今回のインタビューでは、原作者の三雲岳斗氏を迎え、作品成立の背景や、創作にあたって重要視している2010年代の同時代感、アニメ化にあたってのポイントなどを語ってもらった。原作ライトノベルのファンにとっても、今回のアニメ化で興味を持った人にとっても、『ストライク・ザ・ブラッド』を楽しむ上で大きなガイドとなる必見の内容だ。
テレビアニメ『ストライク・ザ・ブラッド』公式サイト
/http://www.strike-the-blood.com/
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― 三雲岳斗(以下「三雲」)
『ストライク・ザ・ブラッド』の前に手がけていた『ダンタリアンの書架』というシリーズがわりとトリッキーな作品で、その方向ではやりたいことをひと通りやり尽くしたので、今回は原点回帰というか、正統派な感じでいきたいと思っていました。
ただ一方で吸血鬼ものとしては、すごくひねった作品になってしまっているとは思います。吸血鬼というのは根強い人気のあるテーマで、過去に名作もたくさんあるんですが、その多くで吸血鬼という存在がネガティブなものとして描かれているんですね。自分が吸血鬼であることの苦悩や葛藤を抱えているキャラクターがとても多い。
でもそれは本当に読者が吸血鬼に求めているものなのかなと。今の読者が共感できるポイントは実はそこではないんじゃないか、というのが、この作品の出発点です。不老不死で特殊能力を持ってるって、普通にカッコイイじゃないですか。
― これはライトノベルというジャンルが特殊だからかもしれませんが、吸血鬼ぐらい結構普通にいますよね(笑)。
― 三雲
そうですね(笑)。でも、やはり伝統的な吸血鬼のイメージは強固なものがありますので、積極的にそれをいじっていこうという意識はあります。
そもそもストライク・ザ・ブラッドの場合、吸血鬼の物語なのに夜のイメージではなく、日差しの強い南国の島が舞台ですから。
― 本来なら吸血鬼にとって太陽は天敵ですからね。原作のイラストも、アニメのビジュアルも青空を思わせるブルーがとても印象的です。
― 三雲
それもやはり古典的な吸血鬼へのアンチテーゼで、赤と黒ではなく、青のイメージということで最初から意図的にデザインしてもらっています。
作品の舞台である人工島にしても、ストーリー上のギミックは別にして、どちらかといえばホラーよりは恋愛ものや青春ドラマのイメージですよね。明るく都会的な海辺の街ということで。
― 作中のキャラクターを生み出す上でポイントとして考えたのはどんな部分ですか?
― 三雲
キャラクターは単体の個性で押し出すというよりは、コミュニティの空気感というか、それぞれの関係性にポイントを置いて作っています。ストライク・ザ・ブラッドという作品は一種のバディものでもあるので、雪菜がいなければ古城は主人公たりえないし、同じく雪菜もヒロインになれない。女性キャラが多いこともあって、ハーレムものだと思われることが多いんですけど、実際に読んでもらうと案外そうでもないんですよね。
それに近い要素があるのは否定しませんけれども。
― 主人公の古城が興奮すると鼻血を出しちゃう、という設定もそのまま使うとハーレム作品になりがちですよね。そういう作品とは趣を変えた理由は?
― 三雲
それは単純につまらないというか、そういう形ではないほうが今の読み手の感性に近いし、感情移入しやすいと思ったんですよね。
古城は世界最強の吸血鬼ではあるんですけど、彼を取り巻くコミュニティにおいては、突出した孤高の存在ではないんです。だから善悪の判断や戦う動機にしても、世界を救うことより、まずは自分の身近な人を守りたいという欲求があって、周囲もそれを受け入れてくれる。そのほうが、戦う理由やヒロインたちとの絆に納得感が出るかな、と。
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