ネットワークセキュリティのエバンジェリスト・辻伸弘が語る『攻殻機動隊 ARISE』とネットの世界 後編 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ネットワークセキュリティのエバンジェリスト・辻伸弘が語る『攻殻機動隊 ARISE』とネットの世界 後編

『攻殻機動隊』のシリーズを現実社会のスペシャリストはこれをどう見るのか?ネットワークセキュリティのエバンジェリスト・辻伸弘さんに、最新作『攻殻機動隊 ARISE』の話題にもふれつつ話をうかがった。

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■ 自分の思う正義を成す

-AA
『攻殻機動隊 ARISE』の『border:1』からの共通したテーマに擬似記憶があります。現実世界にもそういったものはあるのでしょうか。

-辻
擬似記憶に近いものは僕たちの世界でもあると思います。脳に何かをするのは当然無理だと思いますが、自分がやった痕跡を消して、囮となる情報をわざと置いたりします。ハッカーの攻撃の種類は様々で、とりあえず情報さえ盗めればいいのであれば、侵入した痕跡を消さないことも多いのです。
ただ、情報を継続的に盗み続けたい場合は、静かに潜伏します。情報を盗み続け、そのログを消したり書き換えたりします。もちろん不整合はどうしても出てくるので時間をかけて調べればわかりますが。ログというのはコンピューターの記憶なんですね。擬似記憶はそれに近いなと思いながら見ていました。改ざんされたログを掴まされてしまうとハッキング被害の捜査があらぬ方向に行ってしまって本質を見抜くことができずとても厄介です。

-AA
『攻殻機動隊 ARISE』の世界では様々な目的があってハッキングしている人が多いのですが、現実のハッカーの目的は何ですか。

-辻
サイバー攻撃を行う人たちの変遷があります。インターネット黎明期には自分の力を誇示したいとか、ネットの新参者に対する洗礼、自己顕示欲。「こんな能力があるから誰か雇ってよ」と就職活動に使う人もいました。そこからだんだん、いまでは金銭や政治色の強い目的になって来ました。「使える」と目を付けた人間がいるんですね。

-AA
国防のためのハッカー「ホワイトハッカー」を国で育成しようという動きもあります。まさに草薙素子のような存在ですが。

-辻
善意のハッカーとかホワイトハッカーとかニュースで言ったりしますよね。
ちなみに、ホワイトハッカーという言葉はこの言葉が生まれたアメリカでは使われていませんので僕個人としてはホワイトハットとかホワイトハットハッカーと呼ぶべきだと思っています。
そんなハッカーですが、本来はハックという手段に善も悪もないんです。
人材育成により日本を守るのは必要なことだと思います。ただ日本を攻撃するどこかの国のハッカーがもしいれば、その国ではその人たちもまたホワイトハットハッカーだということを忘れてはいけません。正義と正義の戦いが一番厄介なんです。正義の反対は悪じゃなくて、そのほかの正義だと思うんですよ。
『攻殻機動隊』もそうだと思います。それぞれの正義がある。荒巻さんのセリフにもありますよね、「自分の思う正義をなすだけだ」って。  

『攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears』
2014年6月28日(土)-7月11日全国劇場上映【2週間限定】
/ http://www.kokaku-a.jp/

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