで、キャラとしても深くなるし、原作を知っている人にも楽しんでいただけると考えました。

今泉:「哲学的な要素をここで入れてくるとは!」と驚きましたね。『タガタメ』はモバイルゲームなので、ガチャでレアなキャラクター=幻影兵を引いて戦わせるのも面白さのひとつなんです。
でも、アルケミストの都合で呼ばれる幻影兵たちにも思うところがあるよな、と。カスミという女子高生が召喚されることで、別の視点が生まれてくるのが面白かったです。


→次のページ:変化を迎えたバベル大陸の人々と、カスミの交流
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《山田幸彦》

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