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TAAF2016はじまる 長編コンペ「CAFARD」の魅力に迫る 第一次世界大戦時のベルギー軍を描く

「東京アニメアワードフェスティバル2016」が3月18日(金)から21日(月)まで開催されている。18日は3DCG映画『CAFARD』が出展され、上映後にはトークセッションが行われた。その様子をレポートする。

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TAAF2016はじまる 長編コンペ「CAFARD」の魅力に迫る 第一次世界大戦時のベルギー軍を描く
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東京アニメアワードフェスティバル2016(TAAF2016)が、3月18日に始まった。21日までTOHOシネマズ日本橋(東京)にて開催される。TAAFは人材発掘・育成、世界への情報発信、そしてアニメーション文化と歴史の継承を目的に設立された。本格的な国際アニメーション映画祭として、今年3年目を迎えた。

18日の長編コンペティション部門ではモーションキャプチャによる3DCG映画『CAFARD』が披露された。上映後にはトークセッションが行われた。
映画の始まりは1914年、ジャン・モルガンが世界レスリングチャンピオンシップを制覇しようとしていた時、ベルギーに残してきた一人娘がドイツ軍に暴行される。それを知ったモルガンは復讐のため第一名誉機甲師団に志願する。そして彼は軍と共に放浪の旅へ出るー。

『CAFARD』の監督はJan Bultheel。長年CMディレクターを務め、本作が長編アニメーション第一作となる。モーションキャプチャを使用し繊細な人間の演技を描き出し、同時に絵の大胆な簡略化を行い画面上にある情報のバランスを絶妙に調整させた。脚本、デザイン、グラフィックスタイル、演技監督、場面編集、衣装やセットの生地選択も自ら行った。
モチーフは第一次世界大戦。実際の史実に基づく作品作りは重苦しさと同時におかしみをも描き出している。制作はベルギー、共同制作はベルギー、フランス、オランダ。

上映終了後には映像研究家・叶精二をモデレーターに、長編コンペティション選考委員を務めた渡邊隆史、小出正志が登壇し、トークセッションが行われた。
来場者の質問からまず話題にのぼったのは「本作がなぜアニメーションで制作されたのか」というもの。静止画のルックこそCGアニメーションと一見でわかるが、実際は手持ち風カメラワークやきめ細やかなキャラクターの描写、声の演技など、鑑賞中の印象はまるで実写映画なのだ。扱うモチーフも第一次世界大戦。“アニメ的なキャラクターの跳躍”も見られない。
選考委員の小出はカメラワークに注目。超鳥瞰カットから長回しでアップにまで移動するショットや、地面スレスレのショットといった動きは実写には不可能か、非常に予算がかかるだろうと話した。また「実写ではいけなかったのか?」という疑問点にも、広義の映像表現としてアニメーションを選択したのではと予測を立てた。

渡邊は独自に調べた中で、Jan Bultheel監督が“スクリプトを打ち込んでアニメーションの動きが描ける”ほどのプログラミング能力を持っていることがわかったと話し、本作では自らモーションキャプチャの俳優もこなしていたことなどを伝えた。叶氏によると監督はストーリーボードを一切使わずに本作を完成させたらしく、モーションキャプチャを演じる役者の生理に則った撮影を進めていたという。また簡素化された背景にも話題が及んだ。美術はある程度の起伏はありつつ、エンピツでささっと塗りつぶしたような線が入れられていたりするシーンが多い。と思えば精密に描き込まれた車や蒸気機関車が登場する。渡邊氏は「情報量を下げつつ、別のリアリティを表出させている」とコメント。さまざまな話題に言及しつつ、3人とも本作を絶賛。小出氏は「日本のアニメに対して新しい提案になるような作品ではないか」と語った。登壇者は実制作者がいない中ながらも、あらゆるパートで話題や興味が尽きない作品であることが改めて伝わって来た。

技術的な見どころも多いが、何より物語の語り口が見事だ。第一次世界大戦中のベルギーでの実話に基づいているとはいえ、作品としてのチューニングも絶妙で、最後のシーンまで深い人間描写には胸を打つ。Jan Bultheel監督はアリ・フォルマン監督作品『戦場でワルツを』(2008年)を見て本作の制作を決めたという。今後、本作がどう評価されていくのかにも注目したい。

《細川洋平》

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