米国アニメーション界を変えるプロデューサー 「怪盗グルーの月泥棒 3D」クリス・メレダンドリ氏インタビュー | アニメ!アニメ!

米国アニメーション界を変えるプロデューサー 「怪盗グルーの月泥棒 3D」クリス・メレダンドリ氏インタビュー

(インタビュー:2010年10月) 数多くのヒット作で、アメリカのアニメーション業界を変えるクリス・メレダンドリ氏に最新作『怪盗グルーの月泥棒 3D』、そして『PLUTO』をはじめとする今後の展開についてお話を伺った。

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クリス・メレダンドリ氏
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(インタビュー:2010年10月)


米国アニメーション界を変えるプロデューサー 
「怪盗グルーの月泥棒 3D」クリス・メレダンドリ氏インタビュー


■ クリス・メレダンドリ
1959年5月15日(51歳)。NY生まれ。20世紀FOXにて13年間勤務。在職中に20世紀FOXアニメーションの初代表となり、『アイス・エイジ』シリーズを大ヒットさせるなど、FOXをアニメ映画業界の中でも大手の1社に育て上げた。
現在は、イルミネーション・エンターテインメントの社長を務め、大手ユニバーサル・スタジオと総合的契約をしており、同社の最新作が、映画『怪盗グルーの月泥棒 3D』。また、『ジ・アダムス・ファミリー / THE ADDAMS FAMILY』(原題)の新たなストップ・モーション版の開発をティム・バートン監督と開発中。 先ごろ、日本を代表する漫画、浦沢直樹×手塚治虫:『PLUTO』を手塚プロダクションと共に実写映画化することを全世界に発表。日本でも大きな反響を呼んでいる。


■ 『怪盗グルーの月泥棒 3D』 
最新の3D技術を最大限に生かし、奥行き感や飛び出し感を体験できる驚きのアトラクション3Dと、観る人を惹きつけて止まない愛くるしく生き生きと躍動するキャラクター"ミニオン"、そして怪盗グルーと3姉妹が織りなす全ての人々の琴線に触れるストーリーを見事に融合させた、この秋のエンターテインメント大作。全米では、3D映画史上歴代5位、アニメーション映画史上歴代10位となる大ヒットを記録した。
今回は数多くのヒット作で、アメリカのアニメーション業界を変えるクリス・メレダンドリ氏に最新作『怪盗グルーの月泥棒 3D』、そして『PLUTO』をはじめとする今後の展開についてお話を伺った。


■ 価値のある作品には、いつでも場所はある

アニメアニメ(以下AA)
『怪盗グルーの月泥棒 3D』は、アメリカで大ヒットとなりました。単刀直入な質問になりますが、作品が、ヒットした理由は何だと考えられていますか?

メレダンドリ氏(以下メレダンドリ)
アメリカの観客はこの作品にとても驚いたと思います。観客はたぶんコメディーを観るつもりで劇場に行ったのですが、実際に観てみると非常に感動的な、エモーショナルな映画だったからです。
観客がこの感動に反応し、大成功につながったと思っています。

AA
作品は感動的な物語として成功しているだけでなく、3D(立体視)を巧みに利用しています。エモーションと技術の連携は考えられたのでしょうか。

メレダンドリ
おっしゃる通りで、3Dを含めた技術、視覚的な体験は重視しました。コメディーとして楽しめる面白い部分、それに感動、さらに視覚効果。この3つが相互作用して大ヒットにつながりました。
実際に3Dによる空間利用は私も積極的にするように言いました。もちろんそれは物語があってこそですが、劇場で観る以上は素晴らしく、今までにないような体験を観客に提供したいと考えていたからです。

3Dのシークエンスは、どの映画よりも素晴らしいと思っています。勿論、奥行きもありますし、それだけでなく、飛び出す映像も効果的使っています。記憶に残るようなスリリングな映像が今回出来上がっています。3Dを本当に効果的で印象深く使うことが出来た作品です。

AA
その技術的にレベルの高い映像を生み出すのにフランスのマック・ガフ(Mac Guff)のスタジオを制作に使っておられます。なぜフランスのスタジオという選択をされたんのですか。

メレダンドリ
私が目指したのは、この作品をワールドクラスの映画にすることです。制作には真に一流のアニメーターたちにかかわってほしいと思いました。
しかし、(イルミネーション・エンターテインメントは)まだ新しい会社だったので、アメリカでそうした才能を探すことが不可能だったのです。そうした人材はほかの映画会社に取られてしまっているためです。
そこでいろいろ探した結果、フランスのアニメーターたちの感性がこの物語には合っていることに気づきました。
当初はアメリカでキャラクターデザイン、脚本、ストーリーボードを始めましたが、その後は編集者やプロデューサー、監督など20人ほどのスタッフはフランスに移動しました。そこでマック・ガフの一流のアニメーターたちと仕事をしました。

