アニメの海外進出成功のカギ、それは“確固たる目的”と“安定した作品供給のリソース” 塩田周三らが解説 | アニメ!アニメ!

アニメの海外進出成功のカギ、それは“確固たる目的”と“安定した作品供給のリソース” 塩田周三らが解説

日本アニメの海外進出をバックアップする「海外進出ステップアッププログラム」より、9月14日に第3回セミナー「海外展開の具体的な事例を知ろう!」が開催。ポリゴン・ピクチュアズの代表取締役・塩田周三氏と日本アニメーションの国際部部長・松岡泰彦氏が登壇した。

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アニメの海外進出成功のカギ、それは“確固たる目的”と“安定した作品供給のリソース” 塩田周三らが解説
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「クールジャパン」の名の下に、アニメ・マンガ・ゲームを代表とする国産ポップカルチャーコンテンツの海外進出に、政府も近年力を入れている。
そして数多くのアニメ製作スタジオ・クリエイターを抱える東京都も、日本アニメの海外進出をバックアップする試みとして、7月より「海外進出ステップアッププログラム」を実施している。

本プログラムは、海外進出を考えている都内のアニメーション制作/製作事業者を対象に、海外進出に関するノウハウやスキルを学べるセミナーや、海外での企画プレゼンテーションを実践的に学ぶワークショップを開催。
そして来年2月14日に開催される「東京アニメピッチグランプリ」でそのスキルを競い、入賞者は東京都より賞金や海外見本市(MIFA2019)出展支援を得られるという内容だ。

全5回予定のセミナーはすでに第2回までが終了。そして9月14日に第3回セミナー「海外展開の具体的な事例を知ろう!」が、近作ではTVアニメ『シドニアの騎士』『亜人』や、劇場アニメ『GODZILLA 怪獣惑星』シリーズなどで知られるポリゴン・ビクチュアズの代表取締役・塩田周三氏と、『世界名作劇場』や『ちびまる子ちゃん』を手がける日本アニメーションの国際部部長・松岡泰彦氏を講師に招いて開催された。
両社はどのようにして海外でのアニメビジネスを確立させていったのか? それが語られた本セミナーのレポートをお届けする。

海外進出では確固たる「目的」と安定した作品量産の「リソース」が必須(塩田)



「誰もやっていないことを圧倒的なクオリティで世界に向けて発信していく」というポリシーの下、今年で創立35周年を迎えたポリゴン・ピクチュアズ。2003年に代表取締役に就任した塩田氏からは、アメリカで数多くのアニメシリーズなどを手がけてきた過程で得てきた実践的なノウハウの数々が語られた。

90年代後半の日本の映像業界には、CG大作映画の興行的失敗などからCGに対してアレルギー的な拒絶が強かったという。
そのため、前述の会社としてのポリシーやそれまで培ってきたインフラや人材を活かすために世界へ活路を求めたことが、ポリゴン・ピクチュアズ海外進出の切っ掛けだったと塩田氏は語る。
このように「何故海外を目指すのか?」という目的を固めることが、海外進出を成功させるはじめの一歩とのことだ。

次に大切なのは自分達の力を示す「作品」という「商品」をしっかりと作ること。海外で成功するには唯一無二の物を作ることが絶対条件だが、その点では日本のアニメの作品的な多様性は大きな武器となるという。
そして海外では企画が決定するまでに時間がかかり、決定後にはスケジュール通りに納品できる量産体制を整える必要もあるので、そういった面でのリソースの確保(資金・制作現場の設備など)も重要となってくるそうだ。


そして海外では人脈がきっかけで仕事が決まることが多いので、そのためにも海外と密なコミュニケーションを取るための人材と設備は必要不可欠とのこと。
特にクリエイティブ関連の指示や台本の翻訳などもこなせるスキルを持った通訳の確保や、ネットワークを介した会話をスムーズにおこなうために、Skypeなどの既存サービスに頼らない安定したインフラ構築にも力を入れるべきとのアドバイスもあった。
日本のアニメ会社としていち早くNetflixやAmazonプライムといった配信サービスに参加できたのには、こういった人脈の力も大きかったとのことだ。

さらに海外進出の際には、日本とは異なる商習慣へ対応も必須。中でも法務や保険に関する交渉などは日本よりも厳しいため、そうした方面に通じた人材の確保が大切とのことだ。
特に予算や報酬などのお金に関わる契約については、近年の為替レートの激しい変動による損を防ぐためにも額面を日本円にて決めた方が良いので、それを実現させるためには前述のような人脈による関係構築や先方の商習慣に合わせた交渉ができる人材が必要だという。


