これからのアニメ業界を担う演出家・プロデューサーになるには…「NUNOANI塾」布川郁司塾長×卒業生インタビュー
日本のアニメーション業界を代表するアニメーションスタジオのスタジオぴえろ。その創設者でもある布川郁司氏が近年私塾を開き、後進の育成に注力しているのはご存じだろうか。
インタビュー
ビジネス
注目記事
-
“無口”なキャラといえば? 3位「文スト」銀、2位「銀魂」斉藤終、1位は…<24年版>
-
デジタルハリウッド大学大学院が「NUNOANI塾」と提携 アニメプロデューサー育成に注力
-
「声優と夜あそび」新クール突入! 夜あそびメンバーのプロフィール帳をチェック
PR
――荻原さんにうかがいたいのですが、NUNOANI塾で学んだことはどう現場で活かされていますか?
荻原
制作現場に入ってから、学んだことを実感することが多いです。演出方針やアニメ制作の基本的な考え方をじっくりと教わりましたが、現場に入って失敗した時に「そういえばあの時講義で言ってたな」と思い出すんです。
例えば絵コンテを切る時。シーンの色合いはキャラクターの心情に寄せるんだ、ということを「そういえば講義で聴いた!」と思い出して、学んだことが実体験になっていく感じです。
布川
「演出」の講義は、毎年現役の演出家3、4人で教えています。演出というのは時流やその時々のセンスが重要になってくる。現役の人たちが"今の現場の感覚”を教えるんです。
荻原
塾生にはアニメだけでなくゲームや漫画などいろんな業界の人がいます。なのでタイムシート云々といった実務的な作業よりも、「画作りとは」「レイアウトとは」といった考え方を教わる方が、自分の仕事にもフィードバックさせやすいし、広い意味で役に立つのだと思います。
布川
たとえば2016年に大ヒットした『君の名は。』は、テクニカルにカットを重ねるMV(ミュージックビデオ)的な要素が強く、従来の日本のアニメとは違った感性がありました。今後のアニメ作品もどんどん多様化していくことを踏まえると、時代の空気感をしっかりと捉えられる人が若手を育成しないといけない。
荻原くんが言うように、うちの塾にはアニメに限らずいろんな業界の人が入塾してきます。でも映像を作るという点では同じ。講師陣は“今”に対応したテクニックを教えているんです。
■理想は塾生たちが集まって“何か”を作ること
――カリキュラムの中で印象に残っている講義や講師の方は?
荻原
講師の皆さんそれぞれまったく違った授業をされるので、すべてが印象に残っています。たとえば阿部(記之)先生は毎週課題を出す方だし、若林(厚史)先生は基礎的なことを丁寧に教えてくださいます。亀垣(一)先生や水野(和則)先生(※)はマニュアルにとらわれないようなライブ感のある講義をされるスタイルでした。それに加えて布川先生のプロデューサーの授業と、岡田先生のストーリーテリングの授業があるし、時々ゲスト講師も来られる。とにかく幅広くて飽きませんでした。
(※水野和則氏は17年3月に急逝。スタジオぴえろを経てフリー。17年に至るまで、数多くの作品で絵コンテや演出を手がけた)
布川
プロデューサー講座では世界的な映像の流れを教えるという点で、ギャガ・コミュニケーションズの創業者でもある藤村(哲哉)さんや、AT-Xの岩田(圭介)さんをゲスト講師に招きました。
プロデューサーとひと口に言っても、制作プロデューサーもいれば、製作委員会で立つプロデューサーもいます。それぞれの立場で目線は違ってきますから、アニメーション制作の仕方から、プレゼン、企画のまとめ方、お金の集め方といったいろいろなことを教えていきます。
――荻原は演出志望でしたが、プロデューサー的な視点も学んでみていかがでしたか?
荻原
演出というのは自分の内面を探っていくような作業ですが、プロデューサー講義を受けることで客観的な視点を持って作品を見られるようになりました。そういえば、昨年の受講生は演出よりもプロデューサー志望の方が多かったですね。
――近年、プロデューサーが表に出るような作品が多くなってきたので、そういう流れもあるのでしょうか。
布川
ええ。これまで長い期間を通じて作られてきたテレビアニメの構造も変わってきています。アニメーション作品の作り方も変わってきて、プロデューサーの役割が見えやすくなってきたことも関係していると思います。
――同期の塾生同士で仲良くなったりしましたか?
荻原
通うまでは、正直そこまで仲良くなると思っていなかったのですが(笑)、いざ一年通ってみると不思議と仲良くなるものですね。
布川
年齢やキャリアはぜんぜん違えど、同じ水に染まっていると話題も共有できるし仲良くなりますよ。対して、我々業界人はプロダクションや制作に入ると、その中でのやりとりが長く続くから実はそんなに交流が多くありません。そういう意味でも仲間を作れる場になっていると思います。
塾長としての理想は、将来、卒業生たちの間で何かの企画や作品が生まれること。そういったときに大事になってくるのは、「これを作らなくちゃいけないんだ!」という熱病に冒されるぐらいの熱意です。ゼロからモノをつくろうというとき人やお金を集めるには、まわりの人間に「これだけ熱心にやってるなら、この人に賭けてみようか」と思わせないといけませんから。
《細川洋平》
特集
この記事の写真
/