インタビューの後編は、本田雄さんに『千年女優』の好きなシーン、そして今 敏監督の作品についての思いを話していただいた。
『千年女優』特集ページ展開中
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■ 本田雄さんが選ぶ好きなシーン
― アニメ!アニメ!(以下、AA)
今監督の作品で、好きな作品、好きなシーンというものはありますか?
― 本田雄さん(以下本田)
作品は全部見ています。『妄想代理人』は面白かったですよね。今さん初のテレビシリーズで、どういう風にやるのかなと見ていました。
今さんが自分でコンテを担当した回はいつも以上にきっちりとしたコンテを描き、そのコンテを拡大してレイアウトにしています。そうして作業を端折って時間を稼いでいます。原画マンにはそのレイアウトを元に直接原画にしてもらっていたみたいです。
― 本田
『パプリカ』は、エンディングが好きなんですよね。あれはちょっとグッとくるんです。あと『東京ゴッドファーザーズ』は手堅い作りをしているなと思います。あそこからデジタル作品になっているんですよね。『千年女優』は、セルアニメなので現在のデジタルアニメとは違って、出来ることが限られていました。『千年女優』では出来なかったことを細かく色々やってる感じでした。
ほかに好きなのは、『ジョジョの奇妙な冒険』(93年-94年発売のOVA)の5話目ですね。今さんの作風と合う「週刊少年ジャンプ」系の作品はなかなかありませんから。
― AA
『千年女優』でお気に入りのシーンはありますか。
― 本田
前半部分ですか。まだ若い頃の千代子のあたり。満州行ったあたりとかも含まれます。制作時間もあったので、じっくり見られたんですね。後半になってくるとスケジュールも押してきますから。(笑)
どこも気に入っていると言えば、気に入っているんだけど、いつも力不足だったなと反省の方が多かったりします。
かなり今さんにおんぶにだっこが多いですからね。劇中に登場する、千代子の映画のポスターは全部今さんが描いていますから。
― AA
ちょうどそれをうちのサイトで掲載しているのですが、すごい枚数ですね。
― 本田
すごいんですよ。あの状況でこれだけ描いている。自分の知らないところでこれをやっていて、「あれ、いつの間にこんなの描いているの(笑)」という感じです。
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■ 現実と虚構をいつも行ったり来たり
― AA
本田さんから見て、今さんの作品特徴はどこにあると思います。
― 本田
現実と虚構を行ったり来たりして混在するのは、今さんの中ではいつもあった感じがします。『PERFECT BLUE』から『パプリカ』まで一貫してありますよね。
そこになんでいつも拘ってたんだろうと、思っていました。
― 本田
今さんに「なんでいつも同じことばっかりするんですか?」と聞いたこともありました。(笑)
― AA
お答えはどうでした?
― 本田
どうだったかな…。本人の中ではやっぱり何か違うみたいなんですよね。毎回テーマが違うから。
今さんは嘘を描く世界と、現実を超リアルにやる世界の両方ともやりたくて、そこを両立させた作品を作りたいというのがあったんでしょうか?
― AA
アニメは嘘をいくらでも描ける世界ではある一方で、リアルを追求して、絵でありながらリアルを作ることも可能な訳ですが、本田さん自身はどちらが魅力的ですか?
― 本田
嘘の世界を描くためには、地に足をつけて基本をしっかり描かないと成立しないんですよ。嘘を嘘で固めてしまったら表現したいものが何なのかどんどんわからなくなる。そうなってしまっては嘘を描く面白さがなくなってしまう気がするんです。
だから地に足のついたしっかりとした表現は必要だと思います。
― AA
日常をきちんと描くことで、嘘がより説得力を持つということでしょうか。
― 本田
そういうことだと思います。(笑)
― AA
『千年女優』はまさにそうした作品だったと。
― 本田
そうですね。でも、ここまでカッチリさせると今度は逆に嘘をつかせづらくなってしまう(笑)。結局、嘘をつく部分も今さん頼りでした。(笑)
例えば背景美術に関しては、池信孝さんが一貫してやっていますよね。おそらく池さんしか今さんの気に入るものが描けなかったからじゃないかと思います。
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