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『Tibetan Dog』の講演プログラムには、小島正幸監督、マッドハウスの丸田順悟社長、取締役CCOの丸山正雄さんの3人が登壇した。プログラムはおよそ1時間半、作品づくりのきっかけや制作体制など、作品の世界が十分に披露された。
『Tibetan Dog』は『チベット犬物語』(仮題)のタイトルで、これまで日本では製作中の劇場作品としてインデックスの会社説明資料などで触れられことがある。しかし、作品が中国電影集団との共同製作であること以外、その詳細はほとんど明らかにされていない。
しかし、プログラムでは、キャラクター設定やあらすじ、世界観、そして製作の進行状況などこれまでにない情報が次々に明らかになった。今回のアヌシー国際アニメーション映画祭が事実上、企画が一般へリリースされる最初の場となった。
『Tibetan Dog』は中国のベストセラー小説を原作に、チベットの自然の美しさと、大型犬の原種であるチベット犬の力強さ、大きさ、やさしさを描き出すものだと言う。これらを背景に、突然チベットで生活することになった都会育ちの少年の成長を描き出す。
小島監督は、最近日本では動物を主人公にしたアニメ映画が少なくなっている。今回は、動物を描くアニメの伝統を途切れさせないために作りたいと、作品への思いを語った。
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小島正幸監督のほか、キャラクターデザインに藤田しげるさん、美術の池田祐二さんなどの名前が挙がっていた。
なかでも注目されたのは、キャラクター原案に大物マンガ家浦沢直樹さんが参加することである。これは、小島監督がこれまで『MONSTER』や『MASTER KEATON』など数多くの浦沢作品のアニメ化を手掛けてきた縁によるものだという。
浦沢直樹さんが自身の作品以外にキャラクターで協力するのは、今作品が初めてだという。映像で紹介されたキャラクターは浦沢さん独特のリアリティのある絵に、作品世界の子供らしさが織込まれた印象深いものであった。
また日中共同製作ということで、気になる日中の役割分担については、プリプロダクションは完全に日本で行っているという。作品は現在絵コンテが終わった段階で、これから作画に取りかかる。このため現在の制作作業は日本側でのみ行っている。
今後、動画制作やCGアニメの制作の一部で、中国側が参加することになる。既に米国やフランスともアニメ製作の共同作業を行ってきたマッドハウスにとって、新たな国と行う新たな挑戦となる。
作品の公開は2010年以降になると見られる。マッドハウスは、この夏の『サマーウォーズ』から『マイマイ新子と千年の魔法』、『よなよなペンギン』、『RED LINE』と劇場アニメの公開が相次ぐ。
今回はさらにその先を見据えたプロジェクトとなり、マッドハウスの創作活動が絶えることなく続くことを印象づけることになる。
アヌシー国際アニメーション映画祭
/http://www.annecy.org/home/index.php?Page_ID=2
マッドハウス
/http://www.madhouse.co.jp/