―-昨今、アニメ業界で話題になることの多いのが、番組配信である。配信ビジネスは急成長し、アニメだけでも2014年の市場規模は400億円を超えた。昔であればアニメの映像ビジネスは、映画・テレビ・ビデオパッケージが主要な3つである。しかし、配信がいまこの中に加わり、メインストリームに躍り出ようとしている。
そのなかでNetflixの進出に大きな注目が集まる。それはNetflixが作品の獲得にかなり投資をすること、そして日本のアニメにも投資をするのでないかといった期待と不安も含まれている。実際にNetflixが日本のアニメビジネスと関わるなかで、今後日本のアニメに何か影響は起きるのだろうか。
AA
日本のアニメ配信市場が拡大し、お金が回りだすなかで、新たにNetflixが出てくる。これでまたビジネスも変わるのでないかとの声があります。それはNetflixがオリジナルコンテンツの獲得に積極的なこと、かなりの投資をすることも含めてです。実際、Netflix自身が、この辺りをどう考えているのか教えてください。
上木
結果的に変わる可能性はあると思います。私も映画出身ですので、日本から発信するコンテンツとして邦画よりもアニメが世界で人気があることも理解しています。しかも子ども向けからハイエンドユーザーに向けた幅広い作品があります。世界展開を考えた時に、これを大事にしていきたいと思っています。
一方でサービスを世界に広げていくためにはNetflixでしか見ることのできない作品を揃えることが重要だと思っています。これはその時点ではNetflixでしか見られない、あるいはNetflixで先行するという意味です。そうした作業をやっていく中で、アニメのビジネスモデルが変わっていく可能性はありますよね。
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AA
日本にはアニメに特化した配信サービスが多くあります。しかも成功しているサービスも少なくありません。Netflixのようなオールジャンルを揃えるサービスは、それらとは違った戦略があると思います。アニメ専業の配信サービスについてNetflixはどういう考えを持っていますか?
上木
とてもすばらしいと思います。われわれは日本のブランチを立ち上げる時に、競合他社から客を奪って、Netflixがどんどん勝っていくんだみたいなことを考えた時も、一瞬はあったんです。ところが、創業者のリードが来日した時に、それは全然違うと話しました。
アメリカで言えば映画配信のHBOプラスとNetflixと、両方入っている人も多いです。MLB.comといったスポーツ専門配信サービスとNetflixを両方契約していることもあります。
NetflixはSDで650円、HDで950円ですが、それにアニメ専門サービスを足しても決して高くないはずです。どちらかの選択でなく、Netflixがあるけれども他のサービスを足していく、そうしたお客さんが今後は多くなると思います。
AA
では他のサービスと共存する時に、Netflixが揃えるべきアニメのタイトルはどういった方向になりますか?
上木
われわれはお客さまが何を求めているかをベースにしながら作って行きます。「こういうのがきっと見たいだろう」ではありません。そこに履歴データが反映されます。
アメリカでの大ヒット作『ハウス・オブ・カード』では膨大なデータを基にお客が喜ぶように脚本が作られています。ただ日本ではまだサービスが始まったばかりですからデータがありません。ですから今後、サービスを続けていく中で、こういったものがNetflixには向いているんじゃないかといった事を考えたいです。もうひとつは先行している世界50数カ国で受け入れられている日本のアニメの中から、オリジナルではこうした作品を中心に揃えたらと考えます。
ひとつはっきりしているのは、日本では受けているけれども、世界では受け入れられていない分野にはあまり積極的に進出しないことです。例えば日常系や萌え系は、文化の違いやアニメに対する期待感の違いもあるのでしょう。そこには取り組んでいないですね。
AA
逆にNetflixに合った作品は、どういったものですか?
上木
世界多くの人がご覧いただいているものはアクション、SFです。そうした作品は強いです。
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