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『キテレツ大百科』などで監督や演出のくずおかひろしさん監修、『クレヨンしんちゃん』総作画監督などの小川博司さんも一部執筆という本格的な1冊だ。
「はじめてのアニメーション制作」では、作画に重点が置かれた書籍が多く、企画から完パケまでの流れを網羅した制作プロセス全般の入門書がないことに着目した。そして何よりも指摘が多く、抜け落ちがちだった音響関連も包括している。650点以上の図版に多数のキーワード解説と充実の内容だ。
また、京都精華大学でも指導に当たっている杉井ギサブロー監督が、コラムで大学にアニメーション教育を導入する際の問題点や展望を語っている。
専門学校はともかく、これまで大学の場合は専門の学部学科ではなく関連科目として主に個人作家が指導に当たっていたのもあり、卒業後にスタジオに入った場合にタイムシートが分からないなどの戸惑いも多々見られた。
京都精華大学のように、スタジオでのワークフローを前提としたカリキュラムを組んだ大学が出てきたのは2000年代後半と最近のことである。同大のアニメーション学科は2期生まで輩出しているが、『フミコの告白』などで成果を出している。
今年も丁度、卒業制作や進級制作の発表が行われるシーズンを迎えている。京都精華大学もアニメーション学科から3期生が巣立つ。一方、ネットでも「自主制作アニメ」として秀作が上がってきている。関西の大学でも『DOOPPEL!』、『Lemon Tea』、『想起モノクローム』、『SUSANOWO』などの作品が見られる。
【真狩祐志】
はじめてのアニメーション制作
/http://www.nakanishiya.co.jp/modules/myalbum/photo.php?lid=810
京都精華大学
/http://www.kyoto-seika.ac.jp/
「はじめてのアニメーション制作」
くずおかひろし(監修)、川辺真司(編著)、小川博司(著)
単行本:336ページ 価格:3675円
目次
PART1 アニメーション制作の流れ
CHAPTER 01 商業アニメーション制作の流れ[プロ編]
CHAPTER 02 アニメーション制作の流れ
PART2 プリ・プロダクション
CHAPTAR 03 企画提案と企画資料
CHAPTER 04 制作進行
CHAPTER 05 絵コンテ
PART3 プロダクション
CHAPTER 06 レイアウトと背景
CHAPTER 07 原動画とタイムシート
CHAPTER 08 キャラクターを動かす 作画の心得
CHAPTER 09 スキャンと色トレス
CHAPTER 10 撮影作業と映像効果
PART4 ポスト・プロダクション
CHAPTER 11 カッティング
CHAPTER 12 音響効果とダビング作業
CHAPTER 13 V編作業と最終書き出し
PART5 アニメーション制作その他
CHAPTER 14 大人数アニメーション制作
CHAPTER 15 他作品紹介
参考動画資料
PART6 付録
CHAPTER 16 アニメーション制作現場のスタッフを紹介する
PART7 カラー資料