「アニメプロデューサーの現在と未来」 若手プロデューサーの語る仕事と今後
AnimeJapan 2014でアニメプロデューサーの仕事を考えるセミナーが開催された。登壇したのは、30代のプロデューサー3人である。齋藤優一郎氏、石井朋彦氏、山本幸治氏だ。
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アニメのプロデューサーというものの、3人の仕事は異なる部分も多い。齋藤優一郎氏は細田守監督と伴にスタジオ地図を設立し、アニメ企画などに携わる。石井氏は大手のアニメプロダクションのプロデューサーであると同時に映像とプロモーションを結びつけるSTEVE N' STEVENでも企画を行う異色の存在だ。ノイタミナの編集長を名乗る山本幸治氏は局の立場から関わるが、3人の中では最も多くの作品に参加しているはずだ。
セミナーのスタートは、氷川竜介氏の司会のもと、こうしたやや判り難いプロデューサーの仕事について掘り下げた。プロデューサーはどういった仕事するのかを問いかけた。
しかし、返ってきた言葉は三者三様で、むしろアニメプロデューサーには様々なタイプがあり、ひとつのかたにはまらないことを感じさせた。
例えば、齋藤優一郎氏の説明は簡潔だ。「作品を一番いいかたちで作って、一番いいかたちで世の中に出すことを地道にやる仕事」だという。仕事の内容でなく、理念が先にあり、それを実現するための手段が全てプロデューサーの役割と考えているようだ。
一方、石井朋彦氏はプロデューサーの実務作業についてより多くを語った。そして、「まず企画を立てること」と、その役割を説明する。そのうえで、企画書を作り、ビジネスプランを作る、収益を念頭に置くことなどは製造業と変わらないとする。もちろん理念も存在する。「作品をはじめること、そして作品を終わらせること」だという。日頃、多忙な石井氏を思い浮かべると、まさに納得できる言葉だ。
制作の現場に近い2人に比べて、山本幸治氏の立場は少し違う。作品の企画を立てるよりも、むしろ企画を判断する役割だ。そのためにはどのような意図でやるかが大切、リサーチと分析、さらに実行力(お金と組織)の重要性を指摘した。
その後、節目となった作品を聞かれると、齋藤氏は『おおかみこどもの雨と雪』、石井氏は『スカイ・クロラ』、山本氏は『東のエデン』を挙げた。齋藤氏はスタジオ地図の第1回作品であること、石井氏は現場を初めて立ち上げた経験の場であったこと、山本氏はノイタミナの最初のオリジナルであったことを理由とした。先のそれぞれが考えるプロデューサーの仕事を理解すると、よりその作品選択も興味深い。
また、最後には今後やりたいことも質問されたが、その答えも同様に三者がそれぞれ異なり個性的だった。山本氏は「映画には憧れがあった」として、先頃大きな作品の製作発表もあったアニメーション映画”挙げた。
石井氏はアニメの制作テクノロジーに関心を向ける。『009 RE:CYBORG』でも導入したCGセルルック、さらにデジタル作画への挑戦を課題とする。デジタル作画は今後、現場でどんどん使われるはずだと話す。
そして、齋藤氏は世界への挑戦を挙げた。「本当の意味で、数字も含めて作品を世界に伝えたい」、「本当の意味ではこれはまだ実現していない」と大きな目標を掲げた。
「映画」、「デジタル技術」、「世界」。いずれも今後のアニメ界には欠かせないものばかりだ。新世代のプロデューサーがこうした目標をいかに実現するのか?そして、それが実現すれば、アニメの有様もまた大きく変わるに違いない。3人のプロデューサーの動向は今後も目を離せない。
[数土直志]
《animeanime》
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