『イヴの時間 劇場版』 吉浦康裕監督インタビュー その2
(2009年12月)■ 監督はずっとチームで作りたいと思っていた ■ 次は『イヴの時間』でなくてアクションぽいものも 吉浦康裕監督インタビュー
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■ 監督はずっとチームで作りたいと思っていた
アニメアニメ(以下AA)
吉浦監督の作品はエンターテインメント志向が強いと思います。だけれども、大学で映像をやっていたかたが、キャリアを目指す際にエンターテインメント志向の人は、わりにアニメやゲームの会社に就職することが多いと感じています。吉浦監督が大学を卒業する時に企業就職というキャリアを通さずに自分でやろうと思ったのはなぜなのですか。
吉浦康裕監督(以下敬略)
選ぶというよりもいつの間にかそうなっていたという感じなんですよね。
僕の場合は幸いにも学生時代に自主制作作品を発表して、それがテレビに流れ、そのつながりで「次も作ってみない?」 と言われ、そのまま社会人になりました。自然とその流れに入りました。
実は最初の頃の作品はもうちょっとアート寄りだったんですよ。作りながらだんだんエンターテインメントに目覚めていった感じですね。僕が考えるに、「エンターテイメント」は映画や漫画、小説ではやり尽くされている感があるんですけれども、不思議とアニメに関してはまだやられていない分野が大量にあると思ったんです。
AA
もうひとつ、個人制作のかたが商業デビューするのがワンステップあるとして、次のステップはそこからチームを組んでいくことだと思うんです。『ペイル・コクーン』の時に1人で作っていたものを、今回はチームで作るようになった。その転換に決断があるものなのですか。
吉浦
『ペイル・コクーン』を作っていた時から、次は1人じゃやりたくないとずっと言っていました。プロデューサーとも相談して、次回作は個人じゃなくて、複数だったらこういうことができますと企画を立てたんです。決断したというよりも、個人制作をやっていたころからグループでやりたくしょうがなかったんですよ。
学生のころ自主制作で作っていた時にも、本当は学生仲間を集めてサークルを作ってみんなでやりたかったんです。ただ、当時の九州芸術工科大学(現、九州大学)は、あまり映像を作る人がいなかったので…。
AA 今は多いですよね。
吉浦
今はいるみたいですね。僕のときは全然いなかったんですよ。ましてやアニメなんて誰もいなかったので、1人で作らざるを得なかった。羨ましいです。
AA
作品をプロデュースされているディレクションズさんとのつながりは、どこから始まっているのですか。
吉浦
NHKでやっていた『デジタル・スタジアム』という番組をディレクションズさんが制作していたんです。初めて作品を作ったのが大学2年の頃で、それを『デジタル・スタジアム』に投稿したんですよ。賞はもらえなかったんですけど、番組で一応オンエアされたんです。その後も作品を作るたびに『デジスタ』に投稿して、それがまた取り上げられて…。
それから機会があって番組収録の現場に行かせていただき、そこでプロデューサーとお話をさせて頂き、つながりを作って行きました。
■ 次は『イヴの時間』でなくてアクションぽいものも
AA
今でこそインディーズからと商業シーン入っていくのはありますが、2000年ぐらはあまりいなかったと思います。その中から道を切り開いたというのはすごいなと思います。
吉浦
でも新海誠さんがいますからね。やはりどうしでも僕は、その道を後から歩いている感じです。
AA
でも逆に言うと、あのときによく言われたのは「新海誠さんは特別で、あのルートはほかにはないのだ」と。
吉浦
それは散々言われました。作品を発表した時も、「あれは新海さんだからできるんだ、無理だよ」と周りから言われたんです。それで何かムキになったりもして(笑)。
でも新海誠さん以前だと、そもそも個人アニメで商業的にあそこまで売れること自体が考えられなかったわけですよね。だから自分も、少人数でシリーズアニメは無理だと言われても、そこはちょっと意地になって頑張りましたね。
AA
影響を受けた作家さんはいらっしゃいますか。いま新海誠さんの話が出ましたが。
吉浦
一応自分はそれ以前から制作していた身ではあるんですが、やはり『ほしのこえ』を観てから作り方のスタンスが変わりましたね。それまでは『水のコトバ』のように、割と実験的な方向性だったんです。
個人で作るイコールちょっとエッジのとがったものを作らなきゃみたいな思い込みがあって。でも『ほしのこえ』を見て、変な言い方なんですが「もっとエンターテインメントでやっていいんだ」という思考転換が起きました。
AA 『イヴの時間』以外のほかの作品もこれからやっていくと思うのですが。
吉浦
正直言うと、次は『イヴ』のセカンドシーズンじゃなくて、違う作品をやりたいですね。『イヴの時間』は、場所が同じだけに毎回作り方がだいたい一緒なんです。だから次は違うものを作りたいなと思っています。
AA そのときの方向性というのはどういう感じですか。
吉浦
今までの作品は結局、どれもセリフ芝居で室内劇だったんです。次はもうちょっと躍動感のある、開放感のあるような、もうちょっと王道に寄ったようなものをやってみたいなと思っています。
AA アクションっぽいみたいな。
吉浦
冒険活劇だったりとかですね。幸い『イヴの時間』を始めてから、徐々に業界のアニメーターの方々との繋がりもできてきましたし、次は一緒にお仕事をさせて頂きたいと思える方も沢山いらっしゃいますので。
方向性としては…『ラピュタ』じゃないですけど、何かこう胸躍るものを、自分ならではの脚本でやりたいですよね。
《animeanime》
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