「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」アニメの世界を現実化する
「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」が、7月17日から東京都現代美術館で始まる。同じ7月17日には、まさに映画『借りぐらしのアリエッティ』が全国公開をスタートするから、
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アニメの世界を現実化する スタジオジブリの目指したものは?
「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」が、7月17日から東京都現代美術館で始まる。同じ7月17日には、まさに映画『借りぐらしのアリエッティ』が全国公開をスタートするから、抜群のタイミングだ。
映画と展覧会の同時スタートは、展覧会が『アリエッティ』の映画が主体になった連動企画との印象を与えるかもしれない。しかし、実際には展覧会のテーマは、映画美術そのものだ。映画美術の第一人者である種田陽平さんのこれまでの作品、美術館内に再現されたアリエッティたち 小人の床下の生活空間が映画美術の魅力を伝える。異なる2つの要素を用いることで、映画美術の世界が表現される。
一見、奇異に映るふたつの組み合わせも、展覧会を通してみるとその意図が理解出来る。種田陽平さんによる映画美術の紹介は、制作資料やスチール写真から構成されている。それだけでも素晴らしさは伝わるものの、映画美術の作品である舞台セットがないことで、リアリティの一部がかけてしまう。絵画展なのに、デッサンばかりで実際の絵画ない状態とでも言えるだろうか。
しかし、実際のセットは映画の撮影が終わった段階で解体されるから、セット自体を美術館に持ち込むことは難しい。ところが今回は、アニメ映画『借りぐらしのアリエッティ』を映画美術の方法で再現してみせる。観客はそれを体験することで映画美術を体験的に知ることが出来る。これにより実際にはない種田陽平さんの他の映画美術も想像することが可能になるのだ。
それではなぜここで敢えて『借りぐらしのアリエッティ』を取り上げたのであろうか。例えば、過去に種田陽平さんが手掛けた実写映画のセットを再現する方法もあったに違いない。むろん夏休み中にスタジオジブリ作品と連動することで、より多くの来場者を集め、美術展としての収支も合わせるという狙いもあるかもしれない。
しかし、より重要なのは、アニメがスクリーンに登場する世界の全て-草木の一本まで-を無から創りだす作業だからでないだろうか。アニメの世界を再現することで、映画美術はクリエイターの創造を現実化する表現芸術だということがより明確になる。
東京都現代美術館の3階企画展示室を1200㎡をまるまる利用したアリエッティの世界は、観客に実際にはあり得ない空間を提供する。テーマパークの巨大なアトラクションと見まごうこの展示は、映画美術の方法で制作されている。通常の美術ともアトラクションとも異なる映画美術の世界だ。
ただし、こうした理屈は大人のものだ。子供たちにとっては、今回の展覧会は夢の空間だ。多くの子供たちは、純粋に小人になった気分で展覧会を楽しむだろう。一方で、それは映画美術の世界に触れるきっかけともなる。
「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」は、大きな評判を呼ぶに違いない。展示を体験して、驚きも、満足もしない人はいないのではないか。今後かなりの混雑が予想されそうだ。もし、展覧会に訪れる計画があれば、早めに行くことを薦める。
[数土直志]
「借りぐらしのアリエッティ×種田陽平展」
/http://www.ntv.co.jp/karigurashi/
《animeanime》