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「妹さえ」連載インタビュー【第6回】大沼心監督「演出の指針は“必ずビターに終わらせる”こと」

TVアニメ『妹さえいればいい』連載インタビュー。第6弾は大沼心監督にアニメ化にあたっての工夫や演出面で意識されたことを伺った。

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「妹さえ」連載インタビュー【第6回】大沼心監督「演出の指針は“必ずビターに終わらせる”こと」
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■各話演出の指針は「必ずビターに終わらせること」

――監督として、各話演出の全体的な方向性はどのように指示していましたか?

大沼
各話の演出は「必ずビターに終わらせること」を指針としました。感情の振り幅が大きいピーキーな作品なので、そこを上手くハンドリングする必要があったからです。それと、この作品のドラマの本質を噛み砕いて捉えた時、やはり本質は「日常」にあり、そこをビターな演出に託した部分もあります
第4話(「仕事さえすればいい。」)や第7話(「冒険さえあればいい。」)、第9話(「全裸と下着さえあればいい。」)などテンション高めな回も、平坂先生に脚本をまとめてもらう際にそのあたり意識してもらったので、良いバランスに仕上がったと思います。

――そういったビターな演出が根底にあるからこそ、劇中劇のシーンもより印象的になったのかなと思います。とくに第1話の冒頭で描かれた『鮮紅の魔狩人(仮)』は、TVシリーズのツカミとしてはかなり攻めていると感じました。

大沼
第1話の冒頭は平坂先生から「大丈夫ですか? 長くないですか?」と言われましたが(笑)、でもこちらは「絶対そのままやるべきです!」という意気込みで臨みました。やはり癖のある作品なので、それなら最初から直球で見せるべきだろうと。


大沼
そのほか『ジンベエザメ妹(仮)』や『妹法学園』といった劇中劇がありましたが、いろんなバリエーションを見せたかったので、映像のテイストもガラッと変えました。ある程度こちらで指示を出しつつも、各クリエイターさんのセンスに委ねた部分も大きいです。
ただ、劇中劇のインパクトが強いぶん、通常シーンとのギャップやビターまで持っていくさじ加減に気をつけました。




■クリエイターとしていちばん共感したキャラは春斗

――同じクリエイターとして最も共感したキャラクターは誰でしたか?

大沼
憧れるのは伊月ですが、共感するのは春斗です。アニメ監督としての僕は回りから「感覚でやっている」とよく言われますけれど、実際には頭でロジカルにつくっている意識が強いんです。
だから、頭で考えちゃってがんじがらめになっている春斗のほうが感情移入しやすくて。伊月と春斗は対照的なキャラですが、実際のクリエイターはこのふたりのメンタリティが同居していると思います。


――平坂先生も、「伊月と春斗はふたりとも自分」とおっしゃっていました。
関連記事>「妹さえいればいい。」連載インタビュー【第1回】原作・平坂読先生"伊月と春斗は両方とも自分"


大沼
プロとして仕事していくうえで必要な要素が、うまくふたりに分かれていると思うんです。突出した作家性を活かして作品づくりを行う伊月と、商業性に根ざしたクリエイター観で創作をする春斗……クリエイターはこのどちらかのタイプに分かれることが多い。
そのどちらでもないイレギュラーな存在が那由多です。那由多は天才としてしか表現できないキャラクターですが、実際にアニメ業界でもそういった天才的な人がいて驚かされることも多いです。そういった意味で、共感するキャラは春斗ですし、思い入れは強いです。


――そういったキャラクターへの思い入れは、キャラを描く際にも影響はありましたか?

大沼
演出にあたっては、逆に共感し過ぎないよう気をつけました。もともとキャラの感情に寄り添って演出しがちで、たとえば「くしゃくしゃに泣いているキャラは寄りで撮ろう」とすると、玉村くんに「感情入り過ぎです」って止められることも多かったです。僕が伊月みたいにグイグイと行こうとするところを、玉村くんが春斗のような冷静さで止めるような感じでした(笑)。
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《胃の上心臓》

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