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この研究会のキックオフレクチャーが、5月30日に東京大学工学部にて開催された。イベントは事前予約で参加希望者が予想を超えるほど集まり、急遽より広い会場に変更された。それでも当日は定員340名の会場に立ち見となり、関係者の注目度が高いことが伺えた。
今回、登壇したのは、研究メンバーの七丈直弘准教授(東京大学大学院情報学環)、陸川和男氏(キャラクター・データバンク 代表取締役社長)、相原博之氏(キャラ研 代表取締役)、高山晃氏(ファンワークス 代表取締役)、東京大学大学院情報学環・特任講師の吉田正高氏と中村仁氏である。アカデミックな立場とビジネスの立場の双方からの参加となった。
当初プロジェクトは、「キャラゼミ」と「キャラビズ講座」という2本立てで進められるが、次年度以降よりフォーマルな研究組織の立ち上げを目指している。
「キャラゼミ」は、は東大を中心とした学生を組織し、キャラの市場調査、デザイン、事業化(販売・プロモーション)という一連の流れを、新しい方法論から実現する。また、事後的な分析に耐えるデータを取得する。
募集人員は10名程度で、書面および面接によって決定する。受講料は無料である。対象者は東大の学部生・大学院生と若干の他大生となっている。
「キャラビズ講座」はキャラビズの基礎的知識について、学生・社会人を対象に、連続講義によって教授する。
学生を関連業界に牽引し、若手の実務家を育成することを目的としている。こちらの募集は30名程度。学生・社会人などの限定はない。審査は書面のみで行われる。
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こうした試みを東大が行う目的は、キャラクタービジネスの高度化である。キャラクタービジネスは大学にとってこれまで扱ってこなかった新しい研究対象で、体系化の余地がある。これらを研究することにより、企業に対して新たな収益機会・収益モデルを提案することができるという。
レクチャーのなかでキャラ研の相原氏は、キャラクタービジネスを製造業的価値観から脱却し、新たな価値創出をするべきと話した。
キャラクターは、政治的・社会的なテーマを可視化することができる重要な存あるという。このほか、企業ブランドとしてCIに替わる本質的な「企業のキャラ化」の価値も生まれると語る。
プレゼンテーションの後行われたパネルディスカッションでは、大学の使命としてキャラクターを通した社会的価値創造を中心に話が進められた。
七丈氏は「基礎データの不足が今の所あるが、この繋がりを生かして調査を進め、『キャラ』が好きな日本人特有の考えを世界に先駆けて研究していきたい。それを進めて行くことでキャラの特性が質的に変化すると思う」と語る。
中村氏は警官を例に出して、政治学的なキャラクターの意味合いを語った。様々な警官キャラクターによって、国民の警官に対するイメージが変化することなどを示し、こうした研究についての意欲を述べた。
吉田氏はキャラクターの歴史や時代背景の研究意義を述べた。また、陸川氏は企業価値に対するキャラクターの役割を学術的に実証したいとする。高山氏は「プロデューサーは『物語』を作るのが役割。さらに先のことを考えると村上隆さんのように新しい価値基準・スキームを作るのが、東大の役割になるでしょう」と語り、キャラクタービジネスの様々な目的意識や方向性を示した。
「キャラゼミ」と「キャラビズ講座」の受講については公式サイトに掲載された様式に従って応募する。締め切りは6月13日18時までとなっている。
東京大学 キャラビズ研究プロジェクト
/http://www.iii.u-tokyo.ac.jp/~shichi/chara/