ニコニコミュージカル『音楽劇 千本桜』 演出家・茅野イサムインタビュー 高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義
[取材・構成: 高浩美] ニコニコで話題のボカロ名曲『千本桜』アップされてわずか1年4ヶ月で490万も再生、この名曲が舞台化される。とにかく話題の楽曲が舞台になるだけに賛否両論あるだろう。
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高浩美のアニメ×ステージ/ミュージカル談義
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ボカロ名曲『千本桜』が動き出す、それが醍醐味
「演劇は時代を写す鏡、娯楽、エンターテインメントですから」
[取材・構成: 高浩美]
■ 超人気作品の舞台化は、とにかく“難しい”
ニコニコで話題のボカロ名曲『千本桜』アップされてわずか1年4ヶ月で490万も再生、この名曲が舞台化される。とにかく話題の楽曲が舞台になるだけに賛否両論あるだろう。話題作の舞台化は期待と不安、そういったものが交錯するのは、それだけ注目されていることに他ならない。
こういった人気作品の舞台化、まずは1970年代に遡る。今や宝塚歌劇の代名詞にもなっている『ベルサイユのばら』はコミックから舞台化、それからアニメ化している。ファンは舞台化に際して“期待して損した、にならないか”とか“スターが演じるのだからきっといい作品になるに違いない”と様々な思いがあっただろう。しかし、「まるで劇画から抜け出たよう」と話題になり、『ベルばら』ブームを巻き起こした。
ファンが多い作品はそれだけにこだわりもハンパではない。しかも演出は原作者ではなく、いわゆる舞台の演出家がやる。作・演出まで手掛けるなら、世界観や約束事、イメージ等、演出家が創造するのだが、原作がきっちりあるものやイメージがしっかりしているもの、ましてアニメ、コミック、ゲーム等はビジュアルがあり、アニメに至っては音楽やカット割りもイメージにおいて重要な要素になってくる。そこまで“きっちり”と“世界”が構築されているものの舞台化になると、演出側の“方法論”、“手法”、“哲学”が要になってくる。
アニメやゲームとは全く違うが、このボカロ曲『千本桜』はインパクトのあるメロディが聞く者に圧倒的なパワーと広がりで独特の世界観を提示する。初音ミクは、きっちりとイメージが原作者によって創られているアニメのキャラクターとは異なり、ファンそれぞれの“初音ミク”が存在する。相当なこだわりがあることは容易に想像出来る。
『千本桜』の演出は扉座の茅野イサム。扉座のオリジナル作品はもちろん、アニメの舞台化も相当数こなしており、安定した手腕で、今や“売れっ子”演出家である。『サクラ大戦』始め、最近では超人気作品の『マクロス』の舞台化『マクロス・ザ・ミュージカルチャー』の演出も手掛けた。今回は、ボカロ曲を舞台化、という“チャレンジャー”な仕事に挑む。
■ 最初のお仕事は『サクラ大戦』、『千本桜』はお引き受けするのを悩みました
「僕はもともと小劇場出身ですから、自分たちのやりたいことをやりたいようにやってきました。お金にならない代わりに、商業演劇のようにプロデューサーやスポンサーに気兼ねすることがないんですね。
しかし当然のことながらアニメやコミックなどの舞台化は作り方が変わると思います。原作の世界観やキャラクターを無視して作るわけにはいきませんから。僕は演出を始めて約10年ぐらいですが、劇団以外の最初のお仕事が『サクラ大戦』だったんです。
最初は面食らいました。だって、登場人物が現実ではあり得ない髪型や衣裳を身につけていますからね。でも、慣れてくるとこういうエンターテインメントも楽しいなと思うようになりました。
『サクラ大戦』は僕が参加した時点で既に5年もシリーズが続いていました。お客さんがとても暖かくて、拍手や歓声、カーテンコールで一緒に踊るなど、客席との一体感は劇団の公演とは比べものにならないくらい凄くて、キャラクターもののエンターテイメント性が大好きになりました。
以来『エアギア』『ろくでなしブルース』などたくさんのアニメ/コミック原作の作品を手がけさせてもらいました。どれもとても楽しく作らせていただいたのですが、昨年の『マクロス』をミュージカルにする際の「舞台化しないでくれ」っていう声はすさまじくてショックを受けました。結果的に舞台はとても好評で、観に来て下さったファンの方にも受け入れてもらえたようで安心しましたが、それ以来原作モノの舞台化はデリケートに扱わなくてはならないなと思うようになりました。
ですから今回の『千本桜』はお仕事をお引き受けする前に・・・悩みましたね。プロデューサーさんが“今、発表されている初音未来(初音ミク)が主人公の『千本桜』じゃなくて、青音海斗(KAITO)を中心としたオリジナルストーリーを創りたい”と。そういうことであれば、と思いましてお引き受けしました」。
《animeanime》
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