「ガラスの仮面」舞台に命を燃やす北島マヤは不滅のヒロイン、渾身の舞台化
不朽の名作『ガラスの仮面』、色褪せることのない金字塔的少女漫画、舞台に命を燃やす北島マヤは不滅のヒロイン、渾身の舞台化。
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高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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演劇に命を燃やす登場人物たちの生き様が清々しい
何度も舞台化されているこの作品、今回は原作の中でも人気の高い【華やかな迷路】編と【冬の星座】編を中心に『ふたりの王女』、『カーミラの肖像』などの様々な劇中劇が盛り込まれる。
なお、今回の舞台は青山劇場が来年3月に閉館予定、ということで、なんと、劇場の舞台機構を全て使うそう。演出のG2の並々ならぬ意気込みが感じられる。廻り舞台はもちろん、スライディングステージ、24基のセリも全て使うとのこと。ダイナミックで革新的な舞台が期待出来る。
まず、劇場に入るとあの“紫のバラの人”からの花が正面に。プレートにはもちろん、“祝 北島マヤ様へ”そして“あなたのファンより”とお約束の言葉が。青山劇場自体が舞台『ガラスの仮面』の装置になっている、という心憎い演出。舞台上では数々の劇中劇があるが、まさにエントランスから二重、三重の構造。ロビーでは原画展が開催、8月15日~22日までは【冬の星座】編、23日~31日までは【紅天女】編となっている。また、同じくロビーには観劇のための人物相関図があるので、早めに劇場に行ってチェックするとすんなり『ガラスの仮面』の世界に入っていける。
今回の舞台化部分は13巻~34巻まで。美味しいとこ取り、と言えよう。
まず、オープニング。舞台上に着物が登場する。伝説の舞台『紅天女』の衣装の象徴というのは容易に想像出来る。それが天高く上がり、月影千草の独白で始まる。それから、次々と登場人物たちがセリから上がってくる。口々に天才少女・北島マヤのことを口にするのであるが、ここでそれぞれのマヤへの想いが伝わり、ガツンとくる幕開きだ。セリと廻り舞台・パネル状のセットを多用し、物語は疾走する。
『奇跡の人』で注目を浴び、アカデミー芸術祭で助演女優賞を獲得したマヤは大河ドラマに出演することになる。慣れない現場で、しかも嫉妬やいじめが渦巻く。そういった場面をポイントを抑えてリズムよく展開。行方不明だった母の突然の訃報、繊細なマヤは大きく傷つく……。しかし、芝居への情熱を取り戻し、演技の道に邁進するのである。
貫地谷しほりは、天衣無縫で芝居に命をかける北島マヤを好演。1幕の幕切れ、有名なエピソード“泥まんじゅうを食べる”シーンは圧巻。また2幕のオーディションの場面では、天才少女らしく、次々とオーディションの課題をクリアしてしまうところはちょっとコミカルな味付けで“天衣無縫”さを表現していたのが印象的。
対する姫川亜弓演じるマイコは“品格のある女優”を体現。2幕の冒頭でマヤの『女海賊ビアンカ』のシーンの後、姫川亜弓の一人芝居のシーンがあるが、ここで優雅なダンスを披露している。また姫川亜弓はマヤを永遠のライバルとするが、同時に“唯一無二の存在”でもあるマヤを芝居で“敵討ち”するシーンは“漢”、なんともかっこいい“亜弓ぶり”。
伝説の大女優・月影千草演じる一路真輝は、もう登場しただけで“月影先生!”と叫びたくなるような2,5次元ぶり。『紅天女』の上演に情熱を燃やし、杖をつく姿は、原画から抜け出たようで、はまりっぷりがいい。紫のバラの人、こと速水真澄演じる小西遼生はマヤの母親を結果的に死に追いやってしまった負い目があり、そんな苦悩を嫌み無く表現。コートを着る後ろ姿は哀愁が漂う。マヤを一途に想う桜小路優演じる浜中文一は初々しく、好青年ぶりを発揮。
『ガラスの仮面』は何度も舞台化されており、それだけに演出家始め、プレッシャーも大きいと思われる。
会見で貫地谷しほりは「この歳で演れるなんて、ありがたすぎてよくわからない」と語っていたが、これが率直な感想なのだろう。
マイコも「すごく思い入れのある作品」といい、一路真輝は「月影先生が出来る歳になった」とおどけていたが、それだけに『ガラスの仮面』は数あるコミックの中でも特別な存在であることがよくわかる。
舞台ラストは『紅天女』のイメージそのもので幕切れ。背景に水墨画のような絵が大きく掲げられ、月影千草が「ようこそ、紅天女のふるさとへ!」と叫ぶ。物語が終わらないのは先刻承知。演劇に命を燃やす登場人物たちの晴れ晴れとした気持ちの象徴のようで清々しい。演出はG2、舞台美術は松井るみ。
『ガラスの仮面』
青山劇場
8月15日~31日
/http://garasu2014.com
『ガラスの仮面』
(C)美内すずえ
《高浩美》
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