武重洋二さんは、数多くのジブリの劇場アニメで背景を担当したほか『On Your Mark』、『もののけ姫』では美術監督を務めている。今回トークショーのテーマとなった『ゲド戦記』でも、美術監督としてファンタジー世界特有の世界を見事に表現した。
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またこのトークショーは、同じSF大会の展示場会場で開催されていた『ゲド戦記』の背景画展示に合わせたものでもある。この背景画展示はアートショーの一角で行われたが、数あるアート作品のなかでも一際目立っていた。
展示されているのは実際の背景画でなく、アニメ制作の撮影の際に使われるデジタル出力後のものである。それでも細部にいたるまで描かれた鮮やかな色彩や筆致は、十分過ぎるほどよく判る。むしろアニメの素材という意味では、背景画の魅力を十分引き出したものだった。
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そして、トークショーのなかで語られた武重さんがアニメの会社と知らずに最初入社した話や、その後、『オネアミスの翼』や『トップをねらえ!』などのキャリアを経て、スタジオジブリの仕事に行き着くまでの話を興味深く聞き入っていた。
トークは通訳が入るためやや短くなってしまいがちだったが、それでも普段あまりふれることの少ない背景美術の仕事やその様子が伝わってきた。
これまで背景美術はアニメのなかでも極めて重要な部分であるにも関わらず、見過ごされることが多かった。しかし、今年に入ってそんな状況が少し変わりつつある。
今回の武重洋二さんの背景画の展示のほかに、現在、東京都現代美術館では同じスタジオジブリで美術の仕事をする男鹿和雄さんにスポットあてた「ジブリの絵職人 男鹿和雄展」を行っている。またこの春には、映画『時をかける少女』の美術でも活躍した山本二三さんの展示会も開かれている。アニメの美術に対する関心はしだいに盛り上がりつつあるようだ。
「第65回世界SF大会/第46回日本SF大会 Nippon2007」
/http://www.nippon2007.org/jpn/