ミュージカル「薄桜鬼」ほとばしるエネルギー”新選組起源”の物語とシンクロする
高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 公演直前イベントでは「新しいミュージカル『薄桜鬼』を創ります」と意気込む
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高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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若い故に青臭さが残る土方、本当のことを言われた瞬間の土方演じる佐々木喜英 、芝居としては難しい瞬間だが、ここは健闘。一幕の幕切れ近くで会津藩から新選組という名を正式にもらう。
そして歌詞と曲調はいつもと違うがあのおなじみの曲、ここはよく聴いて欲しいところだ。そして二幕、客席通路から例の”薬”を飲んだ”元は人間だったが、今は人間ではない”者たちが登場し、それを追う隊士たちが駆け抜ける。物語は怒濤のように展開し、クライマックスを迎える。ファンならすでにおなじみの物語であり、どうなるのかはわかっているがそれでも観客はエキサイト出来る。皆、プライドがあり、信条がある。
しかし、人としての弱みや劣等感もある。下級武士で御家人株も売ってしまった井吹の家、家族もいない。「何もない俺」と嘆く井吹。そんな井吹を武士の出身と知った山崎烝は「羨ましい」と言う。新選組は士農工商の区別なく入隊出来たが、長く続いた身分制度、武士の出身でないことに負い目を感じるのも無理からぬことだ。
”黎明録”故、皆、それぞれの”夢”を語る。「曲げられない信念がある」「一度の人生、つらぬけ」という。近藤は「皆の夢を背負って走る」と言う。これこそが”新選組”であるのだが、その末路については語る必要はない。希望と夢にあふれた発言がかえって涙を誘う。芹沢は「ああいう男たちが時代を動かすのだ」と言う。仲間には決して本音を言わない芹沢鴨を窪寺昭が眼光鋭く表現する。
ミュージカル『薄桜鬼』の特長であるダンス×殺陣、キャストが変わって雰囲気もちょっと変化、勢いと元気さが全面に出ており、フレッシュ。アンサンブルの動きもキレがあり、とりわけアンサンブル全員が”羅刹”になったシーンは見応えあり。
雪村綱道役の江戸川萬時や近藤勇役の井俣太良、安定感は古参キャストならでは。真面目な土方歳三を演じる佐々木喜英、近藤勇を慕う沖田総司役の荒牧慶彦、寡黙で孤高の斎藤一演じる橋本祥平等、主要キャラクターはファンの期待に応える役作り。
この『薄桜鬼』もそうだが、新選組を扱った物語は”青春群像劇”の色彩が濃い。そして幕末という時代、社会が、政治が大きく変わる節目でもある。キャストがほぼ一新した分、”瞬間を懸命に生きる若者たち”という側面がよりいっそう強くなったように感じる。
次回はどんな生き様を魅せてくれるのか、楽しみなシリーズである。脚本・演出・作詞は毛利亘宏。心に響く台詞、緩急つけたステージング、安定した手腕である。
《高浩美》
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