AA
メレダンドリさんは、これまでFOXでブルー・スカイ・スタジオを築き上げました。そして、ピクサーやドリームワークス・アニメーションに次ぐCGアニメーションの勢力となりました。
イルミネーションは、第4勢力、あるいはピクサー、ドリームワークスを超えるようなスタジオに育って行くことを目指されているのですか。

メレダンドリ
私がFOXで初めてアニメーションをやると決めた時に多くの人たちが言いました。「もうそんな余地はないよ。競争が激し過ぎて、君たちが生きる場所がないよ」と。ほとんどの会社は否定的で、ピクサーだけが僕たちを励ましてくれました。ほかはかなり冷たい反応でしたね。
でも『アイス・エイジ』を公開して、それが大成功しました。

メレダンドリ
その後、3年前になりますが、私がFOXを辞めて新しいアニメーションの会社 イルミネーション・エンタテイメントをスタートすると発表した時は、また同じ反応だったんです。
「そうしたアニメーションの会社をスタートするには競争が激し過ぎるよ」と言われました。でも、私はそんなことは絶対ないと思いました。いい映画、本当に価値のある作品を作れば、そこには場所はあります。今回作品がヒットしたことで、疑いを持っていた人たちにとてもいいかたちでこれを証明出来ました。

AA  
その本当に価値のある作品はどの様に生まれるのですか?

メレダンドリ
成功するアニメーションを作るためには、非常によいストーリーが重要です。そして才能あふれるアーティストたちとこれをうまく結び付けること、それで素晴らしい映画が作れるのです。
私の仕事はいいストーリーがどれか見極めることと、才能あるアーティストたちを集めること、この2つを組み合わせることです。

AA
イルミネーションの勝負となる最初の作品に『怪盗グルーの月泥棒』の物語を選んだのはなぜですか。

メレダンドリ
まず、私に響いたのは、物語の主人公が典型的なヒーローでなく、欠陥だらけの悪いやつであることです。彼の目的は偉大な悪党になることですから。そこがすごく変わっていました。アニメーションのストーリーとしてはちょっとないようなところが気に入りました。
そして3人のかわいらしい孤児の女の子たちの愛で彼が変われるかどうか、いかに変わるかというところ。このストーリーが私にはとても魅力的に思えました。


■ 『怪盗グルーの月泥棒 3D』続編、そして『PLUTO』

AA
現在のアニメーション制作についてどう思われていますか。

メレダンドリ
いまはアニメーションにとってとてもエキサイティングな時代だと思っています。世界には真の才能あふれるアーティストたちが溢れています。私はフランスとヨーロッパに興味を持っていますが、実はさらに興味を持っているのは日本です。日本には沢山の才能あふれる人たちがいます。
僕は観客を驚かせるのと同時に、企業や業界を驚かせるのも大好きなんです。今後、日本とコラボレーションして、世界レベルの作品を生み出して、みんなをあっと言わせたいと考えているところです。

AA
もうひとつ、日本では、先日イルミネーションさんが日本のマンガ『PLUTO』(浦沢 直樹(著)手塚治虫(原著)、長崎尚志(プロデュース))を実写CG製作すると発表されたことが話題を呼んでいます。
なぜ『PLUTO』を取り上げたのか、そしてなぜそれがアニメーションでなく実写なのかを伺わせてください。

メレダンドリ
イルミネーションのこれからの作品ラインナップには、実写も含まれています。私はアニメーションをスタートする前は、かなり実写映画にも携わっていました。FOXに入る以前には『クール・ランニング』もプロデュースしています。またイルミネーションでの次回作『HOP』は、アニメーションも入った実写です。
『PLUTO』がなぜ実写かというと、これは手塚プロダクションさん、浦沢直樹さん、長崎尚志さんの要望です。彼らは出来るだけ大きなスケールの実写映画でやって欲しいと考えていました。実写映画という選択は、私の彼らに対するリスペクトなのです。

AA
実際に企画はどの程度進んでいるのでしょうか。何年後ぐらいに姿を観られると期待してよいのですか?

メレダンドリ
今はまだ脚本段階です。台本を書く最初のところなので、これがいつ映画として完成するかはまだまだ先の話となります。

AA
『怪盗グルーの月泥棒 3D』の今後も教えてください。非常にヒットしたことから、当然皆さんパート2を期待していると思います。そうした話はありますか。

メレダンドリ
それはもう進めています。アメリカ公開は2013年の予定です。

AA
本作で一度、お話は終わりますが、新たなテーマは難しくないですか。

メレダンドリ
過去には続編という話になった時に、ストーリーがなかなか生まれずに苦労したこともあります。けれども『怪盗グルーの月泥棒』については、それぞれのキャラクターから次のストーリーのアイディアが湧き出ました。続編のアイディアはまだ話せない段階ですが、もうすでにストーリーはほぼ出来ています。

AA
今後のラインナップ、『怪盗グルーの月泥棒』続編ともどもとても楽しみにしております。本日はお忙しいところありがとうございました。

《animeanime》

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