■『ハルヒ』がラノベじゃなくなる?
角川文庫は1949年に創刊された株式会社KADOKAWAの有する文庫レーベルで、古典や純文学から大衆文学まで幅広く取り扱っており、同社の数ある文庫レーベルの中でも基幹となるレーベルである。
一方、角川スニーカー文庫はライトノベルを専門とした角川文庫の派生レーベルだ。今回の移籍は『涼宮ハルヒ』シリーズがライトノベルから一般文芸書扱いとなり、夏目漱石や芥川龍之介などの純文学作品や『源氏物語』などの古典と同じ棚に並ぶことを意味する。
ただし、ライトノベルレーベルから一般文芸レーベルへの移籍は珍しいことではない。
『氷菓』としてアニメ化された『古典部』シリーズ(著・米澤穂信)は角川スニーカー文庫から角川文庫に移籍しているし、電撃文庫にて『塩の街』でデビューした有川浩の『図書館戦争』も現在角川文庫にラインナップされている。
レーベルで一般文芸書とライトノベルを区別することは可能だが、内容の面での垣根は最早低いと考えていいだろう。
■涼宮ハルヒシリーズは今後どうなるの?
『涼宮ハルヒ』シリーズが一般文芸書扱いになり表紙が写真になることで、今後新たに同シリーズを手に取る人も増えることだろう。
一方、新刊の発行については現在アナウンスされておらず不明のままだ。今後、同シリーズの新刊が出ることはあるのだろうか?
同シリーズの文庫本は2011年以降刊行されていないが、短編『あてずっぽナンバーズ』が2013年発売の『いとうのいぢ画集 ハルヒ百花』に、『七不思議オーバータイム』が2018年10月発売のムック本『ザ・スニーカーLEGEND』に掲載されている。文庫本が出ていないだけで、実は新作は度々発表されているのだ。
【なますに!】伝説の小説雑誌『ザ・スニーカーLEGEND』がおかげさまで大重版!!!
— スニーカー文庫@12/1新刊発売!! (@kadokawasneaker) 2018年11月27日
ハルヒ&アクアの描き下ろしイラストが目印ですよ!!
購入はコチラ⇒https://t.co/86n2lIkgFwhttps://t.co/y83tVndUU7 #ザスニLEGEND #nicoks pic.twitter.com/6aNOjIUwH7
上記2作品の他にも『涼宮ハルヒ劇場 ファンタジー編』『涼宮ハルヒ劇場 act.2』『Rainy Day』などの短編作品や、谷川流によって執筆されたアニメオリジナル作品『サムデイ イン ザ レイン』の脚本など、同シリーズの文庫未収録となっている作品が多数存在している。
中には現在入手困難なものもあるため、これらを収録した新刊が今後角川文庫から発行される可能性は否定できない。
また、来年2019年は『涼宮ハルヒ』シリーズの誕生から16年目となるが、「16年後」といえば、アニメ化もされた短編『笹の葉ラプソディ』でハルヒが七夕に短冊に書いて吊るした願い事のうち片方が織姫(アルタイル)に届く年でもある。
5年ぶりに新作『七不思議オーバータイム』が発表され、角川文庫への刊行も果たしたのは、ハルヒの「世界があたしを中心に回るようにせよ」という16年前の願いが彼女の希望どおり何らかの形で実現する予兆なのかもしれない。