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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」福井晴敏×羽原信義インタビュー ファンが期待する“ド真ん中”をつくりたい

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第一章が2月25日より劇場上映される。全七章という長い航海の出航を前に、シリーズ構成を担当した福井晴敏と羽原信義監督に、じっくり話を伺った。

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「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」福井晴敏×羽原信義インタビュー ファンが期待する“ド真ん中”をつくりたい
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――『2202』の企画はいつ頃立ち上がったのでしょうか。

福井
2、3年前ですかね。『2199』が終わってすぐ、ということだったと思いますけど、こっちに話が来て動き出したのは2015年半ばくらいからですね。

羽原
僕はもう少し後ですね。最初に福井さんの企画書を見た時にビックリしたんです。『さらば』の設定年は2201年が定番なのに、企画書に書いてあるのは「2202」。1年増えてる! しかも今のロゴっぽいものが書かれていて、最後の2がでかい! それで、『宇宙戦艦ヤマト2(以下、ヤマト2)』(1978)と一緒かと。なおかつ「愛の戦士たち」という『さらば』のサブタイトルも入っている。このタイトルを見ただけで、福井さんの覚悟がすごく見えてきたんです。だから「これはすごいものになるな」とその時に思いましたね。

福井
最初に『さらば』および『ヤマト2』のリメイクを、という話が来たのに対して、「2202」サブタイトルは「愛の戦士たち」で行きましょうと企画を立てたのはこちらなんです。

アニメーションはいかに前作のファンを裏切るか、という観点で続編が作られてきたと思うんですよ。その筆頭がガンダムだったと思うんですが、自分がやった『ガンダムUC』では、裏切るばかりではなくて、期待のド真ん中に応えるものを作ってもいいだろうという意図で企画したんです。まさにその流れですね。当時『さらば』は観客動員400万人。勢いとしては『君の名は。』に匹敵するくらいで、デートムービーにもなっていた。あのお客さんをもういっぺん連れ戻すためには? と。じゃあ「愛の戦士たち」をまず謳ってしまえ。謳ったからにはそれに見合う内容をやらなくては。そういう順番でした。

――デートムービー的にも見てもらいたいという思いがあるのでしょうか?

福井
ありますよ。しかも本気で付き合っている相手と見るのにピッタリだと思います。

羽原
うん、そうですね!

福井
これから2~3年やるわけですけど、最後まで見たら、気分としてはゴールインすると思います。

羽原
ヤマト見ながら3年過ごしてたら結婚してるかも知れないですね(笑)。

――話は遡りますが、『2202』のベースとなった『さらば』を、当時おふたりはどう受け止められていたのでしょう?

福井
これは世代でかなり分かれていると思います。俺はヤマト世代よりちょっと下だったので受け止めるだけですよ。劇場には行けなくてテレビ放送で見ましたけど、素直に泣きました。最後どうなるのかも知ったうえで見ているのにね。

羽原
僕は本当に何も情報がない中、劇場で見ていましたから、もう2段、3段とドンドン底に落ちていく感じにビックリしましたね。劇場内では途中からすすり泣きがはじまって、全員が泣いてました。終わった後、誰も席を立たない。そういう経験をした初めての作品でした。


――凄まじい熱量が今のお話からも伝わってきます。その『さらば』と『ヤマト2』を掛け合わせたものを、今改めておふたりは手がけられている。

福井
そうなんです。途中の物語もそうですし、なにより結末が全然違う作品ですからね。それが今回は『2202』の「2」と「愛の戦士たち」が入っている。どちらのルートも取れる一方で、どちらのルートにも行かないかも知れない。それで『2202』の『0』は『Φ(ファイ)』になっています。「どちらでもない」という意味合いを込めて。

羽原
絵コンテはみんなで作っているんですけど、シナリオが深いのですごく悩みます。悩んで悩んで、昨日もちょっと福井さんに相談して。

福井
話し合いを年中やってますね。息の長いコンテンツですし、羽原さんは『復活篇』からずっと作品に関わっていますから、古代進像が出来上がっているわけですよね。だけど今回はその殻を破っていかなくてはいけないところがあって、それをどのぐらい破るのか、というところです。俺だけならもっとアナーキーなものになっていたと思いますけど(笑)。

羽原
あはは(笑)。逆に僕だけでやるとヒーロー過ぎてしまうので、すごくバランスが取れていると思います。

『さらば』というのは有名アニメーターが参加していたりして、画面の方でも当時の最先端なものを見られました。だから今回も新しいことができたらいいなと思いって味付けをしているところです。具体的に言うと、『2199』から登場している宇宙戦闘機「コスモタイガーII」に関して、設定通りのCGモデルと、もう一つ「バージョンK」と呼ばれているモデルが用意されています。名アニメーターの金田伊功さんの頭文字をとってリスペクトさせていただいたネーミングです。機首や両翼が通常より下がっていたり、手前にぐわっとくるカットの時には機首が伸びる、といった作画風デフォルメをするギミックが搭載しているものをCGチームが作ってくれました。このあたりも見どころの一つになっているかと思います。


――参加作画陣では湖川友謙さんも参加されていると言うことで担当カットも楽しみです。

羽原
そうですね! 『さらば』の総作画監督は湖川さんですし、『復活篇』の時に色々とお付き合いさせていただいたご縁で、今回は「第一章のガトランティスのところを描いてください!」とお酒で酔わせて(笑)。絵コンテ段階から、湖川さんにお願いするパートは「あおり(※/湖川氏が得意とする構図。カメラを人物のやや斜め下に設定する)でね」、とコンテを担当してくれた榎本明広さん(2199でのチーフディレクター)に伝えていました。湖川さんの作画はキレがあっていいんですよね!

――では最後に、改めて本作の注目ポイントをお願いします。

福井
今や無料でも楽しめる娯楽がネットには十分あふれている中で、「お金を払って見る」という習慣がある人は、HuluやNetflixといった定額配信サービスで海外ドラマを見るのが好きな方が多いと思うんです。海外ドラマのように、次の話数を見たくなる仕掛けを用意し、次から次へと興味をもたせて大きな一つの物語を語る、というのを目指しています。まずは第一章。リメイクを期待して見てくれるひとたちは、最初は「え?」と思うかもしれません。でも徐々に「なるほど、これはそうだよ!」とわかってくると思います。

羽原
企画段階から福井さんとは、『さらば』や『ヤマト2』の記憶に残る画は再現したい、と話しあっていました。そこに、バランスに気を付けつつ新しいキャラクターや表現方法を提示していますので、そのあたりを楽しみながら最後まで見ていただけたらいいなと思っています。

――ありがとうございました!
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《細川洋平》

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