怪獣絵師 開田裕治インタビュー「映像よりかっこいい絵を描きたい……」
1000体もの怪獣を描いたという“怪獣絵師”開田裕治。東京で原画展を開催中の開田が、怪獣好きになったきっかけ、イラストレーターになったいきさつ、作画で気をつけていること、描きにくい怪獣、好きな映画など、創作活動について語った。
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--- 怪獣は子供の頃から好きだったのですか?
開田 --- 怪獣は小さいときから好きでした。ゴジラより1年前に生まれました(笑)。もともと親父が大好きで、東宝や大映の怪獣ブームに寄り添うように育ってきました。そのまま大人になっちゃいましたね。ゴジラ生誕60周年で、アメリカで新作『ゴジラ』映画が公開される年に原画展ができて嬉しいです。
--- 美大に進学なさったときから“怪獣絵師”になろうと?
開田 --- いや、絵を描くことは絵を描くことで好きだったんですよ。高校のときの美術の先生が自由に描かせてくれる方でね。その頃は怪獣ブームもすこし下火で。
--- それがどのようにして今の道に?
開田 --- 大学のときに『S-Fマガジン』の読者投稿欄で、怪獣ファンの集会の知らせを見つけたんです。自分と同じ趣味の人がほかにいるとは知らなかったし、もっと熱心な人がいることもわかった。70年代後半から80年代にかけて怪獣が趣味として確立して、出版物など出されるのだけれども、写真がないんですね。で、絵で描かなければいけない。そういったつながりで怪獣の絵を描くようになりました。
--- 怪獣の絵を描くときに気をつけることは?
開田 --- せっかく絵にするのだから映画よりかっこよくしたい。それと映像では表現しきれない部分。たとえば着ぐるみは動きが不自由なのでポーズが限定されています。スタジオ撮影だと、天井が映るので下からのアオリがないなど、アングルも限定されています。絵ならそういった制約がない。
--- 現在、アクリル絵の具による手描きと、デシタルと、両方を用いています。手法によって作風が変わったりしますか。
開田 --- 変らないです。手がタブレットに代わっただけ、道具が変わっただけ。“取り回し”のよさはデジタルに利があります。絵の色味を変えたり、部分的に場所をずらしたりが簡単です。今後の仕事はデジタル中心になるでしょう。ただ、デジタルはきれいに描けるんだけれども、カスレやハネなど、偶然性といったらいいのか、筆のもつ良さにはかなわない。落ち着いたら油絵でもゆっくり楽しみたいですね。
--- 描くのに難しい怪獣はありますか。
開田 --- ゴジラは難しいですね。みんなが知っているので。キングギドラなどは、うろこがたくさんあって描きにくい。ころっとした怪獣も難しい。まあどの怪獣もそれぞれ難しいですよ。
--- 好きな怪獣は?
開田 --- 怪獣は全部好きです! 映画として見ていますから、一体の怪獣を挙げるのは難しい。最初に見た怪獣映画の、豪華絢爛なモスラは印象的でした。モスラのおかげで妻と知り合いましたし。ギリギリ“生物感”のある怪獣が好きです。映画ベスト作品を挙げるのも難しい。最初の『ゴジラ』(1954年)、『モスラ』(1961年)、『キングコング対ゴジラ』(1962年)、「ガメラ」平成三部作もいいですね。
--- 絵という表現から発展して、映画作品を制作しようとは思いませんか?
開田 --- うーん、協力を求められたら喜んで参加しちゃいます。でも監督になりたいとは思わない。「ごっこ」はやりたくないんですよ。自分が監督になって自分で納得できる作品を制作するのは難しそう。絵ならできる。ただ絵を描く作業は孤独なので、大勢で作っている映画に対するあこがれみたいなものはありますね。
開田裕治(かいだゆうじ)……イラストレーター。1953年兵庫生まれ、京都芸術大学卒。怪獣やロボットなどをテーマに、プラモデルや映像ソフトのパッケージを中心に、雑誌やトレーディングカードなど幅広く活躍している。1997年に28回星雲賞(アート部門)を受賞。主な刊行作品に、『怪獣戯画』(1989年)、『メガニクス』(1989年)、『怪獣画廊』(1995年)、『ウルトラQ開田裕治画集』(2001年)、『UTOPIA』(2008年)など。
開田裕治原画展「ART of ゴジラ」
会場:チーパズギャラリー
東京都中央区銀座7-12-15 MYS銀座3階
開催期間:5月6日(火)まで
時間:10時00分~19時00分
無休
入場料:無料
【インタビュー】映像よりかっこいい絵を描きたい……“怪獣絵師”開田裕治
《高木啓》
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