―氷川
そんな世界観の多様性を出すため、日本のSFアニメは複数デザイナーで分担することが多くなっています。
―神山
『ジュピター』でもそうでしょうね。一人にコンセプトを全部委ねない。SF映画で言えばリドリー・スコット監督の『ブレード・ランナー』では、シド・ミードのデザインから広げて統一感を出しています。あれはワンストリートのセットだけで世界が広がっていることを見せていく方法です。『ジュピター』は逆で、全宇宙を支配している支配階層にも目を向けてその世界を作る。これは大変なことですよね。CGは一カットしか出てこないシーンを作るのは、労力として大変なんです。セルアニメであれば、一カット手で描いたシーンを入れるだけで説得力を持たせる絵作りが出来ます。
―氷川
CGではひとつひとつモデルを作り、多くは画面に映らない裏側まで作り込む必要があります。
―神山
『ジュピター』では、それを実景を使うことでうまく表現したりしています。それは作り手として親近感が湧きます。
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―氷川
実景と言えば、今回はウォシャウスキー監督の故郷でもあるシカゴが舞台になっています。
―神山
実在の場所にSFの設定をどうやって組み込むかは僕も好きなやりかたです。今回は導入のシカゴの部分はすごく楽しかったんです。有名な都市伝説のエピソードを映画のストーリーにうまく取り込んで行くのも同じです。「この物語の世界は、今の我々の住んでいる現実の地球と密接にリンクしているんだよ」という使い方にニヤリとしました。
―氷川
印象的なシカゴの夕景は、いわゆる「マジックアワー」でしっとりした情感のシーンで使われことが多いですが、あえてチェイスの激しいシーンで使われていました。
―神山
マジックアワーは綺麗に見えるし、カッコよくしやすいですよね。夕景のシーンを入れることで「ここは俺たちの星なんだ」と強調したかったのかなとも思いました。
―氷川
アクションシーンの演出はいかがでしたか。
―神山
この作品の見どころともなっているのが反重力ブーツですね。ローラースケートを履いているように空を飛ぶアクションという面白さがありました。それがシカゴの街で飛び回ります。足の回転数を上げることで急いでる、頑張っている表現が肌感覚として伝わって来やすい。それに主人公の思いを乗せやすい部分でもあります。
後編に続く
『ジュピター』
3月28日(土)新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他 全国公開
http://www.jupitermovie.jp
アニメ!アニメ!×ジュピター特集ページ公開中
/http://animeanime.jp/special/388/recent/
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