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今回、プロダクション I.Gとの共同製作を発表したStorm LionのEdmund Shern氏やインダストリーショウケースに参加したアニメーション制作会社などである。なかでも注目を集めたのは、香港とロサンゼルスに拠点を持つイマジ・インターナショナル(Imagi International Holdings)の副社長Phoon Chiong Kit氏であろう。イマジはハリウッドメジャーに属することなく、アジアから北米市場に大きく映画ビジネスを展開する。最新作が『鉄腕アトム』を原作にする映画『ATOM』ということもあり、日本とアジアのビジネス関係者の興味を惹く存在だ。
今回講演者として登壇したPhoon氏は、香港の映画会社ゴールデンハーベストのマネジメント・ディレクターの経験があるだけでなく、投資銀行やプライベートエクイティを専門とする金融の専門家という顔を持つ異色の存在である。
そうしたこともありPhoon氏の講演は、作品のクリエイティブではなく、企業経営や映画のマーケティングからアプローチするものだ。その話は客観的な視点を持ちながら、また驚くほど素直なものだった。
イマジの経営者にとって11月20日は、講演をするにあまり望ましい時期ではなかった。何しろ前日19日には、まさに今回の講演のテーマになった『ATOM』の中国での興行成績が過大に発表されていたことが明らかになったばかりだったからである。
Phoon氏自身も「タイミングが悪いですね」と、これを認める。また、今年1月に起こった資金調達のショートによる制作中断にも触れながら、会社経営は現在再構築中、現在は資金はうまく回っていますと話す。
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そのために映画は、米国のスタッフにより典型的な米国スタイルの物語として作られた。例えば、原作では7歳のアトムの年齢を13歳に引き上げたことや、アトムに服を着せたことなどだ。
しかし、こうした努力にも関わらず、映画の興行については、必ずしも満足出来るものでなかったようだ。Phoon氏は最終的な結論を下せないとしながらも、既に公開が終わった米国市場については失望した(disappointed)、日本市場については非常に失望した(Very disappointed)と表現した。
米国市場の失敗については、ハローウィーンと重なった公開日のまずさ、物語がよく知られていなかったこと、子ども向けの映画にしてはバイオレンスが多過ぎたこと、またアトムがスーパーヒーローとしては幼過ぎたことを指摘する。
また、日本での失敗については予想外とし、これまであった『鉄腕アトム』の強固なイメージを崩せず、従来のファンから拒否されたことを理由として挙げた。
一方で、中国市場については、満足出来る水準とする。中国に広く入れたのは、もともと『鉄腕アトム』が広く知られていたことに加え、中国では新しいものが受け入れられやすく、バイオレンスにもさほど抵抗がないためだという。
講演を聴きながらこうした状況は、イマジが香港企業であり、中華圏がイマジにとって最も得意な市場であることも無関係ではないように感じた。
つまり、これまでの日本のマンガ・アニメの米国での実写化プロジェクトにおいて、共同製作者は内容を日本側に寄せるのか、米国側に寄せるのかでしばしば頭を悩ませてきた。「日本文化VS欧米文化」の図式である。
『ATOM』については、中華文化と新しいテーマで同じ問題起きたのでないだろうか。「日本文化VS欧米文化VS中華文化」という複雑な構造が生まれ、無意識のうちに自国文化に最も受け入れられる作品を制作した可能性である。
そう考えれば、失望したと発言せざる得なかった日米市場より、中国市場で映画が好調であったことをうまく説明出来るだろう。Phoon氏が「中華圏は私たちが熟知したマーケットです」と講演で誇っていた様にである。
アニメーション映画の成功例が語られることは多い。しかし、そうでない場合、その当事者は多くを語らないのが普通だ。
今回は、アニメーション、しかも日本のマンガ原作の作品を取上げて、そのマーケティング戦略を隠さず語ったPhoon氏の講演は、得るものが多かった。
アニメーション・アジアコンファレンス(Animation Asia Conference)2009
/http://www.afa09.com/aac.html
イマジ・インターナショナル(Imagi International Holdings)
/http://www.imagius.com/web/main.php