35ある上映作品の頂点となる最優秀作品賞(Best of Show)は、リングリング・アート&デザインカレッジ出身のリンジー・オリバーズさんによる『Anchored』となった。SIGGRAPH ASIAということだが、受賞作は米国からの作品となった。言葉をモチーフに折り紙など東洋のテーストを織り交ぜた、独特の映像表現が印象的な作品である。作者のオリバーズさんは現在、ドリームワークスのスタジオで、ビジュアルディベロップメントの仕事に携わっているという。
最優秀技術賞もアジア以外からである。世界発売が近づく、最新の大型ゲームソフト『アサシン クリードⅡ』のプロモーション映像だ。
『アサシンクリード』は、Ubisoftのモントリオールスタジオで開発した作品として知られている。しかし、このプロモーション映像は、ハンガリー・ブダペストにあるディジィク・ピクチャーズ(Digic Pictures)が制作した。ゲームムービーの3DCGを得意とするCGスタジオである。
SIGGRAPH ASIAには、エレクロニック・シアターとアニメーションシアターのふたつの上映部門が設けられている。エレクロニック・シアターは『トランスフォーマー/リベンジ』のオープニングや『スターウォーズ クローン大戦』、『ATOM』などの出品作からも判るように、より大きなプロジェクト作品が選ばれる傾向が強い。
一方、アニメーションシアターは、個人制作の作品も含む、より幅広い作品を選び出す。ただし、近年はその選別が曖昧との指摘が多く、本家米国のSIGGRAPHではこうした区分は廃止されている。
アジアではCGやアニメーションの制作や開発が盛んだとの理由で始まったSIGGRAPH ASIAであるが、上映作品を見る限りでは課題は多い。
例えばエレクロニック・シアターでは上映作品の半数以上が非アジアの作品で、米国のSIGGRAPHと代わり映えがしない。アジア・太平洋地域の作品でも、日本やオーストラリアなどに作品が偏っており、アジアで開催する意味がやや曖昧だ。
同様にアニメーションシアターでも、非アジア圏の作品が多く、アジアでは日本や台湾に出品作が集中している。クオリティーを重視した、あるいは応募国の偏りも理由と察せられる。しかし、現段階では全体に「アジア」という意味付けの少なさが目立つ「SIGGRAPH ASIA 2009」となっている。
SIGGRAPH ASIA 2009 /http://www.siggraph.org/asia2009/
