伊藤
苦労したのはアクションですね。まずはテラフォーマーがそこにいると見立ててスタンドインに近いかたちで相手がどう動くか、それに対して自分がどう動くかを覚えます。それから本番に入るのですが相手を殴る動作をひとりでやるのが難しくて。ちゃんと当てて殴っているように見せるにはどうすればいいかコツを掴むのに時間がかかりました。慣れてくると楽しかったんですけどね。
―あのスーツはどれくらいの重さがあるのでしょうか。
伊藤
正確に測ったわけではありませんが、体感としては20キロくらいあったように思います。衣装さんが頑張ってくれて軽量化してあるとはいえ強度も必要なので。アクションでいえば武藤仁役の山下(智久)君は僕以上に大変だったはずです。バッタなので下半身はCGで、上半身はそこに動きを合わせないといけない。監督の説明からイメージを掴むのに並々ならぬ苦労をしたのではないでしょうか。最後のほうの姿もきちんと山下君がやってるんですよ。
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―この映画で驚いたのが、監督自らがテラフォーマーのモーションキャプチャーのアクターを担当していることです。
三池
本当はスーツアクターにお願いするほど時間をかけられなかったからです。外側から動きを見るともっとああしよう、こうしよう、と思って時間がかかってしまう。どう動いたかその場でチェックできるので、今回は客観性を省いて自分の中のイメージをダイレクトにデジタルデータに反映させることを重視しました。
伊藤
こっちもプロでアクションの訓練を色々としているのに、監督のほうが動きがいいんですよ(笑)
三池
アクションは自分と相手がいるからこそOKかどうかがわかる。でもひとりでアクションをしているとOKを出されても「本当に?」と思っちゃうんですよ。だから役者は本当に大変だったと思います。
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伊藤
マンガで描かれていたものが、生身の人間が動いてアクションをしているという部分ですね。個人的には、ケイン・コスギさんが演じるゴッド・リーがハマり役だと思います。あの衣装でアクションをしていてすごくカッコイイんです。ケインさんはすごく真面目な人なので緊張していたらしく、監督がそれを取り払うために「ちょっと1回『いっぱーーつ!』って叫んでみようか」って……。
三池
1回でいいから生で見てみたいじゃないですか(笑)。みんなも爆笑してくれて、そのあといい芝居が撮れました。
伊藤
監督は現場で役者を孤独にしない。すごく気を配ってくれるので僕らも全力を出せるんです。自分のストレスは自分で解決して、現場でも絶対に怒らず何が起きてもぶつかっていく。穏やかで、同時に男らしい男だと思います。だから常に現場の雰囲気がいい。
三池
ああいう時って役者はすごく孤独なんですよ。本番では誰も助けてくれないし、やってみても本当にちゃんとできているのかわからない。役者をやっている人たちはその中で生きているというだけですごくリスペクトしています。だから僕も可能な限り全力を出してもらえるように。そんな風に、みんなで作っているのがフィルムからも感じられると思っています。
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