戦いばかりが続く『聖闘士星矢』。この戦いを盛り上げるのは健全な緊張感だ。これは、キャラクターが敵と味方を行ったりきたりし、敵と味方のどちらなのか惑わされるからではないだろうか。
たとえば一輝。最初は聖衣を手に入れに行くという同じ側にいたにもかかわらず、もっとも早いタイミングで敵として登場して、星矢らを襲う。しかし、物語が進むと心強い味方となり、仲間の背中をおし、自ら強い敵に打ち勝つ。瞬の兄ということに加え、その強さで少しずつ仲間に認められていく。様々な作品で「強者」として描かれてきた不死鳥――当時の子供が、あこがれないはずはない。もちろん少年マンガに多いパターンだが、車田節の台詞とは相性がいい。
さらに物語が進むにつれ、味方であった存在が、「敵」=主人公らと対峙するものとして登場することも少なくない。読者や視聴者は「なぜ敵に?」という理由を考え、味方は戦いながらも「なぜ」と深く葛藤する。この心情が、読者や視聴者を引き込むのだ。
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例えばムウ。最初は、壊れた青銅聖衣を修復するなど星矢らに味方するものの、十二宮編に入ると、ムウ自身が黄金聖闘士であることが明らかになる。結局直接戦うことはなく、むしろ倒れた城戸沙織を守る側になるものの、十二宮編全体で黄金聖闘士と対立していることを考えると、読者や視聴者は「いつか裏切るかも」と思わされる。
獅子座のアイオリアも味方から一時、敵に回った。アテナの化身である城戸沙織に忠誠を誓って、敵の親玉である教皇を倒そうとするものの、返り討ちにあい、教皇の技にかかってしまう。十二宮で星矢の敵として立ちはだかることになった。
前編で触れた、氷河の師匠、水瓶座のカミュもこの系統に入るだろう。黄金聖闘士としての役目であるとしても、かつて鍛えた氷河と戦うことになったのだ。
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かつて楽しんだマンガやアニメを改めて見直すのは、リアルタイムで見ていたときの楽しさを思い出すと同時に、人間関係やメッセージに新たな発見があるからだ。もちろん、今とは違う雰囲気の絵柄や音楽、説明の多さに戸惑うかもしれないが、子どものころにみたときとは違うセリフやシーンに感銘を受けることもあるだろう。読者や視聴者が経験を積んだ分、新たな発見につながるのだ。
[文:マンガナイト・山内康裕、bookish]
アニメ!アニメ!『聖闘士星矢』
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(c)車田正美/集英社・東映アニメーション
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