伝説の才能 ライアン・ラーキンのアニメーションをトーク | アニメ!アニメ!

伝説の才能 ライアン・ラーキンのアニメーションをトーク

渋谷のライズXで、カナダのアニメーション作家ライアン・ラーキンを特集する『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』を上映している。ライアン・ラーキンは2007年に他界し、2008年に友人たちの手により遺作『スペア・チェンジ 小銭を』が完成された。

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 渋谷のライズXで、カナダのアニメーション作家ライアン・ラーキンを特集する『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』を上映している。ライアン・ラーキンは2007年に他界し、2008年に友人たちの手により遺作『スペア・チェンジ 小銭を』が完成された。
 今回の上映はその『スペア・チェンジ 小銭を』を含めた、ライアンの全5作品、そしてライアンをテーマにした『ライアン』、『ライアン・ラーキンの世界』特別版をまとめて上映する。ライアン関連の全作品がまとめて上映されるのは今回が世界でも初めてだ。

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        (c) 1972 National Film Board of Canada.

 ライアン・ラーキンはその特異な経歴で、アニメーション関係者に強烈な印象を残す。1968年に『ウォーキング』にて、わずか25歳で米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネート。最も期待されるアニメーション作家として注目される。
 しかし、その後、数年でアニメーション制作を中止し、長い年月をホームレスとして過ごす。2000年代に入り再び才能が発掘され制作を再開するが2007年に惜しまれながら逝去する。その実際的な活動期間はごくわずか、今回上映されるのみである。しかし、ただ歩くだけのアニメーションで、驚くべき才能を示す『ウォーキング』など、アニメーション史上に大きな足跡を残す。

 ライズXの上映ではライアンの世界を、映像に加えて専門家によるトークイベントで紹介している。10月3日には、アニメーション作家の黒坂圭太さんと自身も個人でのアニメーション制作を行う演出家原田浩さんが招かれた。アニメーション作家の立場からライアン・ラーキンを語るものだ。
 ライアンがいかに歴史に埋もれていたかは、今回のゲストの経験からも伺えた。黒坂さんは、実は今回の企画までライアンを知らなかったという。若い頃に観た『シランクス』の強烈な印象が残っており、今回はじめてこの人が作ったのかと思ったと語った。
 原田さんも「本格的にみるのは今回が初めて」とするから、『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』の貴重さが伺われる。

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 その原田さんは作品の皺に注目する。自身がアニメーション制作をする際に、素材となった紙の皺を消すべきだと多くの人に言われた、しかし、ライアンの映像は皺が残っていると指摘する。「近年のア二メーション作品は、生っぽさがない。こうした生っぽさがもっと出て来てよいのではないか」と、映像の魅力を紹介する。
 原田さんも、「考え抜かれた完成度ではなく、むしろ荒削りで完成度を否定している」とその考え方の基盤の違いに注目する。現在は、きれいに見栄えをよくすることが完成度とされるが、ライアンの素晴しさはそれとは別のところにあるとの考え方のようだ。
 『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』は、アニメーションとは何かを考えるうえで重要な示唆を与える作品と言っていいだろう。
 
 作品上映は全編44分と気軽に足も運び易い長さだ。入場料も1000円と手頃になっている。しかし、作品としての深さは通常の映像作品以上、時間があれば是非訪れたい映画である。 

『ライアン・ラーキン 路上に咲いたアニメーション』 
ライズXほかにて公開
/http://www.ryan-animation.com

【上映作品】

『ライアン』 
2004年 監督:クリス・ランドレス
第77回アカデミー賞短編アニメーション賞受賞

『ライアン・ラーキンの世界』特別版
2004年 監督:ローレンス・グリーン

『シランクス』
1965年 監督:ライアン・ラーキン

『シティスケープ』
1966年監督:ライアン・ラーキン

『ウォーキング』
1968年 監督:ライアン・ラーキン
第42回アカデミー賞短編アニメーション賞ノミネート.

『ストリート・ミュージック』
1972年 監督:ライアン・ラーキン

『スペア・チェンジ 小銭を』
2008年 監督:ライアン・ラーキン、ローリー・ゴードン

《animeanime》

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