――辻さんは、全体にもいろんな影響をあたえらているわけですね。
會川
もっとも大きかったのは、レギュラーキャラクターのとらえ方です。僕自身も風郎太や兵馬がどういうキャラなのか、原作ものではないだけに肉づけをつかまえにくい部分がありました。ところが先に進んでいた9話前半では、風郎太が姿を変える能力を使うことでストーリーをするっと導入させている。「なるほど、風郎太はこう使えばいいのか。やっぱりうまいね」と、僕と水島監督も参考にさせてもらいました。
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――辻さんは本日、アフレコ現場に立ち会われていますが、いかがでしたか?
辻
ほとんど初めてみたいなものですが、面白かったですね。
會川
NHK時代にはドラマのディレクターをされていましたが、辻先生がアニメの脚本を書かれた時期には、あまりアフレコに立ち会われなかったんですよね。
辻
ええ、主に演出の方にお任せで。今日の現場では短いセリフひとつでも、いろんな人が意見をぶつけあう。しかも言葉を大きく変えるわけではない。解釈を深掘りしているから、すごいんです。小説のセリフは全部自分だけで終わってしまうけど、これぐらい吟味しなきゃいかんなと思いました。
會川
ただ僕としては、小説は小説らしいセリフがいいと思います。話し言葉ではない方が、小説を読んでる感じがして。
辻
シナリオだと、わざと主語と述語を逆にして立体感を出したりしますけど、小説だと誤植かと思われかねないですから、たしかに違うと思います。
會川
それと、我々のアフレコはやや特殊で、音響監督の三間(雅文)さん中心に、監督と脚本が言いたいことを次々と言う。あとは三間さんにお任せして、意図がちゃんと伝わってるかは、あえて確認しない(笑)。この特殊なやり方を長く続けています。
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