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もうひとつはニコラ・ド・クレシーさんが、ルーヴル美術館とコラボレーションをしたプロジェクト作品『氷河期 -ルーヴル美術館BDプロジェクト-』である。いまから遥か遠い先、氷河に覆われたパリ・ルーヴル美術館に訪れた考古学調査隊の話だ。作品の中に91点も登場するルーヴル美術館を代表する美術品の数々も見所になっている。こルーヴル美術館BDプロジェクトは、日本から荒木飛呂彦さんが参加したことでも有名だ。こちらは11月9日に小学館集英社プロダクションより発売される。
日本はマンガ文化の豊か国としてよく知られている。しかし、絵で物語を語る文化が盛んなのは日本に限らない。米国のアメコミ界ではグラフィックノベルと呼ばれる単行本形式のコミックスの盛況で、より物語性の高い作品が人気を集めている。
そして、日本のマンガ、米国のコミックスと並ぶのが、フランスを中心としたバンド・デシネの文化だ。その作品群の特徴は、巧みに細かく描きこまれた絵にある。華麗なイラストレーションはBDがよりアートに近い芸術なのでないかと思わせるのに十分だ。
しかし、BDに興味があっても、門外漢が近づくにはまだまだ敷居を高く感じさせるのも確かだ。実際にフランス語を理解しなければ作品はほとんど理解できないし、そうでなくても膨大なBDの作品数を前に途方にくれる。そうした中で、11月に発売されるニコラ・ド・クレシーさんの2作品は、BDの入り口に相応しいと言っていいだろう。
ニコラ・ド・クレシーさんは、BDの世界でも一際目立った存在だ。1990年代に作品発表を開始、『Leon la Came』や『天空のビバンドム』のアートワークで注目され『Leon la Came』第2巻で1998年のアングレームにて最優秀作品賞を受賞する。フランスのアートビジュアルに衝撃を与えた、いま最もホットな作家とみなされている。
現在は11月5日から京都国際マンガミュージアムの「マンガ・ミーツ・ルーヴル――美術館に迷い込んだ5人の作家たち」のために来日中、11月6日には同ミュージアムでライブ・ペインティングも披露する。また、2005年の初来日以降もたびたび日本を訪問しており、日本への造詣も深い。日本を題材にした『Journal d'un Fantome』も発表している。そうしたニコラ・ド・クレシーさんの作品出版は、日仏のマンガとBDの交流を深めてより文化を豊かにするに違いない。
画像: 『天空のビバンドム』
『天空のビバンドム』 公式サイト /http://www.asukashinsha.jp/s/crecy/
『天空のビバンドム』 ニコラ・ド・クレシー
飛鳥新社
予価: 2700円+税
発売予定日 2010年11月08日
サイズ:B5変形 200ページフルカラー
『氷河期 -ルーヴル美術館BDプロジェクト-』 ニコラ・ド・クレシー
訳: 大西愛子 監修: 小池寿子
小学館集英社プロダクション
予価: 3150円(税込)
発売予定日 2010年11月9日