今回のインタビューでは湯浅監督と、湯浅監督と共に制作スタジオ・サイエンスSARUを率いる、今回のプロデューサーでもあるチェ・ウニョンさんに『アドベンチャー・タイム』の魅力や制作時のお話をうかがった。
[取材・構成=川俣綾加]
■ キャラクターデザインを見て「作る側になりたい」と思った
―アニー賞のノミネート、おめでとうございます。「フードチェーン」は湯浅監督やウニョンさん達で制作されたとのことですが、どのような役割分担になっていたのでしょうか。
湯浅政明監督(以下、湯浅)
ありがとうございます。作品によって違いますが『アドベンチャー・タイム』の場合は僕がプロットやストーリーボードなど監督的な事をやって、ウニョンさんにはプロデューサー的な立場でも入ってもらって、スタジオのセッティングやマネージメント、スタッフへの発注や英語指示などもやってもらっています。
サイエンスSARUを作ったのもこの仕事を受けるためだったのですが、スタッフも海外の方が多いので、わたしは英語が分からないので、そこら辺もウニョンさんには色々とお願いしました。
―アメリカの制作チームからは「会社でないと依頼できない」というお話だったそうですね。
湯浅
個人でも受けれるようですが、作品を作れる体制がないと発注出来ないようでしたので、ウニョンさんと会社を作って、主に設立や管理はウニョンさんにお願いしました。
―ウニョンさんはご自身がクリエイターというのももちろんあるかと思いますが、プロデューサー業についてはどこかで経験されたのでしょうか。
ウニョン
本格的にはこれが初めてです。以前、アンカマジャパンでディレクターのような立場で全体のマネジメントをしていた経験があり、立場的にもっと全体を統括できるならこういう風にやりたいなと考えていたことはありました。
湯浅
で、会社設立しなきゃって時に「できる? 」って聞いてみたら「できる」というので「じゃあやりましょう!」となったんです。
―『スペース☆ダンディ』9話で美術設定やゲストキャラデザインでウニョンさんのお名前を拝見して驚き、今回こうしたプロデュースも担当されていると知りさらに驚きました。
ウニョン
ちょうど『スペース☆ダンディ』と『アドベンチャー・タイム』は時期が重なっていたので大変でした(笑)
湯浅
たくさん仕事を抱えながらの会社設立になりましたよね。
―湯浅監督はこれまでにも『クレヨンしんちゃん』にも携わっていますが、子どもをターゲットとしたアニメで気をつけていることなどはありますか?
湯浅
シンプルにわかりやすくとういのはもちろんありますが、『アドベンチャー・タイム』の場合はもっとクールというか、シュールな部分が強い作品なので日本の子ども向けアニメほどにはわかりやすくないところがありますね。
でも絵をシンプルにやればいいのかなと思いながら作りました。どこまでがOKなのかのジャッジは制作チームのみなさんの反応を見ながら決める感じです。日本よりも海外のほうが子どもに見せてはいけないものはハッキリと決まっていて、「食物連鎖」というテーマで「宇宙人のうんちを食べなければ生き残れない」みたいな話にしようかと思ったら「うんちはダメ」だと(笑) あとは、ものを噛んだ時にニョロッと虫が出てくるシーンがあって、それが内臓に見えてダメだから色を変えようとか、そういうことはありましたね。
ウニョン
カートゥーン ネットワークとは異なる、表現のチェック機関がありそこから指摘が入るんです。制作チームはこれでOKだと思っていても、そのチェックが入るとNGになってしまいクリエイティブディレクターが一生懸命向こうに説明してくれました。