手塚治虫の傑作「虹のプレリュード」正攻法のミュージカルに 生田絵梨花始め、大健闘!
高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義 手塚治虫の傑作『虹のプレリュード』、正攻法のミュージカルで作品世界を幾重にも見せ、キャストも乃木坂46の生田絵梨花始め、大健闘。
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高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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■ “ザ・ミュージカル”的な仕上がり、
見せ場では二重唱、三重唱で厚みを持たせ、
作品世界を立体的に見せる
舞台上にはピアノを使ったモチーフ、これが印象的で舞台美術では世界で活躍している松井るみの手腕が光る。原作と違う滑り出し、あるピアノコンテストのシーンから始まる。緊張する出場者の女性が課題曲を変更したいと言い出す。そして舞台は一転して19世紀のワルシャワに。この物語の主人公・ルイズがワルシャワにやってくる。
死んだ兄の代わりにワルシャワ中央音楽院に編入するために、である。
原作のエピソードを上手く繋ぎながらストーリーは進行する。所々、設定を変えている箇所があるが、そこは舞台ならでは。作品のエッセンスをわかりやすく、凝縮させている。原作にはないキャラクター、音楽院一の歌姫を配し、登場人物の“立ち位置”やキャラクターを際立たせており、物語のアクセントにもなっている。楽曲といい、バレエを中心としたダンスといい、いわゆる“ザ・ミュージカル”的な匂いが作品のテイストに相応しい。
見せ場では二重唱、三重唱で厚みを持たせ、作品世界を立体的に見せる。ヒロイン・ルイズを演じた乃木坂 46の生田絵梨花はまさに“熱演”、ピアノも披露、ミュージカル女優としては申し分のない仕上がり。
このヒロインを取り囲む3人、ヨーゼフ、中河内雅貴はまさに“革命に生きる熱い男”、フレデリック・フランソワ・ショパン、中村誠治郎は音楽に生きる、もの静かだが内に秘めたマグマのようなものをふつふつとさせるキャラクター、イワノフ大尉、石井一影は職務に忠実な軍人だが、芸術を理解するインテリ、といった感で、その3人のコントラストが物語の輪郭をはっきりさせる。とりわけ、イワノフ大尉はコミックから抜け出たよう な2.5 次元ぶりではまり役。いくつもの役をこなすベテラン・安崎求、その歌唱力と存在感は流石。ラスト、コミックでも描かれているが、ワルシャワの土が入った瓶を前にワルシャワ陥落の報を聞いたショパンが泣きながら『革命のエチュード』を作曲するシーンは感涙。公演日程が短いのが惜しまれる。是非、再演して欲しい作品である。
なお、初日前の演出家及びキャストのコメントが届いた。
演出・振付: 上島雪夫
「手塚治虫先生の隠れた名作を、このような旬な役者さん達で上演することができて嬉しく思っています。音楽、そして人生に悩みながら、切実に生きていった時代の若者が現代に蘇ることを願っています 」
ルイズ・コルドック役: 生田絵梨花
「初主演、初めての男装、ひとりで歌うこと等、私にとって挑戦がいっぱい詰まっている公演です。共演者の方に刺激を受けて沢山学ばせて頂いたので、その思いを客席の皆さんに伝えることができたらいいなと思います。そして、ピアノの生演奏でもストーリーに繋がる何かを伝えられたらと思います。自分の中で持っているパワーを出しきりたいです」
ヨーゼフ役: 中河内雅貴
「手塚治虫先生原作のミュージカル公演ですが、見方によってはストレートプレイに近いようにも思えます。手塚先生の伝えたかったであろうことを、現代に生きる僕たちがしっかりと演じることでお客さんにも伝えていけたらと思っております。今回は公演数が少ないですが、一公演一公演噛みしめながらカンパニー一同精一杯頑張りたいと思っております」
フレデリック・フランソワ・ショパン役: 中村誠治郎
「ショパンという実在の人物を演じます。実際のショパンのことは史実等で知ることができますが、手 塚 治虫ワールドのショパン、中村誠治郎のショパンを表現できるように頑張りたいと思います。テーマは『素を一切見せない』 です(笑)。宜しくお願いします」
イワノフ役:石井一影
「若い力が集結した、エネルギー溢れる舞台になると思います。僕もその一員として、微力ながらこの舞台が成功する力になれるように頑張りたいと思います」
ミュージカル『虹のプレリュード』
10月2日~5日
天王洲 銀河劇場
/http://www.nelke.co.jp/stage/niji/
『虹のプレリュード』
手塚治虫文庫全集『リボンの騎士』第二巻(講談社)内に収録。
*手塚治虫の“塚”の字は本来は旧字体です。
《高浩美》
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