■新しいオリジナルと、オリジナル作品のリメイクと
――設立当初のカルチャーは、いまでもタツノコプロにも引き継がれているのでしょうか?
桑原
「世界の子供達に夢を」という吉田竜夫の理念を引き継いでいます。タツノコプロがある限りは絶対にブレないです。
あとはオリジナルへのこだわりです。もともとマンガ家であった3人が作ったプロダクションなのでこれにこだわっています。ここ数年作った作品も、マンガや小説の原作があるものはほとんどなく、オリジナルやオリジナルのリメイクだったりです。
――新作オリジナルもやりつつ、自社作品のリメイクと、バランスをとるかたちですね。
桑原
タツノコプロのミッションはふたつあって、ひとつは先輩たちが残したコンテンツやキャラクターをいまの時代に輝かせること。
もうひとつは創業の精神を引き継いで、新しい作品を生み出していくことです。
その比率は僕の中では50対50。昔のコンテンツやキャラクターを蘇らせなくてはいけないし、新しいものも作らないといけない。
近年は55周年記念として、『タイムボカン24』と『Infinit-T Force(インフィニティ フォース)』という4大ヒーローが勢揃いする作品がありました。いまは全くのオリジナルを2作やっています。
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――新しい2作品というのは?
桑原
10月に発表した『エガオノダイカ』という全くのオリジナル作品で、来年1月から放送予定です。もうひとつは『KING OF PRISM』のシリーズ第3作目。
――これまでの作品のリメイクでは、『タイムボカン24』にレベルファイブが協力したり、『Infini-T Force』ではフルCGを採用したり、これまでとどこか違います。タイムボカンでは主役と悪役が入替わった『タイムボカン 逆襲の三悪人』もありました。これまでと違うことは意識されているのですか?
桑原
今の時代に蘇らせるために、何が一番効果的で、誰と一緒にやらせていただくのがベストかを考えていますね。リメイクはやはり難しいもので、そのままやってもダメですし、あまり変えすぎると昔のファンに喜んでいただけない。
『Infinit-T Force』は、すごくいいバランスで旧作のファンと新しい若いファンに応援していただけました。
『タイムボカン 逆襲の三悪人』は、一般の方からすると三悪人の馴染みが深いですよね。地上波の夕方に多くの人に見てもらうために、三悪人をたてるといいだろうとの戦略がありました。
■ドロンジョとブラック・ジャックがお見合い? 伝統と新しさ
――タツノコプロさんはオリジナルが強いのですが、そのキャラクター展開も意識されていますか?
桑原
キャラクター展開ということでいえば、作品をリメイクするとか、過去作をケーブルTVや配信で放送するだけでなく、グッズとして蘇らせてみなさんに触れてもらうというプロデュースの仕方もあると考えています。
昨年、『機甲創世記モスピーダ』のフィギュアを1体2万円弱ぐらいの価格で出しました。『ガッチャマン』などと比較すると一般的には決して認知度の高い作品ではないですが、コアファンが多くいらっしゃって。合計で10,000体ぐらいの受注をいただくことができました。
あとは『黄金戦士ゴールドライタン』のフィギュアも、ものすごく売れています。
――キャラクター展開では、結婚相談所のパートナーエージェントのCMにドロンジョ(『ヤッターマン』のキャラクター)と手塚治虫のブラック・ジャックが登場して共演したのに驚きました。
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桑原
相当話題になり、私も嬉しく思っております。最初は電車の駅貼りポスターとホームページの動画だけということだったのですが、キャラクターの力があったでしょう。いまも継続して先方には広告起用いただいております。
代理店のクリエイターがふたりのマッチングが面白いと、うちと手塚プロさんに提案されたんです。
――むしろ老舗の会社のほうが大胆でフットワークが軽いですね。
桑原
著作権を全部自分たちで持っているので自分たちの判断でできるのが、他のプロダクションさんと大きく違うのだと思います。
――最近、タツノコプロさんの作品数が増えてますが、意識して増やされているのですか?
桑原
自分たちができる範囲内で一生懸命やっているので、どんどん増やすことは意識してないです。自転車操業はいいことではありませんから。
あとは外部のプロダクションさんとも一緒にやっています。『Infini-T Force』は3DCGでもあるので、デジタル・フロンティアさんと。
去年、海外配信に向けてやった『トランスフォーマー』は、映像制作がスカラベさんというCGスタジオです。
CGに限らず、2Dの会社さんとも一緒にやっています。タツノコで企画やプロデュースをしたうえで、一緒にやらせていただくことは今後も考えています。
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――プロダクションであると同時に企画会社でもある。
桑原
そこは意識していますね。子どもから大人、ファミリーで見てもらえる作品を意識しつつ、同時にコアなアニメファンに向けて発信する作品もありますよね。
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