他にも数多くの同業他社との競争を有利に運ぶため、海外子会社を作ることでコストカットを行うことで、作品の質は下げずに安さを武器するなど、実践的なアドバイスが数多く詰まった講演となった。

作品とビジネスへの「強い気持ち」を持ち続ける(松岡)



1975年の創業時から海外との共同制作作品を数多く手がけるなど、海外でのアニメーションビジネスでは長年の実績を持つ日本アニメーション。そんな海外でのビジネス展開の中核となる国際部を立ち上げた松岡氏からは、同社の看板作品でもある『ちびまる子ちゃん』と、世界的人気を誇るフランスの絵本を原作とした『うっかりペネロペ』を例に、同社の海外展開についての取り組みが語られた。

『世界名作劇場』という看板シリーズとはあまりにイメージが異なるため、当初は社内からも制作を疑問視する声があったという『ちびまる子ちゃん』だが、結果は1990年のスタート時から人気を得て、最高視聴率39.9%を記録するなどの大ヒットとなり、途中の休止を挟んで現在も人気が続く長寿番組へと成長している。
70年代の日本が舞台で、その時代に密接な内容も多かったために、当初、海外展開は考えていなかったというが、1993年に台湾でのビデオ販売契約を機に海外展開を開始。当初は時事ネタなど日本固有の内容が薄いエピソードをセレクトしての輸出だったが、アジア圏を中心に人気が拡大していったことを受けて全話輸出へと移行していったとのこと。


海外における『ちびまる子ちゃん』人気は中国・香港・台湾で海外売上の85%を中華圏が占めており、現地オリジナルのアパレル商品も人気を呼ぶなど各国にすっかり定着している感がある。それを反映して、2018年より日本での放映と同じタイミングで、最新エピソードを中国でも吹き替え版を同時配信するサービスを開始。中華圏でのさらなる売上アップに注力すると同時にASEAN諸国での放送も拡大していくなど、『ちびまる子ちゃん』はアジア圏での展開に今後も力を入れていくとのことだ。

続いての『うっかりペネロペ』については、制作に至るまでには様々な紆余曲折があったことが語られた。
最初は原作者であるゲオルグ・ハレンスレーベン&アン・グットマン夫妻の前作『リサとガスパール』のアニメ化を考えていたが、当時の同社では原作の油絵タッチをアニメとして動かすノウハウがなかったために断念したという経緯があった。
しかし現社長の石川和子氏が就任時に「私は『リサとガスパール』のような作品を作りたい」という話をしたことがきっかけで、同じ作者の『うっかりペネロペ』のアニメ化に挑戦しようという流れが生まれたとのこと。

ちょうどその頃、CGやVFXに長けた映像製作会社「白組」との交流があり、油絵タッチをCGアニメで動かすというハードルはクリアの目処が経っていたので、ここで日本アニメーションは大きな賭けに出る。
普通は正式な契約を交わしてからパイロット版などを作っていくが、日本アニメーションは自分達の技術と作品にかける情熱を知ってもらうために、原作者サイドの許可をもらった上で自費でのパイロット版製作に取りかかったのだ。
そうして白組と共に作りあげたパイロット版は、原作者からも高い評価を受けて正式なアニメ製作へと繋がったとのことだ。


これらの例を元に、松岡氏は海外進出のためには「ビジネス(作品)に対する強い気持ちを持ち続けることが重要」と語る。
『うっかりペネロペ』は前述の通り、『リサとガスパール』での挫折を糧としていたからこそ後の実現へと繋がった企画である。そして『ちびまる子ちゃん』も創業者である本橋浩一氏が「自分の孫に見せたい作品を作りたい」というポリシーから生まれた作品だったとのこと。
自分の孫から『ちびまる子ちゃん』が友達の間で人気だという話を聞き、それを信じてアニメ化を決断。番組スポンサーも自分で見つけてくるなどして実現へとこぎ着け、それが結果として大成功を収めたのは言うまでもない。
これから海外進出を目指す人にも、そんな強い気持ちを忘れずに取り組んでほしいという思いを伝えて、講演は終了となった。

今後のセミナー予定


このような実践的な事例から海外進出のノウハウを学べる「海外進出ステップアッププログラム」セミナーだが、残りの開催は10月19日「海外のアニメーション展開に向けた法務を知ろう!」10月27日「アニメーションの海外展開に向けたプレゼンテーション手法を知ろう!」の2講演となっている。
東京アニメピッチグランプリへの応募資格はセミナーと11月10&17日開催のワークショップへの各1回以上の参加となっているので、興味を持たれた方は公式サイトより申し込んでみてほしい。

[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]

《斉藤直樹》

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