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「妹さえいればいい。」連載インタビュー【第5回】シリーズディレクター・玉村仁 「情緒を廃して奥行き感を演出する」

TVアニメ『妹さえいればいい』連載インタビュー。第5弾はシリーズディレクター・玉村仁 さんに演出面を中心に本作の魅力を語っていただいた。

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「妹さえいればいい。」連載インタビュー【第5回】シリーズディレクター・玉村仁 「情緒を廃して奥行き感を演出する」
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■1話の冒頭はお客さんが引くくらいキッチュな絵作りにしました

――玉村さんは1話、2話、10話の絵コンテを担当されていますが、そのなかで印象に残ったシーンはいかがですか?

玉村
1話だと伊月が那由多の小説を読んで打ちひしがれて、そこから「さて、仕事するか」とノートパソコンを起動するラストですかね。1話全体を通してみると、伊月ってエゴイスティックで傲岸不遜な俺様キャラとして描かれているんです。でもその側面だけじゃなくて、那由多という天才作家の影を意識して追いつこう追い越そうとしている。伊月の作家としての熱意とモチベーションを感じたので、ラストのシーンは大事に演出しました。

―― 1話は冒頭の劇中劇シーンも衝撃的でした。

玉村
大沼監督から「お客さんが引くくらいやってもいいよ」とお墨付きをいただきまして、思いっきりキッチュな画面にしてしまおうと(笑)。
これは編集者の土岐健次郎から見た伊月の作品世界になってます。伊月はこれくらい理解しがたい作家性を持った人物なんだよ、というのを剛速球で投げてみました。
編集者フィルターがかかっていないと、作家はものすごいものを世に出してしまう。そんなカルピスの原液のような創作物を編集者がブチ切れるまでやってみた感じです。


――パンツを食べたりと、ものすごく狂気を感じる朝の光景でした(笑)。

玉村
ただ伊月自身も自分の仕事にはプライドを持っているので、ハートの部分は嘘をついちゃいけないだろうと思って、保志総一朗さんと國府田マリ子さんに演じていただきました。画面のほうは目を覆いたくなるような絵作りになってますが(笑)。

■2話は京の下乳に注目! どこから撮ればエロく見えるのか研究しました

――次に2話のオススメポイントは?

玉村
京の下乳かな(笑)。ブラを外すカットは、原画マンさんがかなりの枚数を使ってこだわって描いてくれたので、何度でも見てください! 1話で控えめだったエッチなネタも、『妹さえ』の大事な要素なので2話で盛大にやってしまおうと。どこから撮ればエロく見えるのかアングルを研究して、大沼監督やメインアニメーターの青木慎平さんにもこだわりを伝えつつ、いろんな映像を参考にしました。


――そして10話ですが、印象に残ったシーンは?

玉村
私自身、「妹」という存在にこれまで意識を向けたことがなかったんですけど、Bパートの千尋とCパートの春斗の妹を見て、妹っていいなと気づきました。
タクシーから出た千尋が「僕は兄さんとお父さんに仲直りしてほしい。家族なんだし」と訴えるシーンで、無条件に自分のことを見てくれる家族関係の絆ってこんなに大事なんだなと思いました。ここは千尋の表情が豊かに描かれていて、ようやくタイトルの面目躍如と言いますか。


玉村
また春斗の妹についても、10話まで描写を重ねていくにつれて、愛が芽生えてしまいました(笑)。春斗が救われるためにこのシーンがあったのか、妹っていいなぁと素直に感じました。


――ご自身が手がけられた回についてうかがいましたが、逆に他の方が演出されて印象に残っている回は?

玉村
ナベシンさん(ワタナベシンイチさん)に絵コンテを描いてもらったのは印象深かったです。勉強させてもらいました。4話の大野アシュリーが春斗を責めるところは、沼倉愛美さんの演技も相まって破壊力満点でしたね。


■玉村さんの好きなヒロインは?

――推しキャラは誰でしょうか?

玉村
ひとりのキャラに入れ込みすぎないように、均等に愛を捧げてますからねぇ……。

――なるほど……では付き合うなら誰を彼女にしたいですか?

玉村
最初は京でしたが、10話が終わったあとから千尋が追い上げてきました(笑)。


――同じクリエイターとしてシンパシーを覚えるキャラは?

玉村
伊月です。彼みたいに才覚・感性任せではないんですが、ズボラだけど繊細な感じとか、仕事に対する姿勢には共感できます。あとはあまり仕事をしないところとか。

一同笑

玉村
というのは冗談ですが(笑)、基本的にはちゃらんぽらんに見えるんだけど、細やかに周りの機微を汲み取って立ち回ったりするところなど、そういう性格的な部分も含めて共感します。


■BALCOLONY.によるシンプルかつデザイン性の高い画面作り

――他のアニメ現場にはない、『妹さえ』ならではの出来事はありましたか?

玉村
BALCOLONY. (バルコロニー)さんの参加でしょうか。アニメーションは、延々とキャラの会話を流すだけでは成立せず、そこに演出を加えてアニメフィルムとしての面白さを生み出していく必要があります。その点で、BALCOLONY.さんのインフォグラフィック(情報、データ、知識を視覚的に表現したもの)には助けられました。ずっと現実世界のキャラクター達を映しているだけだと間が持たないところ、そこに知的なセンスを入れてもらい、映像的にも面白いものに仕上がりました。
あの情報処理というか、情報量のコントロールは我々にはない感性です。アニメの現場だとなかなか生まれにくい表現で、今回参加いただいて大変ありがたかったです。


――「ウミガメのスープ」をはじめとして、実在するボードゲームが登場することも話題を集めました。

玉村
実は自分もボードゲームをやっていたのですが、アニメで興味を持ってくれた人も多いらしく、プレイ人口が増えるのは喜ばしいです。伊月の部屋の後ろの棚には、「ドミニオン」などいろんなボードゲームが置いてあり、ボードゲームマニアの人はあれを見るだけでたぎるものがあると思いますよ。


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《かーずSP》

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