「ハイスクール・フリート」航海しても後悔しない 得体の知れない魔法をかけられた1年【2016年の一本】 | アニメ!アニメ!

「ハイスクール・フリート」航海しても後悔しない 得体の知れない魔法をかけられた1年【2016年の一本】

年末年始の特別企画「2016年の一本」。ライターのユマさんが選んだのは『ハイスクール・フリート』その魅力とは?

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「ハイスクール・フリート」航海しても後悔しない 得体の知れない魔法をかけられた1年【2016年の一本】
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「『はいふり』改め『ハイスクール・フリート』、ご覧頂きありがとうございます。いかがでしたでしょうか」…。第1話終了後に公式Twitterでツイートされ、大きな話題になったのが2016年4月9日。
振り返ればこのときから『ハイスクール・フリート』が持つ魔法の力は発揮されていたのかもしれない。

もともと『はいふり』というタイトルで2015年8月に発表された本作は、それ以降初回放送当日まで正式タイトルが伏せられていた。
原作が存在しないオリジナルタイトルであり、放送前は言わば得体の知れない存在だ。それが放送当日になってタイトルを変えるという展開を見せたのだから、得体の知れなさに拍車をかけた。それと同時に、中になにが入っているか分からないおもちゃ箱を覗くような、そんなワクワクした気持ちも覚えたのだ。

アニメの話をしよう。『はいふり』改め『ハイスクール・フリート』は、約100年前にプレートのずれにより、多くの国土を水没によって失った日本を舞台にした作品だ。
この世界では国土保全のために海上都市が築かれ、それらを結ぶ航路も増えた。一方で、海の安全を守る多くの人員が必要となっていったのだ。
これに伴い女性たちによる海の安全を守る職業「ブルーマーメイド」が注目を浴びるようになる。本作では「ブルーマーメイド」に憧れて海洋学校に入学した、岬明乃の姿が描かれる。

世界観設定を文字だけで見るとマニアックな作品に思えるが、実際は間口の広い作品だ。シリアスな展開が続くと思えばコミカルなエピソードも挟んでくる。なにげない少女の一言に笑わされる瞬間もある。次になにが起こるか分からないオリジナル作品の利点を活かした構成と言えるだろう。
またキャラクター原案として『のんのんびより』の原作者・あっとを起用したりと、アニメファンにとってキャッチーな側面も多い。

物語に関しては、序盤から中盤にかけて、岬明乃をはじめとした教育艦「晴風」のメンバーが、思いもよらぬ形で戦いに巻き込まれていく。
なぜ戦うのか、そして誰と戦っているのかが分からず、不穏な空気が流れることもあるため、見ているこちらが不安になる瞬間もある。しかし回を追うごとに物語の輪郭が見えてくる。さらに追い打ちをかけるようにコミカルな一面も見せてくるのだから、本当に予想がつかない。

この様子こそ、本稿のタイトルと冒頭でも書いた魔法の在り処だ。次のエピソードがどう転ぶのか、さらには次の瞬間自分自身がどんな感情を抱くのか、まったく予想できない。
予想ができないから、輪郭が見えない序盤からついつい見入ってしまう。これはもう、『ハイスクール・フリート』が持つ魔法と言っていいと思う。
これをもっとも体現しているのが第10話だと思うが、第10話のすごさは単体では語れない。1話から9話までを見てきたからこそ価値が生まれるのだ。

2017年には1月から再放送が行われる。また新作OVAの発売という新たな展開も待っている。願わくば、2017年も魔法にかかったままでいたい。

▼プロフィール
ユマ
ゲーム・アニメ系の記事を書くフリーライター。今年熱中したゲームは「ペルソナ5」と「ポケットモンスター サン・ムーン」、好きな声優は西明日香さんと木戸衣吹さん。「君、変わったアニメが好きだよね」とよく言われます。

《ユマ》

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