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「ノブナガ・ザ・フール」 伝統芸能×アニメ×ハイテク で全く新しい演劇を構築

高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義:声と身体の表現、演者を分離、日本の伝統芸能テイスト×アニメーション文法×ハイテク技術で全く新しい演劇を構築!

連載 高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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(C)河森正治・サテライト/ALC/GP
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■ 運命の歯車がひとつ違うだけで、結末は異なる、抗い切れない運命の物語のシーンでは観客の熱い視線がステージに!

始まる前から会場は祭囃子が流れ、“祭り”気分を高揚させる。こういった“サービス”はポイントが高い。そしていよいよ幕開き。和太鼓と拍子木が鳴り響く。江戸時代の芝居小屋的な雰囲気を音楽で創ってさらに盛り上げる。“ノブナガ”の物語、最終章、まずはLiveAct、加藤靖久演じるノブナガ登場、冒頭から殺陣のシーン。次々と乱世を生きるキャラクター達が揃う。舞台『ノブナガ・ザ・フール』、歌舞伎の荒事に通じるテイストに日本の伝統芸能の良さを感じる。

LiveVoiceとLiveAct、そしてスクリーンに時折写し出されるキャラクター画像でひとつのキャラクターを表現する手法は前回と同様なのだが、前回よりこなれた感があり、スムーズに“脳内融合”される。スクリーンで宇宙、燃えるような心情、闘い等を表現、セットがない分、映像を駆使するのだが、単なる“背景”にとどまらない。観客のテンションを上げる“装置”にもなっている。天井に吊るされた球体のスクリーンは自在に変化、『ノブナガ~』の不思議な世界観を増幅させる。
ストーリーはアニメとは全く異なる。イチヒメはすでに死去しており、それぞれの心の中に生きている。前回、登場しなかったノブカツ、兄を慕い、温かく見守り、協力する立場となっている。抗い切れない運命の物語のシーンでは観客の熱い視線がステージに。コロシアムという場所、いわゆる劇場と違ってイベント的な雰囲気がある。こういった殺陣が多く、しかも壮大な物語を語るのには相応しいのかもしれない。
同じ目標を持っているなずなのに、刀を交えることになるノブナガとミツヒデ。ノブナガを愛するジャンヌ。ノブナガ、ミツヒデにとって唯一無二の存在、いい奴全開のヒデヨシにノブナガの婚約者・勝ち気なヒミコ。彼らの人間関係・設定はアニメと変わらないのだが、運命の歯車がひとつ違うだけで、結末は異なる。そういったヒューマンストーリーをアニメ・舞台で多重に提示する。ここに企画の面白さがある。

宮野真守、櫻井孝宏、梶裕貴ら第一線で活躍する声優陣、LiveVoiceの力量はさすがの高水準。それに負けじと加藤靖久、志村朋春、安達勇人らの俳優陣、LiveActらが“応戦”。彼らが作り出すエネルギーは『ノブナガ~』の世界をより強固なものにする。クライマックスのシーンは圧巻でとりわけノブナガvsカエサルのシーンは、スクリーン3面にオオイクサヨロイ、LiveVoice、声優2人、LiveAct、俳優2人が“戦う”。そこに効果音等が加わり、多重的にシーンを構築、大きなうねりとなって観客に迫る。ノブナガvsミツヒデの一騎打ちも、舞台上だけでもパワフルなのにそこにキャラクター画像も加わってさらにパワーアップ、後方の観客にも充分伝わる。
お笑い・アドリブシーンは健在。もはや名物と化した手作り感満載のハネウマ(ママチャリに段ボール)はやんやの喝采。途中で崩壊するハプニングもアドリブでお笑いシーンに。脚本も前回と比較すると整理されており、スッキリ。ステージ最後にキャノン砲発射、ハイテンションのまま終幕となった。

歌舞伎・人形浄瑠璃を彷彿とさせる日本の伝統芸能のテイストに、今だから出来るハイテク技術を駆使、アニメーションの文法を掛け合わせた革命的なステージ。
しかもアニメ放映とほぼ同時進行、多重展開するエンターテインメント、こういった企画を成立させるのはクリエイティブだけでなく、それに関わるスタッフの努力も見逃せない。今後もこういったチャレンジャーが出てくるとエンターテインメント業界はもっと面白くなる。

■ PLOFILE
河森正治(かわもり・しょうじ)
1960年2月20日生まれ。富山県出身。慶應義塾大学工学部在学中からデザインの仕事をはじめ、スタジオぬえに入社。82年、テレビアニメ『超時空要塞マクロス』で戦闘機がロボットに完全変形する“バルキリー”のデザインを手がけ、一躍その才能を世に知らしめる。初監督作品は『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』。その後も原作、監督、演出、脚本、絵コンテ、メカデザインまでこなすビジョンクリエーターとして、マクロスシリーズをはじめ、『地球少女アルジュナ』『創聖のアクエリオン』『バスカッシュ!』など数々のヒットタイトルを手がけている。

『ノブナガ・ザ・フール』第3回公演 act,3~最後の晩餐~
/http://the-fool-project.jp

7月20日
有明コロシアム
総監督: 河森正治
テーマ音楽: 吉俣良
テーマ音楽アレンジ: Ryo-Ma
キャラクターデザイン: カズキヨネ
脚本: 待田堂子
演出: 柿ノ木タケヲ
企画・制作: サテライト/エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/ギャラクシープロデュース/Office ENDLESS

DVD発売予定
4月公演 ~乱の恋人~ 2014年9月26日  7月公演 ~最後の晩餐~ 2014年10月24日
/http://shop.mu-mo.net/avx/sv/list1/?jsiteid=ANMS&merc_no=EYBA-10042X,EYBA-10044X

『ノブナガ・ザ・フール』
(C)河森正治・サテライト/ALC/GP
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