3月25日(日)には『GODZILLA 惑星怪獣』を生んだポリゴン・ピクチュアズの瀬下寛之(せした・ひろゆき)監督、片塰満則(かたあま・みつのり)造形監督、CGキャラクターデザインの森山佑樹(もりやま・ゆうき)が登壇し、3DCGによるアニメ映画制作について論じるセミナー「3DCGの現在とアニメの未来」が、立ち見も出る満席御礼の中で開かれた。司会はアニメ評論家の藤津亮太(ふじつ・りょうた)氏が務めた。
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冒頭、瀬下監督から片塰氏と森山氏の役割について「絵で描いたものを3DCGの立体データにすると辻褄が合わなくなる部分がある。その辻褄を合わせ、3Dデータとして完成させるのが造形監督。キャラクターデザイン画を3DCGとして成立させるのがCGキャラクターデザイナー」と説明した上で、セミナーをスタートした。
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前半は主にキャラクターデザインパートで、コザキユースケ氏がデザインしたキャラクターをどのように3DCGにしたのか? について森山氏がレクチャーした。
キャラクターデザイン画から3DCGモデルを作成し、ルックデブ(look dev = look development)と呼ばれる工程で質感を設定したり、ライティング(Lighting、3DCGモデルにどのように光が当たり、反射するか)設定をするなど様々な工程を経て、キャラクターモデルが完成する。
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中でも特徴的だったのは、通常のアニメとは違う制作工程だ。『GODZILLA 惑星怪獣』では映像より先に声優が演技をするプレスコ方式を取っている。そのため、キャラクターの表情などは声優の演技を聞いた上で作成したという。「台本の文章を読むよりも、声優さんの演技を聞くことでキャラクターの理解がチーム内で共有できることもある」と監督は語った。
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ゴジラのクリーチャーデザインパートのレクチャーは片塰造形監督が担当した。
非常に特徴的な『GODZILLA 惑星怪獣』のゴジラだが、監督からは「御神木が歩いているイメージ、胴体が地面に平行したT-REXのような形には絶対しない」というディレクションがあったため、「神話的なゴジラ」を軸に、植物の写真集などからデザインを起こしたという。また、西洋的ではなく日本的な要素を盛り込む狙いで、かねてから片塰が温めていた金剛力士像や力士の筋肉造形やスタイルを参考にした。
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3DCGモデル制作では、通常のアニメのように輪郭で表現するのではなく3DCG特有のボリューム感でキャラクターを表現するため、粘土のように3DCGモデルを作成できるスカルプティングソフトZBrushを用いた。このような工程をマケット(模型)プロセスと呼ぶが、3DCGを用いる以前、ピクサーや3DCG映画『ファイナルファンタジー』では本物の粘土を使ってキャラクター模型を作り、キャラクター3DCGモデル制作のベースにしたという。
瀬下監督は最後に「映像に流れる時間と3DCGによる様々なモノ、時間と空間を使いながら、物語の時空を作っていこう。僕たちはそういう思想で作品作りをしています」と語り、セミナーを締めくくった。
[アニメ!アニメ!ビズ/animeanime.bizより転載記事]