日本を停滞させているものとは? 神山健治と落合陽一が近未来の技術をSENSORSイベントでトーク
3月23日に開催された「SENSORS IGNITION 2017」のトークセッション「近未来社会予測 ~AI、ロボット~」。神山健治監督と落合陽一が登壇したこのステージの様子をレポートする。
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モデレーターはSENSORS.jp編集長の西村真里子。
もとより神山監督のファンで『ひるね姫』も観に行ったという落合は、神山監督の作品には常に新技術が取り入れられていることに着目。落合自身も「デジタルネイチャー」の考え方をもとに様々なメディアアート作品を生み出し、大学で研究室室も主宰している。
落合の「アニメーション作品のアイデアを練る際に企業や学校のラボに行くことは?」という質問に「取材にいくことはある」。神山監督によると、今の社会で起きている一番大きな問題と技術を結んだ作品をつくることが、ひとつのドラマツルギーだという。『ひるね姫』の場合は自身の心境の変化もあったが、今を生きている、社会とあまりコミットしない若い世代から物語をスタートさせ、それが最終的に社会とリンクしたらどうなるか? を描きたかったと話した。
また過去において、日本にとって最大の成功体験である自動車と、この先に待ち受けるオリンピックを結びつけ、その成功体験を追体験しつつ打破していく実験的な作品でもあるという。
“現在”をどう捉えているかについて神山監督は「3.11の影響がまだ濃くのこっていて、総括できない」。東日本大震災は天地がひっくりかえるほど価値観が変わった出来事で、日常が永遠に続いていくわけではない、と、その日常こそが得難いファンタジーになったと振り返った。
一方、“未来”の技術について神山監督は、その人が学んだことが他の人の知識にもなる“知識のプール”や橋渡しのテクノロジーが生まれてくるのではないかと述べた。『攻殻機動隊』を作っていた頃は“不変”が大切だと感じていたが、それこそが日本を停滞させている原因なのではないか、『ひるね姫』でも描いたように、受け入れる人とそうではない人で進化が違うのではないかと述べると、落合も「完全に同意見」と支持。
落合は「僕は1600年以降に培われた“人間性”については完全に忘れてと常々言ってるんです」と、機械化の裏側で“人間性”と呼ばれるものが培われたが、“人間性”というオリジナリティのような存在を捨て、やれることをやり続けた結果、新たな進化が見えるのではないかと述べた。
最後の「もし一緒に映画を作るとしたら?」という質問に落合は「人間って本当に死ぬのか興味がある。意識って連続するものなのか、完全に無個性だけれども幸せな物語・批評的な物語って存在しうるのか見てみたい」と前のめり。
神山監督も「ぜひ研究室に遊びにいきたいです。創作意欲はなかなか枯渇しない。新しい作品を作っていきたいのでよろしくお願いします」と意気投合しトークは終了した。
《川俣綾加》
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