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今回、原作者の大森藤ノさん&時雨沢恵一さんにインタビューを行い、Wシナリオ原案という異例のコラボの舞台裏をたっぷりと語っていただいた。
前編では今回のコラボが生まれた経緯を中心に、トークの模様をお届けしていく。インタビューのキーワードは、「斉藤壮馬」「エルメスに乗ったヘルメス」「成田良悟」、そして「ステーキ」だ。
[取材・構成=小松良介]
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■「すべての始まりは斉藤壮馬さんとの会話から」(時雨沢)
――まずは今回のコラボレーションのきっかけを教えていただけますか。
時雨沢恵一(以下、時雨沢)
そもそもは私と、斉藤壮馬さんの会話がきっかけだったんですよ。昨年『キノの旅』がアニメ化した時、アフレコ現場で彼が言ったんです。「実は『ダンまち』でヘルメスもやっているんです」って。私も「そいつは面白い。(エルメスと合わせて)日本一のヘルメス声優ですね。コラボしたら一人二役ですな、わっはっはー」なんて冗談半分で返したものの、まさか実現するとは。完全に瓢箪から駒でした。
大森藤ノ(以下、大森)
自分はそのお話を時雨沢先生からお聞かせいただいて……。
時雨沢
仕事そっちのけの飲み会を作家仲間で時々しているんですけど、そこで大森さんにお話したんですよね。
大森
時雨沢先生が「いやー、エルメスに乗ったヘルメス見たいですわー」とおっしゃった時、斉藤さんとの経緯をまだ知らなかったので、「この方はこれを言いたかっただ!」と思いました(笑)。
でも率直に、出版社さんは違うけど実現できたらすごく面白いなあと思いまして。ちょうどグリーのプロデューサーさんから「『ダンメモ』で何かコラボ企画やってみませんか?」とお話をいただいていたので、自分のほうから「実はこんなお話が……」と。そしたらすごく前のめりで「面白い!」と言ってくださったので嬉しかったです。そこからは本当にトントン拍子で制作が進んでいきました。
時雨沢
斉藤さん、私、大森さんでポンポンポンとボールをパスしていたら、ゴールに入っちゃった感じでしたね。しかもヘスティアとフォトを演じているのが水瀬いのりさんというミラクルもあって。
――(笑)。スタジオでの冗談から本当にコラボが実現するなんて、まさに青天の霹靂ですね。
大森
なかなか過去に前例がないくらい、すごい企画だと思います。その後に時雨沢先生とお会いして、「なんか行けそうですよ?」とお話した記憶があって。
時雨沢
私も「まじか」みたいな感じでした(笑)。どうにも半信半疑だったんですよ。何より出版社が違いますから、そこでNGが出るんじゃない?と考えてました。だから大森さんにも「もし実現しそうになったら連絡ください」と答えた気がします。
■Wシナリオ原案が生まれた舞台は、池袋のステーキハウス
――そこからおふたりのWシナリオ原案という、全面監修のビッグプロジェクトが動き出しました。
大森
「これはOK出そう」とほぼ確信した時点で時雨沢先生をお誘いして、ふたりでプロットを考えたんですよ。
時雨沢
あれは池袋でしたね。
大森
時雨沢先生が「今日はおなか空いたんですよ」とおっしゃるので、自分は「どこにでも付いて行きます!」という感じで。それでステーキハウスに行って……。
時雨沢
あまり隣の席が近いと内容がダダ聴こえになっちゃいますから、落ち着いて話ができそうなお店が良かったんですよ。それでステーキハウスに入って、二人でステーキをもりもり食べて。
大森
(笑)。300グラムくらい食べましたよね、しかも炭水化物抜きで。
時雨沢
おなかいっぱいになりましたね。
大森
自分はミディアムレアをいただいて。
時雨沢
私はミディアムだったかなあ。あまりレアを頼まない人なので。ステーキ美味しかったです。
――時雨沢先生はミディアムだった……と。あれ、お店に入ってからステーキしか食べていませんが、打ち合わせもちゃんと行われたんですか?
時雨沢
もちろん2時間ぐらいかけて、プロットの完成稿をバーンと作りました。最終的な骨子、アイデアはほぼそのまんまです。それがいつ頃でしたっけ?
大森
昨年の秋ごろだったと思います。時雨沢先生のアイデアをお聞きしながら、自分はへらへらと笑いつつ必死でメモを取ってました。
時雨沢
どんなコラボにしようかと考えた時に、「やっぱりキノたちが『ダンまち』の世界に行くしかないよね」というのはすぐに決まったんですよ。ただ、どういう話になるのか、両作品のどのキャラクター同士が触れ合うのかなどを色々と詰める必要があって。
あと、私がその時に言っていたのは、キノとシズみたいな別々の一行がコラボの中で会っちゃうと、本編に影響しちゃうのでそれだけはダメだという。みんな同じ場所に行っても、並行してて会わないようにって。それさえ押さえておけば、あとは何をやっても良いんじゃないかなみたいな感じで、わりとノリノリで話してましたね。
大藤
そうですね。それぞれのタブーだけは絶対に侵さないように、根本的な部分を深く話し合いました。あとはもうテンポ感重視で。『ダンメモ』は 会話のテンポがすごく良いゲームなので、時雨沢先生にも実際にゲームを触っていただいて感覚を掴んでもらいながら進めていきました。
――作品の表に出ていない、裏の部分も含めてガッツリと組めたコラボだったわけですね。
時雨沢
なにせ我々は原作者なので、そのふたりが密談を交わせば、まだ明かされていない作品の裏の部分も含めてけっこうヤバい話が飛び交うわけです。大森さんからも『ダンまち』の色々な秘密を聞いたんですけど、もう忘れたことになっているので何も言えません(笑)。
大森
いえこちらこそ、色々と踏み込んだお話が聞けてすごく新鮮でした。