GDCアワード生涯功労賞に坂口博信氏、大賞は「ロード・オブ・ザ・リング」から
米国サンフランシスコで開催中のGDCがアワード各部門を発表した。このうち生涯功労賞を日本の坂口博信氏が受賞した。大賞はアクションRPG『シャドウ・オブ・モルドール』だった。
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また併催の第17回「インディペンデントゲームフェスティバル&アワード」(IGF)では、滅亡の危機に瀕した太陽系で最後の20分間のタイムループを繰り返しながら探索する『Outer Wilds』が大賞を含む2冠に輝きました。他に東京芸術大学の学生、もっぴん氏のアクションゲーム『Downwell』が受賞にはいたらなかったものの、学生部門でファイナリストに選出されました。
また生涯功労賞には、「ファイナルファンタジー」の生みの親として著名な坂口博信氏が選出されました。日本人としては中裕司氏、横井軍平氏(故人)、宮本茂氏、小島秀夫氏、久夛良木健氏に続く6人目の受賞となります。
坂口氏は受賞の挨拶で「ここで受賞できたのも、妻やスクウェア時代の同僚、そして今いっしょにゲームを作っている開発チームなど、さまざまな人との出会いや支援のおかげです」と切り出しました。そして恩師の一人として漫画「ドラゴンボール」の担当編集者や「Vジャンプ」の編集長として知られる鳥嶋和彦さん(集英社)の名前を挙げました。
初対面にもかかわらず当時人気だった『ファイナルファンタジーIII』がいかにつまらないか、鳥嶋氏から小一時間説教されたという坂口氏。その後、静まりかえった会場に対して「ここは笑うところなんですが……」とコメントするなど、お茶目な一面もみせました。また10月にリリースしたスマホゲーム『テラバトル』についても触れ、これからも現役クリエイターとして活動していくことを誓うと、会場から拍手がわき起こりました。
他に小型コンピュータのRaspberry Piの生みの親であるデイビッド・ブレーブン氏がパイオニア賞に、初代『Wizardry』の開発にたずさわり、米サンタクルーズ大学のゲーム&プレイアブルメディアプログラムでディレクターをつとめたブレンダ・ロメロ氏がアンバサダー賞に輝きました。
各受賞作品は下記の通りです(人名の敬称略)
◆GDCA
■ゲームオブザイヤー
ミドルアース:シャドウ・オブ・モルドール
■ベストデビュー
Stoic Studio(The banner Saga)
■イノベーション・ビジュアルアート・ハンドヘルド&モバイルゲーム
モニュメントバレー
■テクノロジー
デスティニー
■オーディオ
Alien: Isolation
■ナラティブ
Kentucky Route Zero: Act III
■ゲームデザイン
Hearthstone: Heroes of Warcraft
■パイオニア賞
デイビット・ブレーブン
■アンバサダー賞
ブレンダ・ロメロ
■生涯功労賞
坂口博信
◆IGF
■大賞・ゲームデザイン
Outer Wilds
■オーディオ
Ephemerid: A Musical Adventure
■ビジュアルアート
Metamorphabet
■ナラティブ
80 Days
■ヌエボ
Tetrageddon Games
■学生部門
Close Your
近年インディゲームやモバイルゲームの躍進が著しく、GCDAとIGFの境目がなくなりつつある受賞式。今年もモバイルゲームの『モニュメントバレー』が三冠を達成するなど大きな注目を集めた一方で、大賞は家庭用ゲームの大作『シャドウ・オブ・モルドール』が受賞し、業界の二極化を印象づけました。
一方、昨年は6年ぶりに『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』が携帯ゲーム機部門で受賞した日本勢。しかし今年は『ベヨネッタ2』がゲームオブザイヤー、『進め!キノピオ隊長』がゲームデザイン部門でノミネートされたものの、どちらも受賞を逃し、再び日本勢が無冠となったのは残念でした。
また注目点として、昨年までの「ダウンロード部門」がGDCAでなくなったことと、ゲームデザイン部門で『Hearthstone』が受賞したことがあげられるでしょう。本作はMMORPGの『World of Warcraft』と世界観を同じくするデジタル・トレーディングカードゲームで、ビジネスモデルはF2Pとなっています。
GDCAのゲームデザイン部門でF2Pタイトルが受賞したのは今年が初めてで(昨年はパッケージゲームの『The Last Of Us』が受賞)、欧米の開発者の意識の中でもパッケージとデジタル流通の区別が消失し、F2Pがメインストリームに出てきたことが伺えます。このように今年のアワードは変わりゆく業界の象徴的なイベントになったといえそうです。
【GDC 2015】GDCアワードレポート…坂口博信が生涯功労賞を受賞、大賞は『シャドウ・オブ・モルドール』に
《小野憲史》
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