「多メディア時代のアニメビジネス」@ライセンシングアジア2006
10月19日にライセントレードショーのライセンシングアジアで「多メディア時代のアニメビジネス」と題したビジネスセミナーが開催された。
ライセンシングアジアは毎年ライセンス関係の専門セミナーを多数開催しており、キャラクターライセンスに関係の深いアニメビ
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ライセンシングアジアは毎年ライセンス関係の専門セミナーを多数開催しており、キャラクターライセンスに関係の深いアニメビジネスについても個別のセミナーを設けている。
今回のセミナーは『ポケットモンスター』などのキャラクター展開で知られている小学館キャラクター事業センター長の久保雅一氏が講演を行った。久保氏の講演はアニメビジネスだけでなく、それを取り巻く状況を説明することで現在のアニメーションビジネスの現状を明らかにするものであった。
講演の前半部分は行政のコンテンツ産業に対する取り組みの変化や高速インターネットの普及、IPV6が家電と映像・音楽に与える影響からWeb20やSNSにまで及んだ。
こうした状況を踏まえてコンテンツ産業(そしてアニメ産業)の課題を幾つか挙げた。最初に言及されたのは放送と通信の融合である。
しかし、久保氏によると放送と通信の融合には抜本的な改革が必要だが、現状では改革はなかなか難しい。それは、いま求められている改革は権利の緩和であり、これは既存権利保有者の権利の一部を奪うことになるからだという。
さらに海賊版問題とハイビジョン制作で増大する制作費のコストも課題としている。海賊版は香港や台湾で急激に状況は改善しているが、海賊版に代わる正規版の発売がない点が問題になっているという。海賊版が減少したことで、両国のコンテンツ市場は海賊版の韓国ドラマに奪われつつあるという。
また現在、海賊版ではむしろインターネットを通じた米国市場のほうが深刻な問題であるという。同時に、You Tubeの現状についても課題として指摘している。
ハイビジョン映像の制作費については、ハイビジョンで制作するために30%増加するコストが問題となっている。つまり、この増加するコストを誰が負担するかについて業界で合意がない点を指摘した。
さらに、国内外のアニメ放映のテレビ放映の状況についても話は及んだ。久保氏は国内では東京MXテレビのアニメ放映分野での躍進に注目している。
過去1年でMXテレビのアニメ放送は週18本から40本に増えている。これはテレビ東京の放映本数30本を上回っており、現在アニメ放映の最も多い一般放送局になる。さらにMXテレビの放映コストはテレビ東京の10%~12%に過ぎない。
今後、MXテレビの放映とインターネットを組み合わせた全く新しいアニメビジネスの試みが可能でないかと久保氏は考えているという。
アニメ番組の放送を巡る環境の変化は、海外でも同様に起きている。それは米国のアニメーションのテレビ放映の関心が、これまでの休日の朝の時間帯から平日の夕方の時間帯に移りつつある点である。
実際にこれまで日本アニメは朝の放映時間帯からかなり姿を消しているが、それについて議論する意味は小さくなっていると久保氏は指摘した。
講演のなかでは触れなかったが、今年から米国の『ポケットモンスター』の放映が地上波放送の休日の朝から、カートゥーンネットワークの夕方の時間帯に変更されこともこうした事情が背景にありそうだ。
/ライセンシングアジア2006
《animeanime》