Eidosは『Tom Raider』シリーズや『Hitman』シリーズなどの有力ゲームソフトで知られている。2008年6月期の売上高は171億円、今後はスクウェア・エニックスHDの有力子会社として、スクウェア・エニックスやタイトーと同様に、Eidosのブランドを残すかたちで運営される。
スクウェア・エニックスHDの2008年3月期の海外売上高はおよそ224億円、これにEidosの売上高を足すとおよそ400億円となる。一気に海外事業が拡大する。
海外ビジネス志向の強いスクウェア・エニックスだが、実際はこれまで海外ビジネスが強かったわけではない。事業に占める海外売上高比率は20%以下だった。しかし、今回の買収で海外事業に弾みがつく。特に日本の東京と大阪のみだったグループの開発拠点が、米国、カナダ、デンマークなど世界8カ国に広がることは、ビジネスに大きなインパクトをもたらしそうだ。
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説明会のポイントとなったのは、ひとつはEidosとスクウェア・エニックスの統合がもたらすシナジー効果、もうひとつは同社のビジネスライナップからの視点である。
和田社長によれば、これまでEidosは会社の規模に較べて、マーケティングや販売をかなり無理をして拡大していた。それが、現在の同社の経営不振を招いたとする。
しかし、今回スクウェア・エニックスと統合されることで、そうした投資は適正規模になり、黒字化が可能だという。また、Eidosは作品の多くの知的所有権を自社に持っているのに、これらはゲームソフト以外に活用されていない。スクウェア・エニックス流のマルチ展開で多様な収益が生まれるとの考えを紹介した。
また、会社全体の中では、これまで同社の事業の中で抜け落ちていた海外事業が補完されることで、ビジネスの枠組みが固まったと評価している。タイトーの買収から、オンラインゲーム事業やアニメ事業の強化まで含め、あらゆるメディア、あらゆる分野、あらゆる地域で事業を行なえる体制を整えることが完了したという。
現在は、ひとつのコンテンツに達する方法は、コンソール機、PC、モバイル、アーケードゲーム、映像と様々ある。スクウェア・エニックスは、いまやこの全てを手に入れたというわけだ。和田社長はこれを「スクウェア・エニックス・グループの第一次変態の完了」と表現する。
スクウェア・エニックスはこれまで、事業拡大のためにはM&Aも辞さないとしてきた。しかし、フルライン化完了となると、今後はむしろ現在ある自社の資産の内側からの拡大とそこからいかに効率的に収益を挙げるかがより重要となる。
外にあるものを取り込むかたちでの拡大指向は弱まり、内部の事業を外側に拡大していくことになるだろう。スクウェア・エニックスの事業の方向性が大きく変ることになる。
フルライン化を完了したスクウェア・エニックスは、今後はどこに向かうのだろうか。その方向性の一部も、今回の戦略説明会で明らかにされていた。ひとつはコミュニティやインターネット関連であるようだ。Webまわりはいまや大きな利益を生むメディアのひとつになりつつある。
しかし、和田社長によれば、スクウェア・エニックスは、それをモバイル、オンラインゲームといった具合にバラバラの部品としてしか所有していない。Eidosの持つネット上の資産も含めて、こうした部品を統合するネット戦略が可能なのではなかということだ。
一昔前までは、スクウェアもエニックスも、良質ではあるけれど、世界市場でビッグビジネスを行なえるゲーム会社とは思われなかっただろう。それがスクウェアとエニックスが統合し、さらにタイトーを子会社化することで、会社の規模と事業の幅を拡大した。さらに今回Eidosが加わる。
単純な売上高だけをみれば、それでも年間1650億円は世界レベルでは必ずしも大きくない。しかし、保有するゲームソフトの豊かさや、事業の幅広さ、財務の健全性など、スクウェア・エニックスは既にグローバル級のゲーム会社の地位を固めている。
スクウェア・エニックス ホールディングス / http://www.square-enix.com/jpn/index.html
Eidos plc /http://www.square-enix.com/jp/